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10/6 祖師ヶ谷大蔵 エクレルシ"よるのとばり"
act: 高木フトシ(GuestGuitar:イケダツカサ) / 桐ヶ谷賢治 / Makoto(The Gimlet)
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前回の高円寺clubROOTSの髙木フトシのライブから中1日、祖師ヶ谷大蔵にあるライブカフェにて髙木フトシのライブが行われた。この日のライブは“よるのとばり”と称した3マンイベント。この日の箱は彼自身、初めての出演で少し緊張があった様だ。そして、いつもは自身でギターを弾き歌っているが、北海道以来のゲストギターを迎え自身はボーカルに専念する形態であった。ゲストギターを務めるのはイケダツカサ。普段はステージ袖で高木フトシをサポートしている彼である。
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今回はボーカルに専念する形で髙木フトシの手にはシェーカーが握られている。そして、椅子に座って歌うスタイル。過去2回、ゲストギターを迎え歌った時はマイクスタンドを前にスタンディングで歌う姿があった。あくまでも私自身の主観であるが座っている彼に手持ちぶたさ感がなく、しっくり画角に収まった感じの印象を受けた。ギターを弾かず歌に専念するため両手は自由。髙木フトシは自身の両手を最大限に生かし歌を表現する道具に変えていた。ギターを持たない代わりに全身全霊で歌を表現していた。
余談であるが、初めて彼をライブハウスで観た時はバンドのボーカリストそのものだった。ステージのセンターでハンドマイクのコードを腕にぐるぐるに巻きつけ激しくシャウトしている姿、時には観客を煽り観客の方へ飛び込んで行くこともあった。現在の弾き語りスタイルでは、彼は椅子に座りギターを持って弾き語る、バンドのボーカリストとしての認識が強かったためこの様な弾き語り姿を初めて観た時はとても新鮮であったことを思い出す。今ではこの弾き語りスタイルがしっくりくる。これは彼が弾き語りを長きに渡り続けてきたことの証である。いつも髙木フトシの前にはギターとマイク、足元にはエフェクターがあるという私の思い込み。これは長年掛けて「髙木フトシ+ギター=弾き語り」という認識を定番スタイルであると変化させたのだと感じる。
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気になるこの日の選曲はゲストギターのイケダツカサによるものだ。このことは1曲目歌前に髙木フトシにより冗談を交えて観客に暴露された。開場の雰囲気は和み、観客は彼の場に引き込まれたところで1曲目の黒のフレアにスイッチされる。髙木フトシとイケダツカサ(ゲストギター)による弾き語りライブの幕が上がった。
1曲目を歌い終わったところで緊張感が無くなったと話す髙木フトシ。曲間でその曲を作った時の背景や気持ちを話す彼はいつもの独り、孤独なステージとは違い傍らにイケダツカサがいる。そのせいか彼は楽しそうである。この日は曲間に髙木フトシが話し、次の曲に行くというステージ進行であった。
イケダツカサによる髙木フトシ曲セレクトはあまり歌われない曲や最近の曲もあり、中々に良いセトリであったと振り返る。短い時間ながらも聴きごたえある歌を彼らは聴かせてくれた。
Seeking sorrowはライブで歌われた記憶があまりない。2019年に28thシングルとして曲が発表されてから数回レベルでしか歌われていない。この曲は髙木フトシには珍しくフォークソング様の印象を受けるシンプルな良き曲である。歌詞は髙木フトシの歌詞だけに、この世の中への憂いを感じさせる内容だ。
車輪の声は曼荼羅シリーズワンマンで今年発表された曲であるがこの日のイベントで歌われるとは予想していなかった。この曲の選曲はイケダツカサたっての願いだという。髙木フトシは、この日のイベントでこの歌を歌うことについて「まだ曼荼羅ワンマンが続いてたりする中で。その流れの中で、ぽっと歌うのは難しい歌であります」と語った。そう言いながらもこの日歌った車輪の声は最高にエモーショナルな歌だった。彼がこの歌を歌い出すと車輪の声の世界へと引き込まれていく。遠くの方で名もなき誰かの声なき声が聴こえてくるのだ。彼はこの歌を歌うのは難しいという状況の中でも、最高なパフォーマンスで聴く者の心に刺さる歌を歌うことが出来るのだ。
本編、最後はso。彼が長きに渡り歌い続ける歌だ。彼はsoの歌前にこの曲についてこう話す。
「えー、これはsoと言う、、初めての場所なので曲の説明と言うか、、曲の意味と言うか、、ネイティブインディアンの言葉で”星“という、、あのー、、意味で、タイトルなんですが、これ作った時は、なんか曲が、すごい、自分的にすごいポップで、、んーダッセーな、ってのがあって、えーでも、どうしても、そのー、、曲にしたくて、でーじゃぁ詩をとことん重くしよう、ていうか普遍的な重さの詩にしようと、それで書いた詩なんですが、、その曲がまさかこう、、hatehoney解散してから今の今まで、毎年、、えっ、なんか、沖縄の慰霊の日に呼ばれたりとか、広島でクリスマスに歌ってくださいって言われたりとか、あのー9.11のloftのイベントでこの曲を歌ってくださいと言われたりとか、えー教会で、被曝ピアノと一緒にやってくださいとか、えー、毎年、あのー終戦記念日にワンマンやってくれとか、そんな風になるとは、俺、作った時には、まさかと言うか、思いもよらず、けど、、まーほんと心折れる時もあるけど、あのー、でも、、作って良かったなと今でも思います」
この後、会場に髙木フトシの愛と平和の叫びが響いた。
soは髙木フトシの代表的な曲である。彼自身の説明で言っているが、この歌を必要としている人、場所が沢山あるのだ。この曲は歌い繋いでいくべき歌である。歌い続けていかなければならない曲の1つだ。
手前の記事であるが今年、8/15前にsoについて記した。この日の彼の説明を付け加えたい意味で下記に記事を添付する。
本編が終わった後のアンコールでQuiet darknessが歌われた。そしてこの日のライブは滞りなく終わった。
初めての会場で緊張や試行錯誤などあったと思うがお客側の感想としては、いつも通りの素晴らしいパフォーマンスとライブのクオリティであった。とても良い歌と演奏で満足を得ることが出来たと記したい。
髙木フトシが公式ブログにてこの日のライブは「小さな挑戦」と綴っていた。彼の小さな挑戦は大成功だったと、彼を心から賞賛したい。
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10/6 祖師ヶ谷大蔵エクレルシSET
01 黒のフレア
02 蒼の宝石
03 Clown smile and lies
04 車輪の声
05 Seeking sorrow
06 So
En
01 Quiet darkness
(髙木フトシ公式HP 10/7ブログより転載)