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老母と私の農作ノート90

二階改築への挑戦と思索

実家の二階を改築しようと思い立ったのは、ふとした瞬間だった。久々に帰省した折、二階に足を踏み入れると、古びた木の床が軋み、天井からは経年の汚れを感じさせる薄い影が漂っていた。家族の思い出が詰まった空間ではあるが、その老朽化は否めない。何より、自分自身が少しでもこの家の維持に貢献できればという気持ちが、心の奥底で芽生えていた。

改築を決意し、まずは二階の全てのものを処分するところから始めた。長年放置されていた荷物の中には、懐かしいアルバムや壊れた家電、もう使うことのない家具が雑然と詰め込まれていた。手を動かしながら、どこか名残惜しい気持ちと、清々しい解放感の両方が交錯する。不用品を運び出し、やっとのことで二階を空っぽにしたとき、広がった空間に心地よい達成感を覚えた。

次に取り掛かったのは天井だ。実家の天井裏には、どうやらゴミやホコリが溜まっているらしい。親から聞かされていたが、実際に確認するまでは半信半疑だった。試しに天井を軽く叩いてみると、途端に舞い上がるホコリの粒子が、陽光に照らされてきらきらと浮かび上がった。その光景に、一抹の不安がよぎる。これは想像以上に大変かもしれない――。

意を決して天井に一部分だけ穴を開け、中を覗き込んでみた。そこに広がっていたのは、やはり予想どおりの光景だった。ホコリまみれの梁や、無造作に放置された古い紙や破片。これを自分一人でどうにかするのは、少し無謀ではないだろうか。床くらいは自分で張り替えられるかもしれないと意気込んでいたが、天井の改築となると話は別だ。

一度冷静になろうと、自宅に戻った。改築についての情報を集める中で、リフォームの展示会が開催されていることを知り、足を運ぶことにした。会場では、最新の素材や施工方法を紹介するブースが並び、プロフェッショナルたちが熱心に説明してくれる。その丁寧な対応に心が動かされる一方で、ふと疑問も湧いてきた。「自分でできる範囲を超えているかもしれない。でもプロに任せると、費用はどのくらいかかるのだろう?」

そうして、展示会での情報を基に、一度見積もりを依頼しようかと考えるようになった。しかし、決断にはまだ迷いがある。というのも、親戚に建築会社の社長がいるのだ。信頼できる人物ではあるが、親戚に頼ることで何かしらの気遣いが生じるのではないかという懸念もある。一方で、他の会社に依頼するのも、また別のリスクが伴うかもしれない。どの選択が最善なのか、悩みは尽きない。

最終的に、どの道を選ぶにせよ、自分自身が納得することが一番大事だと気づく。二階の改築という一見小さなプロジェクトだが、それは自分の生き方や価値観を試される機会でもあるのかもしれない。実家という大切な場所を、どのように未来へつないでいくか――その答えを探る旅は、これからも続くだろう。

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