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言葉は希望

先週の虎に翼の話。

別姓のまま「夫婦のようなもの」になることを決めた寅子と航一に、学生時代の仲間たちがサプライズで集まって、結婚式のようなものを開いてくれる。
それは、二人の「それぞれの姓での婚姻関係を認める」との判決文の言い渡しだった。
友人たち一人一人が、落ち着いた語調で主文とその理由を順々に読み上げる。
最後に、「我々の見解に法的効力はないが、これを二人への、結婚の祝いの言葉とする」との轟の温かい言葉があり、寅子も航一も涙を見せる。

この場面が不思議と忘れられなくて、何度も見直しては何だか泣きそうになった。

二人がこの形での結婚を決めるまでに、いろいろな人の立場や考え方があり、最終的にどちらもが折れることなく、二人にとっての結論を出した。それは史実とも違って、ここまで積み重ねてきた二人のキャラクターにとっての最適解だった。

今でも同じように、別姓での結婚が法的に認められたわけではないし、そのように結婚が認められない二人が他にも多くいる現実は変わらない。
それでも、二人の選択は「憲法により認められている権利のはずである」との友人たちの心からの祝福の言葉に、私も泣かずにはいられなかった。
それがあまりにも人間味に溢れた言葉だったからだ。


私が虎に翼を見始めたのは、戦後優三さんが亡くなった知らせを寅子が受けたところからだった。
事実を受け入れていこうとする寅子がある日見た新聞に、日本国憲法の全文が発表される。
その言葉は、愛する優三さんの言葉で寅子に語りかける。あなたがあなたの思うままに生きていいと。どんな人にもその権利があると。


現実の中で全てが容易に実現されるわけはなくても、新しい憲法の言葉は、寅子とその友人たちが自分の人生を生きる力となっていく。
実際に全てが理想通りにいくわけではない。それからあまりに多くの時間が流れても、大して変わっていないほどに。それでも、その言葉は希望であり、踏み出そうとする人間に勇気を与える。諦めたくないと思う人間を認め、力をくれる。


私も憲法の文章が好きだ。その通りだと思い、震えた経験がある。だから社会科の教員になった。
こんなに美しい文章、正しい文章を掲げて我々の国があることに希望を感じた。そのことを教えたいと思ったんだ。

同じように、言葉は希望だと感じている人がいる。言葉を信じ、希望としての言葉を使っていこうとする人々がかつていたし、今もいるんだ。
毎日それを感じさせてくれる物語に、力をもらっている。

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