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カンポン・カウマンの風景

今日は8月に行ったカウマン調査の補足調査。エリア内のメインの路地を午前中調査。

カンポンの魅力は、その外部空間にある。道路ぎわの空間が、町並みにいろどりを与える緑のための空間となるとともに、地区の防災のための消火設備設置のために利用されている。住居前面の空間を活用し移動可能な簡易店舗ユニットを設置し、地区の人々のためのワルン(小規模飲食店)が営まれる。

写真1

オランダ時代の建築の特徴の一つとして、タイルがある。住居入り口の段差の立ち上がりの部分に特徴的なタイルが使われ、町並みのアクセントになっている。

路上に置かれる洗濯物。路上は生活空間として重要な役割を果たす。人だけでなくバイクやベチャが通ることもあるが、通行を妨げることがなければ、ある程度の個人的な利用は許容される。

建物前面の階段やブッ(縁側)が子どもの溜まり場になっている。釣竿を手にした子どもたちが集まって何やら話し合っていた。この後、自転車に乗って釣竿を持ってみんなでどこかに向かう彼らにあった。川に行ったのであろうか。

路上に食料品の販売スペースが作られる。パラソルと簡易な机が用意され、机の上に、野菜や肉や魚が並べられる。わざわざ市場やスーパーに行かなくても、地区内で最低限の食料品は入手できる。
向かいの家のテラスや緑、後ろの家のテラスとあいまって、魅力的な外部空間を作り出している。

住居前のテラス空間には、いろいろなかたちがあるが、単なる道路との緩衝空間としてテラスが設けられるケースや、積極的に居場所として使われれるケースがある。
住居前面の庇の存在も重要であり、建築本体とセットで設けられるものが多いが、後々付加的に深い庇が設置されるケースもある。
テラスに対して、塀や柵はあまり設けられることはない。庭として敷地の比較的広い一角が確保される場合に塀が設けられることが多い。

路地の上を覆うように庇が設けられるケースがしばしばある。10月を過ぎると雨季に入るが、雨季になると毎日のように強烈な雨が降る。その雨を避けるために路地を覆う庇が設けられるのである。
路地の右と左の建物は所有者が異なるケースがほとんどなので、ちゃんと調整しようとするとややこしい。以下の写真は、おそらく左の施設からの働きかけで、右の建物の壁を借りて雨よけの庇が設けられたのではないか。左側の建物側に雨水が流れるように樋が設置されている。

カウマン地区は、マタラム王国に由来をもつジョグジャカルタ、スラカルタともにモスクに隣接するエリアに存在する。ともに矩形に小さな矩形をさらに付加したようなかたちをしている点が興味深い。
ジョグジャではモスクから北の位置に、モスクがビスタとなるような路地が配置されている。道路前面の緑や路上のアクティビティと遠景にそびえるモスクの屋根があいまって、特徴的な景観を作り出している。

モスクが建てられたのが1773年。もちろんそこまでさかのぼれるわけではないが、オランダ統治時代の住宅・建築がカウマン地区に多く残る。
欄間や建具にみられるモダンなデザインが、コロニアル住宅の一つの特徴である。

豊富な緑はカウマン・コミュニティの活動の成果でもあると思うが、鮮やかな色の花も多くみることができる。コロニアル住宅の建具や前面のブッとともに、細い枝木に赤い花の咲く樹木が美しい。

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