アクロアイトの風 -春待つ二人-
笑い声が聞こえる。
ふたつ。
ひとつは、君の声。
もうひとつは、私の声。
自分のことなのに、不思議と俯瞰で二人の姿が見える。
あ、夢だ。
これは夢。
まだ、私が一人で歩けたときの、まだ、なんの不安もなく一緒に笑いあえた時の、夢――。
「目が醒めた?」
君は隣で、少し眠そうな、でもすごく優しい顔で私にそう言った。
「うん」
夢を見て……、そんな言葉が喉を押し上げようとするけれど、重たい蓋がのしかかっているようで、思うように声が出ない。
寝起きだから?いや、思い出さないようにす