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日曜市場サンモールUGMのテンポラリー・アーキテクチャー

毎週日曜日の朝にLembah UGM通りには市が立つ。6時から9時ごろまでと聞いていたので、なるべく早くに行くことを目指したが、家を出たのは7時であった。

Sunmor UGMと呼ばれ、1990年代にはすでに行われていたというが、これまで紆余曲折があり、場所を変えたりコロナ禍での休止期間を経ながら、2024年に現在の地で再開された。1000人以上の事業者が参加し、数千人の来訪者があるため、地域や事業者にとって待望の再開である。

テンポラリー・アーキテクチャー(仮設建築)は世界を救うと思っているので、市(いち)は好物の一つだ。テンポラリー・アーキテクチャーとは、そのまま訳せば一時的な建築であるが、仮設建築と訳されることもある。

全長1km程度はあるだろうか。1000人以上の事業者の参加というので、店は次から次へとある。小規模なテントをはって、いくつかの机を並べ、プロパンガスやコンロを用意して調理するケースが多いが、日常的に使っているカキリマ(手押し屋台)をそのまま持ってきている事業者もいる。ござを5mとか8mの長さて敷き詰めて、ちゃぶ台を置いて、そこで食べてもらう形式の店もそれなりにある。高さ30cm程度の椅子に座って、地面に置いた箱の上に果物を並べて売っている人もいる。衣服は垂直面に吊るして売る形式が一般的だ。

それぞれが与えられたスペースをそれぞれのやり方で工夫・活用しながら、それが全体でにぎやかな市場を作り出している。仮設建築が世界を救うと考える理由を思いつくままに挙げてみよう。

富を反映しないことが第一である。富を反映しないという言葉はわかりにくいかもしれないが、平たくいうと、金持ちにはできて、貧乏人にはできないということがないということである。軽微な材料を用意するだけでできる建築は、経済的状況に左右されにくい誰にでもできる建築である。

植栽帯に敷かれたござ。ここに座って食べる。

どこでもできることも特徴としてあげられる。今回はLembah UGM通りの歩道あるいは車道の脇で建てられていたが、ここでなくても建築可能である。学校の運動会の際に校庭にセットすることもできるし、地域の祭りの際に広場に建てることもできる。

今回の市では、揚げ物、パスタ、サラダ、おにぎり、寿司、大福もち、ジュースなどを販売する多くの飲食店が出店されていたが、その他に、衣料品や工芸品を売っている店舗もあれば、果物や野菜を販売している店もあった。また、単に販売をしているだけではなく、飲食スペースを設けて、その場で座って食べることができる店もあった。それぞれの求める空間の使い方が、それぞれの場所で実現されているのである。

それは、時間的な流れの中で捉えれば、その時々の状況に併せて、店の構成も柔軟に変化しえるということでもあろう。もともと飲食を中心とした市としてスタートしたが、客のニーズに対応することで、衣料品やカバンなどの店舗も増えたという。貸し出される決められたスペースに対して、仮設の空間を臨機応変に変化させることで業種の変化にも対応している。

また、今回のように仮設の市場ができることで、地域のニーズに応えることができていると言える。定期的に開催され、それが継続することで、にぎわいの拠点として機能するとともに、休日のレクリエーションの場を提供している。併せて、出店者個々人の収入の確保にも貢献し得ている。

今回の市場のケースとは異なるが、仮設建築は、被災後の仮設住宅のように、緊急の社会的なニーズに対応することも可能である。葬式や結婚式といった儀礼の際に路上に仮設の場が作られることがある。これらいずれも地域のニーズへの対応とくくることもできる。

もう一つ。サンモールUGMの運営は、大学の関わりの中で行われているが、各事業者は運営者に対してお金を払って参加している。管理料とでもいえようか。清掃作業や運営費にあてられる。こうした催しにつきものだが、フリーライダーというかゲリラ的に店を構えたり、ござをひいたりしてピクニックを始める来訪者が発生する。確かめたわけではないので正確には言えないが、逆側の歩道にござを敷いて買ってきたものを食べるカップルや逆側の歩道でにぎわう店舗が見ることができた。事業者間ではこうした事業者とのいざこざがあるようであるが、こうして周りに広がっていく感じも魅力の一つだと捉えたい。

一方で、もちろん問題もある。安全性や永続性や居住性などに問題があると言えるかもしれない。問題があるからといって、仮設建築が全否定されるべきではない。仮設の魅力を尊重しつつ問題が少しでもクリアできる方策が練られるべきであろう。

(1)誰でもできる、(2)どこでもできる、(3)色々できる、(4)状況に対応できる、(5)地域のニーズに応える、(6)地域に広がるといったキーワードをイメージしながら説明したが、別な切り口を設定すれば、自然への適応、社会の豊かにする、経済に左右されない、文化を蓄積するといったセンテンスで説明できるかもしれない。なんとか性で無理矢理まとめようとすれば、多様性、柔軟性、汎用性、公益性、低廉性、派生性と説明できるかもしれない。

また行きたい。241008


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