受け入れると言うこと
数年前、母に初期の胃ガンが見つかった。初期だったので手術も大したことなく今でも母は元気にしているのだが、その頃に胃がんについて調べていてあるブログを見つけた。
30代後半の独身女性のブログで、彼女が胃がんと診断され、その治療と日常が綴られていた。すごく面白くて私はそのブログの読者になった。癌患者のブログで面白いと言うのも変な話だが、彼女の色々がとても興味深かった。
決して、病気に負けずに頑張るー、辛くても負けないーーそう言った感じではない。
すごく全てが淡々としているのだ。何なんだこの人は、すごいななんか…文章に引き込まれた。
最初の診断で余命がこのまま何もしなければ3ヶ月ですよと言われても、そうなんだと涙も流さず、ただ彼女のお父さんがかわいそうだから抗ガン剤治療をしてみようかと言う感じで、辛い検査入院も、ご飯が美味しいし、入院するのは好きと書く。そして入院患者の人達、イケメンの先生のこと、いつも読んでいてクスッと笑ってしまう。
ただ、同じ病気の人が読んだときのためにか、薬の種類、それを試したらどんな症状だったかそう言ったことはすごく詳しく綴っていた。
ご飯が美味しくないのと、副作用、それと無駄な延命はしたくないとそのうち抗がん剤治療をやめ、どうしようもなくなった時はホスピスに入る決断をした。それからの彼女はどんどん元気になり、色々なところに友達と出かけ、美味しいものをいっぱい食べ、そして彼氏までできてしまう。
この人ががんって言うのは誤診じゃないのって思うくらい、楽しそうな毎日で彼氏とのえっ、こんなことまで書くのって思うようなラブラブなことまで。。すごいな何でこの人はこんなにこんな感じなんだ。死ぬのは怖くないのかな。このまま奇跡的に治りましたってなるんじゃないのって読みながら思ってた。
思うに彼女もどこかで書いていたが、諦めているのではなく病気も含め、自分に起こっていることを全て受け入れているのだなと思った。
それはブログの途中にも書いていた幼いときの彼女の辛い過去。お母さんが幼い時に亡くなり、お父さんが再婚し、新しいお母さんにひどい扱いを受け続けた、何年にも渡ってそれもお父さんに分からないように
彼女はそのことも自分の中で受け入れている、そのおかげで自分は精神的に強くなった、癌と診断されても動じない鋼の精神力になったのだよと言っていた。
そのうちブログの更新も間が開くようになりがちに、そんな状態でも、体が動かなくなるギリギリまで、仕事をしていた。そして、痛みを緩和するため、麻薬系の薬も処方される、すっかりジャンキーになってしまったよあたし、と明るく書く彼女、それでもまだ生きてますよーって更新されると、ああよかったと胸を撫で下ろした。
しかしある時、なかなか更新されなくなってしまった。
数ヶ月経って、忘れかけた頃、ご報告と言うタイトルで更新があった。彼女の死の報告だった。代理人とされていたが恐らく彼氏が書いたのだと思う。蝋燭の火が消えるように逝きましたとあった。ああ、ついに…と悲しくてショックで涙が出た。読むだけじゃなく、コメントの一つでもすればよかったと
そして、このブログのことも、記憶から少し薄れていたが、この間、そう言えばと思い読み返してみて色々とまた考えさせられた。
自分に降りかかる嫌な出来事を、誰のせいにもせずに受け入れ、消化し、逃げずに向き合いポジティブに持っていけるだろうか?でも、それこそが幸せに生きて行ける方法のように思う。
きっと彼女はこのブログで、それを伝えたかったんじゃないだろうか
自ら命を絶ってしまった芸能人の悲しいニュースがあったりして、ちょっとそんなことを思ってしまった。
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