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名刺に記入される長い長い称号
名刺は日本独自の文化だと聞いたことがある。海外では、あまり名刺を交換したりしないらしい。名刺交換の際のビジネスマナーは、もちろん日本独自の風習であろう。名刺入れの上に置いて提示するとか、高さが上とか下とか先とか後とか、もらう際の宣誓とか、よく考えたものである。インドネシアでも、名刺を交換することはあまりないらしい。ただ、こちらが日本人であるせいか、外国人から名刺をもらう機会はこれまで比較的多くあった。5月に来た時も、国際交流室OIA(Office of International Affairs)に連れて行かれたが、その際面会した室長からは先方から進んで名刺をいただいた。
今回せっかくの機会なので名刺を作ることにした。大学のフォーマットを使わせてもらおうとイカ先生に相談したが、私の日本の名刺を見せたせいか、すごくあっさりした案が出てきた。私は国際交流室長の名刺を引っ張り出して、彼女の形式に則って表記を提案した。
ちゃんと理解しているわけではないが、インドネシアの場合、名前の前や後ろに色々と称号がつく。彼女のものは、後ろにS.H., M.Kn., Ph.D.とあった。これまでに取得した学位がすべて記される形式である。学士、修士、博士の順に記載されている。Sarjana HukumでS.H.。Sarjanaが学士、Hukumが法律である。M.Kn.は、なかなか出てこなかったが、探し当てたのは、Magister Kenotariatan。Kenotariatanは公証人。M.Kn.で公証人修士ということか。Ph.D.はDoctor of Philosophyの略で、そのまま訳すと哲学博士であるが、最近では一般に博士に対する称号としてPh.D.が使われている。
それにならって、S.T., M.T., Ph.D.と記載してもらった。日本だと工学はEngineeringだが、こちらではTeknik。Sarjana Teknik, Magister Teknikと表記するようだ。博士だけ英語というのもよくわからないが、そうなのだろう。
Professorは日本とインドネシアでは、仕組みが違うと聞いたことがある。日本の場合は、大学の設置基準に基づく判定が文科省からあり、その際、職位が適正なものかチェックされることがあるが、基本的には学内独自の基準に基づき学内で職階が決定される。それに対して、インドネシアでは、基本的に大学教員はlecturerであるが、国の認証を経てProfessorの称号が与えられると聞いたことがある。建築学科にもProfessorが4−5名いたと思うが、その他は皆lecturerである。インドネシアの大学組織・制度については、情報不足・勉強不足である。今後の宿題としたい。
気になっているのは、上で述べたように、名前の前や後に長々と称号をつける習慣である。これはある種の格式主義の現れだと思われるが、これはインドネシア人の学歴というものに対する意識の現れだとも考えることができる。大学ならびに学位というものが持つ社会的価値が高いということでもあろう。
大学への進学率が高まれば、かつてと比べて、学士の称号の持つ意味は薄れていくだろう。今後、インドネシア社会も急速に変化を余儀なくされる中で、年功序列や学歴や格式などというものが、どのように変化するのか、変化しないのかは、非常に興味深いところである。240927