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老母と私の農作ノート50
さて、前回はバラに母が灰をまいていたことを書きました。
「私は教授やけんね」
と農作物に関しては母は威張っていたのですが、バラの土壌のことまでは知らなかったようです。幸い大量ではなかったので何とかなるでしょう。
バラを植え替えるために土を買ってきて弱酸性を保つようにしたのですが、灰は苦土石灰と同じような役割を果たし、土壌をアルカリ性にするようです。
まあ、来年花が咲くかどうかはいよいよ微妙になってきました。
「あーあ、咲かなかったから植え直そうか」
母の声が聞こえてくるようです。灰なんか撒いたからだとは言えないな。ほかにも原因があるかもしれないし。
バラを囲い込むようにブロックを並べ終えた私はアジサイを植え替えようと思いスコップを取りに行きます。行き先は今や道具倉庫と化しているビニールハウス。
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かつては小規模ながらトマトを植えようと思っていた所です。掘っても掘っても瓦礫の山、花咲かじいさんのポチでも呼びたくなるほどの有様で、結局畑にするのはあきらめた瞬間に作業倉庫に変身。
チェーンソーや鍬、スコップ、高枝切りばさみとガラクタまで(笑)なかなか道具がそろってきました。
ハウスに入ってスコップを掴んだ途端に後ろから母の声。次のオーダーです。
「ここに家の北側にある棚を持ってきたいんだけど」
言われた場所に行くと時代がかった本棚があります。棚は分厚く頑丈で、雨ざらしであるのにもかかわらず、ものはしっかりとしています。
「お父さんが使いよったものやけん」
懐かしい亡父の本棚のようですが、作業道具置きにするようです。用途としてはそれぐらいでしょう。軒下とは言え雨ざらしで十年は置いておかれたものですから。
これをハウスまで運ぶ作業はひとりでは無理です。頑丈な本棚だけに重さも相当なもの。老母に力仕事をさせるわけにもいかないし、どうやって運ぼうかと頭をひねっていたところ、母が一輪車をもってやってきます。
「さあ、これに積んで」
「・・・誰が一輪車を引いていくの」
「私がやるよ」
「む、無理やろ」
「早う積んで」
有無を言わせぬ母の言葉。全力で一輪車に本棚を横にして積み上げ、倒れないように支える私。
「なら、行くよ」
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もし見る人がいたなら、絶対に大笑いするに違いない短い珍道中の始まりです。
あ、危ない。
そっちやない右や右。
そっち行ったら藤棚にぶつかってしまう。
いやいや今度は左や。
そっちから行けるはずないやろ。
何とかたどり着いた老母と私と本棚。
「いやあ、若い男がおると力仕事は助かるなあ」
母の指定した場所に本棚を設置した時の母の言葉。
母さん私は還暦過ぎているのだぞ(笑)
苦笑いしながら再びスコップを手にする私です。