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世界の話

夜明かりを消して寝ようとしているとき、娘にふと「ねぇママ」と話しかけられると、ちょっとドキッとする。何を聞かれるのかな?と一瞬身構えてしまう。
娘は普段あまり学校の話などをしない。自分からしないし、私も特にしつこく聞かないけど、気にならないわけじゃない。だから寝る時に急に何か話し出すと、あらたまった話でもあるのかなと思う。

でもそういう時だいたい私の予想は外れていて、笑っちゃうほどどうでもいい話なのだ。
今日は、最近良いこと続きなんだよね、と言うので、何がそんなに?と聞くと、絶対誰にも言わないでよと言う。何かと思えば、今日学童で勉強時間が無しだったんだよ、とのこと。あと来週の学童のお祭りが楽しみだと。ものすごく平和な話だ。そういうことを本気で考えているんだなと思う。

この人は思ったより物分かりがよくて賢いと思うこともあるし、そんな認識で大丈夫?と思うこともあり、総じて興味深い。
私は無意識に、子どもの頃の自分が考えていた(ように思う)ことや、今の自分の感じ方に当てはめて相手の気持ちを予想しているんだなと思う。
でも現実の相手はそういう認識を超えてくる。この子にとっての日常の喜びや、本気で心配なことは、私が思うこととは違って、この子の中にある。


大好きな『静かな雨』の映画で、その辺で見かけた人について話をして笑い、ふと「これ何の話だっけ?」「世界の話。」というシーンがあった気がする。それをふと思い出した。
あなたの世界と私の世界は違う。そのことについて話をする。そのそれぞれの世界の話。


8月も後半になり、休みが終わりに近づく憂鬱な気持ちが少しずつ頭をもたげてくる。焦り、不安、鬱憤がときどき噴き出す。私も娘も。
皆がそれぞれ自分の認識の世界で生きながら、頼りないコミュニケーションをしている。そういう目で世の中を捉えることは、少し気楽に、謙虚にしてくれる気がする。


行きたかった七月堂古書部で購入。とてもよかった。


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