創造的人生の持ち時間
中学生の頃、初めて自分で見つけて好きになったバンドがアジカンだった。
当時買ってもらったオーディオセットでラジオを聴いていて、そこで流れてきたリライトが妙に気になって名前をメモしていたのだ。(その後ハガレンの主題歌で流れてきた時は気づかなかった)
最初に買ったアルバムは『ソルファ』で、それからずっと一人で追ってきた。今思えば、バンドの全盛期をリアルタイムで聴いてきたのだ。
ツイッターで初期にフォローしたのもアジカンのゴッチだった。震災の頃のゴッチの発信と活動はすごくて、当時私も興味本位でデモに行ったりしたのはゴッチの影響だったように思う。
アジカンもおじさんになって、後進のアーティストの育成に力を入れたり、政治的な発信が多くて胡散臭がられたりしながら、私にとっては懐かしい青春の思い出のバンドとなっていった。
結婚してからは、家で何かしら流れている音楽を聴くことが多くて、自分で音楽を聴くことはほとんどなくなった。アジカンを聴いていた10年、聴かなくなってからの10年が流れていった。
夫が最近車で流すCDを集めていて、私が持っていたアジカンのアルバムをいくつか出してきた。
若いころ熱心に聴いていた音楽。全部の曲を覚えている。ラジオで新曲の発表をわくわくしながら聴いた曲。好きな歌詞を書き写してイラストを描いていた曲もある。中学生の頃の思い出だ。
大好きだったファーストの『君繋ファイブエム』はなぜかなくて、あれはMDで持っていたのだな。笑っちゃうほど叫ぶゴッチの声、いったいどんなフラストレーションだよと思うが、今聞いてもやっぱりいい。バンドのサウンドも、当時は比べるものがなく何も分からなかったが、正直めちゃくちゃかっこいい。
震災後に出したアルバムは、真剣味は伝わるがちょっと真面目すぎるな。今あらためて聴いて思うことがいろいろある。
夫も気に入ってくれたのか分からないが、中古屋でベルトアルバムを買ってきてくれた。デビューから最初の10年のヒット曲が収められている。
家で一人で聴きながら、フェスのようにリズムに乗って盛り上がってしまい笑えた。
どれも流行るべくして流行った音楽で、2000年代にJ-ROCKと言われた音楽を引っ張ってきた曲たちで、バンドとして真剣に成長してきた軌跡のある音楽だ。
宮崎駿の『風立ちぬ』に、「創造的人生の持ち時間は10年だ」という言葉がある(「君の10年を、力を尽くして生きなさい」)。
今振り返って分かる、あれはアジカンというバンドの、後藤正文の、創造的人生の10年間だったのだな。そしてその後も彼らは、そこで築いた基盤をもとにその世代としての力を尽くしている。
どうしてあんなに好きだったのだろうと思っていた。でも、本当の創造的人生の10年間は人の目にとまる。なんてかっこいいのだろう。その時代の雰囲気と思い出とともにありながら、古くならない。それがあってよかったと思える、一つの時代を築いている。
昔好きだったものを、やっぱりよかったと思えること、本当に嬉しい。