モールの歴史的建造物
モールに行ってきた。モールについて書くのはあまり気が進まないが、とりあえず書き出してみよう。
中心部のモールとしてはマリオボロ・モールMalioboro Mallがよく知られている。郊外でこれまで行ったことあるのはパクウォン・モールPakwon Mallとアンバラクモ・プラザAmbarrukmo Plazaである。パクウォン・モールはジョグジャ最大のモールとして総面積77,000平米、地下2階地上8階で300のテナントが入るモールである。2015年開業。アンバラクモは45,000平米、7階建て、230のテナントが入るモールである。2006年に建てられたが、現在のようなかたちになったのは2013年である。
アンバラクモ・プラザは家からバス1本で行けるので、行きやすく、今回2回目である。
大量にエネルギーを消費する四角い箱である。4層の吹き抜けをもち、その周りを人々が巡る空間構成である。店舗は吹き抜けに面した通路沿いに並んで配置される。一つ一つの専門店が並ぶエリアと規模の大きな店舗が占めるエリアに大きく分かれている。ここでは、マタハリ・デパートやユニクロ、トランスマートが規模の大きなエリアを占めている。映画館や電化製品、家具を扱う店舗もある。もちろん、駐車場も用意されており、最上階に大規模駐車場がある。礼拝室だけでなく、モスクも屋上に設置されている。小さい子どものための授乳等のための部屋やメディカルルームもある。
空調が完備された光り輝く空間は、常に多くの人で賑わっている。1階のイベント広場では、その時々のイベントが行われている。
1階ならびに3階にレストランエリアがある。フードコートも用意されている。寿司屋が4軒、ラーメン屋が4軒、丸亀うどんにペッパーランチ、しゃぶしゃぶも食べることができる。今回のジョグジャ滞在で初めて日本食を食べたのも、このモールである。
以前、いつも市場に買い物に行っていると大学の先生に言うと、すごく驚かれたことがある。大学の先生は市場では買い物をしないのである。
さて、気乗りせずモールの話を書きはじめたが、書きながらモールのことを調べていると、実はこのアンバラクモ・プラザは非常に興味深い場所であることを知った。
アンバラクモ・プラザは、文化遺産地区にたつモールで伝統と現代が融合した場所だという。モールのデザインが伝統的な建物のデザインでも真似たものなのかなと思いつつ、色々調べていくと、この場所が特殊な場所であることがわかった。
ここは、もともと王室の土地なのである。プサングラハン・アンバラクモという王室の迎賓館が建てられていた場所である。1895年にハメングブウォノ7世によって完成された建物で、7世も退位した後、しばらくの間ここに住んでいる。Ambarrukmoは、香りを意味する「ambar 」と、 金(黄色)または威厳を意味する「rukmo 」という言葉で構成される。つまり、アンバルクモは、香る威厳を意味している。
現在、王室の土地は東西に3つに分割されている。西側がモール、真ん中に迎賓館の一部、東側はホテルである。
このホテルは1966年に建てられたものであるが、この地には1957年にはホテルが建てられていたという。その後、日本からの戦争賠償金を原資として1966年に現在のホテルが建てられ、一時期営業していない時期があったというが現在はロイヤル・アンバラクモ・ジョグジャカルタという5つ星のホテルとなっている。ジャカルタに1962年に建てられたホテル・インドネシアのような国際的にも通用するホテルを建てたいというハメングブウォノ9世の思いにもとづき、スカルノ大統領に働きかけを行うことで実現したホテルである。
モールがこの地に建てられたのは2006年とのことである。1957年、2006年と新たに建物が建てられる際には、迎賓館の施設が一部取り壊されているが、メインの大屋根の集会スペースや中心となる建物ダレムは残されている。
こうして敷地がホテルやモールに分割されながらも、歴史的な建造物が残され、歴史的な敷地が変わっていく様は非常に興味深い。
広大な敷地に聳えるジョグロ屋根が王室建築の権威を示すものであると思われるが、現在は大規模な現代建築に挟まれ、所狭しと建てられている。これも一つの残り方であるが、それで良いのかは議論されるべきことであろう。241002