12/2 池袋CHOP "Mucho Mojo"
act: 高木フトシ / THE LAST LIVE / イノウエヒロミチ&マッチョ / 吉美四季
この日、ここからまた髙木フトシの歌歴史が始まった。彼は3本のギターとエフェクターを駆使し、自身の思いを詩に託す。そして、唯一無二の音楽世界を表現し弾き語る音楽家だ。
会場は暗転しステージの幕が上がった。髙木フトシが姿を現す。客席に呟く様に挨拶をした彼は試すようにアコースティックギターの弦を弾く。そして、はにかんだ表情でいつものようにギターを弾き始めた。ギターの旋律は会場に響き渡り、ライブハウスに彼のギターの音が戻ってきた。彼はギターを弾くにつれ、はにかんだ表情は消え真剣な表情に変化していった。再び動き始めた彼の歌歴史、1曲目を歌い出す。
この日のイベントから遡ること9日前、11/23は彼のライフワークである2024髙木フトシ×吉祥寺曼荼羅ワンマンシリーズ、一年を通して語られる物語の最終回であった。その日は誰もが当たり前の様にワンマンライブが行われ、感動の中ライブは大団円を迎えるはずだった。しかし、ライブは彼の体調の不良により延期となり、まだ物語りは完結していない。彼のこの悔しさは計れ知れない。しかし、この悔しさを乗り越えて彼は必ずこの借りは返してくれると信じている。最高な最終回を迎えるその日、喜びを共有した全ての人を笑顔にしてくれるだろう。
12/2に時を戻そう。髙木フトシ、復活の1曲目は白いブランコ(2006年)だ。この1曲目にどの様な思いを込めたのだろうか。ブランコと言うと子供たちが楽しそうに遊んでいる画を想像する。しかし、夕方になり暗くなると子供達は家に帰りブランコは1つそこに残される。誰も乗っていないブランコはどこか寂しさを感じる。白いブランコの詩はどこかもの哀しい。この詩には「君」、「光」と言うワードが出てくる。「君」と乗ったブランコの思い出、「君」はどこかに去ってしまったのだろうか。目を閉じて光も射さず、思い悩む日々。だがいつしか君を求めて外へ出ていく。光を求めて。
光である君を求めて。
髙木フトシ、彼はこの歌で再び一歩、歩み始めた。君を求め、光を見つけ出せるだろうか。
1曲目を歌い終わると真剣な表情は消え、どこかホッとした表情で歌詞のファイルをめくっていた。ギターはsoの前奏様な旋律。そこから車輪の声と静かにシフトしていく。繊細に感情的に、そして力強く歌い上げると、髙木フトシの最新作、透明な錯覚と続いた。こちらはアッパーな曲でノリが良い曲である。弾き語りではあるが身体が動かずにはいられない。サビに入る前の決めワード「最後ー」と息を溜めエネルギーを解き放つ感じが大好きである。この心地良さに思わず両手を拳に変え頭上に掲げてしまうのだ。
透明な錯覚を歌い終わると彼は「良かった」とボソっと呟いていた。何事もなく三曲歌い切った彼の安堵感が伝わってくる。その呟きから直ぐに4曲目Dark ferris wheelと続く。5曲目に入る前にセットリスト初めてのMCへ。この日の共演者への思いを彼の思い出と共に語っていた。一通り語ると「良い1日です。ありがとう」と客席に向かって今度は呟きではなくはっきりとした口調で言った。歌を歌える喜びが詰まった言葉であると感じた。5曲目の冷めた目の子供達。曲後半にアレンジを加え、いつも以上に力強く咆哮する彼の歌声は髙木フトシの真骨頂。燃え上がる炎の様な彼の歌声は全ての哀しみを焼き尽くし、宇宙に昇華していく様だった。
彼の唯一無二の歌声は健在である。
アンコール前のMC。ここは私の主観など入れずにそのまま一部記することにする。第一声は「つい先日やらかしまして・・・(省略) 申し訳ない思いでいっぱいで。同時に一年の集大成だったので。。。この時のためにやってきたのにという思いもありつつ。でも、もう体が言うこと聞かないのはどうしょも無いので。今はもう切り替えて。(省略) ほんとあまり無理をしないと言うか。。なるべく、少し手を抜いたり休んだりってことをそれも仕事として思える様なスマートな老人になろうと思いました。(省略) ほんとさ。地方から来てくれる人とかさ。どう謝っていいかわからない」と一つ一つ言葉を選びながら11/23曼荼羅ワンマンライブを中止にしてしまったことをMCの時間を目一杯使ってライブ延期の悔しさとファンへ申し訳ない気持ちを自身の言葉で観客に説明していた。現在は自身の体調の調整、他ライブスケジュールを鑑みて曼荼羅ワンマンシリーズの最終回の日程を調整中であること、必ず曼荼羅ワンマンを実行すると伝えていた。
「でも、歌いたいし。歌しかないので。おれ、ほんとに。だから。大袈裟じゃなくて、この命ある限り、、まだまだ歌いたいし。聴いてもらいたいと思うので。良かったら付き合ってってください。どうもありがとう」彼の言葉。これが全てではないだろうか。私は彼のこの言葉を信じよう。
アンコールのQuiet darkness。再び歌を歌い続けたいと言う髙木フトシの思い、決意の表れなのだろうか。彼の決意表明的な曲は幾つかある。最近歌われているblind/blind、初期の頃から歌われているslideなど、これらは自分自身に向けた言葉である印象が強い。一方、Quiet darknessは「君」「僕」がお互いを想い合い、「君」に寄り添い、光を感じ希望に満ちた曲であると感じる。彼は歌うことで聴く人に寄り添い、聴く人の希望になるいう決意。そして、彼にとって彼の歌に耳を傾けるファンは、彼にとっての希望であると言うメッセージを受け取った。彼は外に出て光を見つけ出せたのだと信じる。
Quiet darkness lyrics 髙木フトシ
重ねる手と
呼び合う声を 今
君と歩いていこう
君とならゆこう
どこへでも
心につたう一筋の光を
渇き切るまでに ほんの少し
目を閉じて 目を閉じているだけでいい
僕が君の 僕が君の希望になる
あれから まだ
なにひとつ まだ そう
君は運命と
君は戦い続けている
届かない声を叫ぶ僕を
渇き切るまでに ほんの少し
手を握り 手を握りしめるだけでいい
君が僕の 君が僕の希望になる
心につたう一筋の光を
渇き切るまでに ほんの少し
届かない声を叫ぶ僕を
渇き切るまでに ほんの少し
目を閉じて 目を閉じて
いるだけでいい
僕が君の 僕が君の希望になる
君が僕の 君が僕の希望になる
In to the Quiet darkness
彼は後日のブログにこの日のライブについてこう記している。
出来うる限り、頭を使わず。
本能で行けると信じつつ、歌えた、良かったと。
みんなほんとに、ありがとう。
(髙木フトシ公式HP 20241203のブログより転載 )
全6曲。1曲1曲が尊い髙木フトシの歌だった。この歌を聴けることは奇跡であり、私にとってかけがえのない時間であった。これからも髙木フトシは彼の信念の思うままに、彼が思い描く歌を歌ってくれるだろう。私はそれを見届けたい。
12/2 池袋CHOP SET
01 白のブランコ
02 車輪の声
03 透明の錯覚
-mc
04 Dark ferris wheel
05 冷めた目の子供達
En
01 Quiet darkness
20241203 髙木フトシ公式ブログより転載
白のブランコ lyrics 髙木フトシ
黄色い瞳の中に
映り込む白いブランコ
揺れながらきしむ音は
錆びつき腐った
小さなハートの楽
手の中握りしめる
沈み込む度にまぎれた
白いブランコ
美しい君の
名前すら知らなかった
夜には孤独になる
美しい君のこと
眼にはやがて日が射し込んだだろう
ありふれた日に
いいさ それでいいさ もう
外に出て光を 君を
U hoo U hoo
膝を抱いたまま見つめ合う
白いブランコ
甘いスウィートティー
子供みたいに笑う眼
いつまで笑いあえる
夜明けに眠りにつこう
誰か教えてくれないか もう
何ひとつわからない
君を想い沈み込んだ夜も
いつか忘れるさ すぐ
眼にはやがて日が射し込んだだろう
ありふれた日に
いいさ それでいいさ もう
外に出て光を 君を
君を 光を
U hoo U hoo