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強靭な表現者への変化 〜 メロディ・ガルドー

ジャズ・ヴォーカリストのメロディ・ガルドー(Melody Gardot)と、ピアニストのフィリップ・パウエルの来日公演が、5月30日にブルーノート東京で行われました。

私は残念ながら東京を離れていて、この一夜限りのライヴに行けなかったのですが、"奇跡のシンガー"と言われたメロディのことは、デビュー以来追ってきました。

まず、彼女の2015年のアルバム『カレンシー・オブ・マン~出逢いの記憶~』に寄せて書いたライナーノーツをお読み下さい。

どうやってメロディ(本名)がデビューしてきたかを、お聞き下さい。

強靭な表現者への変化


 メロディー・ガルドーからの連絡は、ツイッターなどのSNSから来る。だから、いつも突然というイメージがある。今回のツイートには、「新作『カレンシー・オブ・マン〜出逢いの記憶〜』が、すばらしい出来になったから、聴いてね」と、書かれていた。そこから音を聴くまでの待ち遠しさ。今、このアルバムを手にしているあなたと同じ気持ちで待った。

 ここには、今までに出逢ったことのない、その足ですっくと大地に立ち、発言するメロディーがいた。ブルーズの粒子がそこここにちりばめられていた。肯定的な明るさと、哀愁を併せもった歌声があった。すばらしかった。
 ノラ・ジョーンズにメガヒットをもたらしたジェシー・ハリスの曲〈ドント・ミスアンダースタンド〉が1曲あるが、ほかはすべてメロディーの作詞・作曲になる。彼女が語った。

「今作では、言いたいことを言わなくてはいけないと思ったんです。それほど、世界には問題が山積しています。ミュージシャンである前に、一人の人間としての想いが膨れ上がりました。人間の価値、生命の重さは何にも代えがたいもの。そうであるのに、未だに世界には物質主義が蔓延し、生命をおろそかにすることばかりが起こっている気がします。生命より、お金を優先して戦争を起こすなんて、何という政治でしょうか。差別主義しかり、です。

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中川ヨウです。ジャズを核とした音楽評論/研究をしています。日々拡張するJazzの動き。LiveやNew Albumについて書きながら、拡張…

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