ショートケーキの約束

母の誕生日は正月2日だった。毎年というわけではないが、本髙砂屋のきんつばが好きなので、買うことがあった。昨年もそうしようかと思っていると、「きんつばではなく、クリスマスにシャトレーゼのショートケーキが欲しい」と言った。シャトレーゼは家の近くにあり、髙砂屋だと電車で買いに行かなければならない。寒い時に遠くへ行かせるのは悪いと母は気遣ったのかも知れない。そこで、昨年はシャトレーゼでショートケーキを買おうとした。すると「来年のクリスマスでいい」と遠慮した。子供にお金を使わせたくなかったのだと思う。だから、私は忘れないようにと今年のクリスマスにショートケーキを買う予定を登録した。もちろん、頭の中でも忘れなかったけれど。

でも、母はクリスマスが来る前に亡くなった。次の年齢を迎えることなく亡くなった。でも、さっきシャトレーゼに行って、いちごのショートケーキを買ってきた。母が喜びそうな「ゆかいなサンタさん」という、サンタを模したお菓子も買った。母は可愛らしいものが好きだったから。でも、母は食べることも見ることもない。もっと、わがままを言ってくれればよかったのに。私も来年と思わず、昨年ケーキを買って一緒に食べるべきだった。

ショートケーキの予定は、毎年繰り返しに変更した。生きていたら多分、毎年母とショートケーキでクリスマスを祝っていただろうから。

(2024年12月25日)

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