大通りを歩くのが辛い...
週に2回は市場に歩いて行くが、これがかなり憂鬱である。とにかく歩きにくい。危ない。緊張を強いられ、安心して歩くことができないのである。
幹線道路を歩こうとすれば、一般的な成人男子でも歩行に多大なストレスを感じるので、もはやお年寄りや子どもでは歩くのは無理だと言わざるを得ない。
幹線道路の歩行環境は20年・30年前から変わってないのではないだろうか。ジョグジャカルタ市では戦略的にマリオボロ通りを歩行環境整備を行い、多くの異論がありながらも、多くの観光客を集める場所として整備し得たと言って良いと思うが、その他の一般道の歩行環境については問題は放置されたままである。
歩道の連続性が確保されていないのが、問題の一つである。まったく維持管理がされていないことが大きな要因である。
隣接する土地が未利用地である場合に、歩道にゴミが溜まっていたり、路面維持がされておらず、穴が空いていたり瓦礫が放置されいたりすることが多い。
隣接土地への自動車・バイクの進入のために、歩道が分断され大きな段差を生み出しているケースも多い。歩道を分断する際に、(おそらく)行政と協議する仕組みがなく、土地所有者が勝手に整備するので、質がまったく担保されていないのだと思う。
店舗と歩道との間に設けれた駐車スペースのバイクや自動車が歩道にはみ出して、通行の障害になっていることもよくある。これは個々人の意識によるところが大きいと思う。
バス停や街路樹のポットが歩行の障害になっていることもある。バス停の規模が大きいことが問題を引き起こしている。バス自体が路上1mの高さから乗るスタイルなので、乗降者に対してその高さの滞留場所を作らざるを得ず、どうしてもバス停の規模が大きくなる。それが歩道にあれば、歩行者は車道を歩かざるを得ない。
後から設置されたと考えられる直径1m程度の植栽枡に植えられた街路樹が歩道上に配置されていたり、巨大な広告看板の支柱やホテルの門前の像が歩道に置かれているケースも見られた。
もう一つの問題は、交通量の多さである。特にバイクは道路の端の方を走るので歩行者にとって危険な存在である。歩道がなかったり歩道に障害物があると車道を歩かざるをえず、その際バイクと接触の危険を常に感じざるを得ない。
また、信号は大きな交差点にしかないため、道を渡ろうとすれば、信号のない場所を横断せざるを得ない。車とバイクが途切れるタイミングを見ながらわたり、中央分離帯に立ちながら、また車とバイクの途切れるタイミングを見計らう。なかなかのストレスである。
さて、どうすべきか?
その前に、そもそも論を考えておこう。そもそも歩道は整備されないといけないのか?という問いである。なぜこんな問いが出るかというと、誰も歩いていないからである。インドネシア人は歩かないとよく言われる。自転車もほとんど見ない。バイクでの移動が基本であり、車を所有している人も増えてきている。
バスは快適な市民の足とは未だなり得ていないが、その代わりに、グラブやゴジェックといったアプリによる車・バイクの配車サービスが発達しているので、簡易にアプリで移動可能である。
10分も幹線道路沿いの歩道を歩くインドネシア人はいない。
そうだとすると、費用対効果を考えた時に、歩道整備のための金銭的、社会的投資は、無駄が多いとも言えてしまう。
一方で、先進国入りを目指そうとしているインドネシアにあって、SDGsや地球環境への配慮が欠落していていいのか?という指摘もできる。
生活レベルでのCO2削減のために、目指すべきは、バイク・車といった個別移動手段の最少化であり、そのための公共交通の充実と、近隣の歩行移動環境の快適化ではないか。
一応、その構えで改善へ向けたプロセスのイメージを共有しておこう。
日本では、歩道の改変は当事者による費用負担が基本で、ハード面の具体的な仕様については、設計施工図書を自治体に提出し、自治体の許可が必要となる。その代わり、自治体は維持管理に対する費用を負担するとともに、歩道での安全性に対して責任を持つ。歩道の改変に対する自治体の対応を掲載したHPを見ると、そういうロジックであることが想定できる。
インドネシアでそんなことができるのだろうか???すべての歩道に対して自治体が管理主体になって、永続的にその利用責任を背負うことができるようになるとは、まったく想定できない。
無理があることを承知で提案すれば、相互扶助(ゴトン・ロヨンGotong Royong)による町内会管理のイメージである。RT(隣組)あるいはRW(町内会)が主体となって、エリア内の歩行環境のハード面・ソフト面の整備を実施するイメージである。
SKJ(健康フィットネス運動)が、近隣の皆のつながりで路上で行われているように、道路整備も地区をあげて皆でできないだろうか。
インドネシア、特にジャワには、キップKIP(Kampung Improvement Program 居住環境改善事業)という、近隣環境の改善を相互扶助で行ってきた歴史がある。地区ごとの環境改善に向けた参加の歴史に可能性を見出したいと思っている。241013