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櫻蕊降りて恋を成す〜的野美青〜

言葉にするのが苦手

知らず知らずのうちに傷つけてしまってるのではないか?

そう思うと上手く言葉を繋げれない

どんな些細なことでも


美青:……

○○:おはよう!的野さん

美青:っ!?…お、おはよう……

○○:今日も暑っついね…溶けちゃいそうだよ

美青:……


隣の席の○○くん

こんな私に喋りかけてくれる唯一の人

でも私と絡んでもいい事ないよ…

返事もろくに返せないし…


○○:そういえば、的野さん…髪切ったね

的野:…え?

○○:ん?前髪切ってない?

的野:……き、切ったけど…

○○:だよね!似合ってるよ

的野:……あ、あり……


あぁ、まただ

ありがとうも言えないなんて

ホントにどうかしてる

ごめん○○くん…


○○:……なんか悩み事?

的野:…い、いやぁ……

○○:抱え込んじゃダメだよ?

的野:……

○○:僕でよければいつでも話聞くからね!


的野:……うん


「うん」じゃないでしょ

なに○○くんを巻き込もうとしてるの

私の問題なんだから

○○くんは関係ないんだから…


的野:…あ、あの

男子:おーい○○!ちょいと来てー!

○○:へーい

的野:…あっ…


いや、これでよかった

○○くんにとって私なんて

ただのクラスメイトに過ぎないんだから…



君の声が聞きたい

そう思い始めたのはいつからだろうか?

隣の席になって初めて気づいた

こんな素敵な人がいた事に


○○:おはよう!的野さん

的野:…お、おはよう……

○○:今日は比較的涼しいね

的野:……うん


毎日同じような会話

意味なんてない

ただ声を聞きたいだけ


○○:的野さんってさ、めっちゃいい声してるよね

的野:…え?

○○:なんか落ち着くというかなんというか…

的野:…落ち着く……

○○:うん、的野さんの声好きだなぁ〜

的野:っ!?


彼女の顔が紅く染ってゆく

そんな隠さなくてもいいのに

もっと色んな表情を見てみたいな

……僕はきっと


男子:なぁ○○!これ見てくれよ!

○○:えっ?な、なに

男子:石森璃花ちゃん!めっちゃ可愛いよな〜

○○:うん、そうだね

男子:まぁ推しって言ってたもんな

○○:ちょ、バカっ!……はぁ…

男子:ん?なに?

的野:……



石森璃花ちゃん……

この子か

ふわふわ系だなぁ〜確かにかわいい

○○くんはこいう子がタイプなんだ……

私なんて程遠いじゃん


的野:勝手に期待しちゃって……バカみたい


自然と涙が溢れてくる

私って○○くんの事が好きなんだ

でも……

こんな私が好きになっちゃダメな人

好きであることさえも申し訳なく感じてくる

苦しい、心臓が張り裂けそうだ

私は行き場のないこの気持ちを

一体どうすればいいの?



珍しく学校を休んでしまった

彼を瞳に映すとダメになってしまいそうで

このぐしゃぐしゃになった心が癒えるまでは……

なんて過ごしていると時計は正午を指していた


美青:……ラーメン食べよ


カップラーメンにお湯を注ぎ

3分間のタイマーをセット

この待ち時間はとても好き

何もかも忘れられるから

タイマーが鳴り響き、ついにご対面


美青:♪〜


ついつい鼻歌もしてしまう

今、すごく幸せを感じてる


美青:ふふっ、いただきm


その時、家の呼び鈴が私の耳を劈く

生憎、家には私以外誰もいない

なんてタイミングの悪い……

気分下がっちゃった


美青:はぁ……


ゆっくりと玄関へ足を運び、扉を開ける


美青:はぁーい…

○○:やっほ、的野さん

美青:…………えっ!?


なんで○○くんが!?

てかヤバい……

ボサボサの髪

人に見せれたもんじゃない部屋着

どすっぴん

まぁ、普段からあまり化粧はしてないんだけど…

でも○○くんにこんなの見られたくない!


美青:あっ……ち、違くて…これは……

○○:なんでそんな焦ってるの?

美青:い、いや……その…あぅ……


あぁ!取り乱しすぎ!

絶対キモイって思われてる……


美青:…ななな、なんでっ…!

○○:え?

美青:わ、私の家に…?学校は……

○○:あー、サボっちゃった

美青:……どうして…?

○○:的野さんが心配だったから

美青:…………


今なんて?

私の事が心配だったから?

そんなの嘘だよ…

○○くんが私の事考えてくれてるなんてさ


美青:体調崩した訳じゃないよ?

○○:うん、知ってる

美青:じゃあ、なんで心配するの?

○○:うーん、なんでだろうね?

美青:……

○○:それよりさ、お昼ってもう食べちゃったかな?

美青:……あっ!ラーメン!

○○:ん?

美青:早く食べないと麺伸びちゃう!

○○:来たタイミング悪かったね、ごめん

美青:……それは…そうかも…


何言ってんの!?

○○くんはわざわざ来てくれた訳でしょ!?

もうやだ……

嫌われちゃう


○○:…あはははっ!

美青:…え?

○○:いや、ごめんごめん…的野さんにそんなキッパリと言われたの初めてだったから

美青:…そ、そうだね

○○:よし、伸びる前に食べちゃって!
そんでその後さ、ちょっと行きたい所あるんだけど……

美青:…い、行く!

○○:ありがとう、僕は外で待ってるよ

美青:上がっていいよ…

○○:いいの?

美青:うん

○○:じゃお言葉に甘えて



おかしい……

味しないよこのラーメン

なんか凄く手も震えてる

……そりゃそうか

だって目の前にいるもん


○○:……

美青:ズズズ……

○○:美味しそうに食べるね、そういう子好きだなぁ

美青:っ!?…けほっごほっ!

○○:だ、大丈夫!?

美青:す、好き…?

○○:え?……やばっ!口に出てた……


え、やめてよ頬を赤くするの

可愛すぎるじゃん

好きが止まらなくなるから

苦しさが増していくから


美青:好きだなんて軽々しく言わないで

○○:え?

美青:…あっ、違う!怒ってる訳じゃなくて……その……○○くんに言われると苦しくなっちゃうっていうか

○○:……

美青:ごめん……今の忘れて?

○○:ラーメン食べ終わったね……

美青:す、すぐ身支度するから…ちょっと待ってて?

○○:うん、ゆっくりでいいよ



美青:お、おまたせ……

○○:わぁ…すげぇ可愛い

美青:そ、そんな事ない……

○○:眼鏡しないんだ?

美青:外行く時はコンタクトだから……

○○:なんか新鮮だ!…眼鏡ありもいいけど、なくても可愛いね

美青:……あ、ありがとう


初めて言えた、感謝の言葉

まだぎこちないけど

少し進歩したかな?


○○:じゃあ、行こうか

美青:うん


不思議な感覚

学校サボって

好きな人と

まるで私じゃないみたい



結構歩いたな

○○くんは何度も『大丈夫?』って聞いてくれた

その優しさで全然歩けますよ!


○○:もう少しで着くから

美青:うん、わかった

○○:喜んでくれるといいなぁ

美青:?


少し先を行く足が止まり、彼は振り向く

私は少しだけ急ぎ足で彼に駆け寄る

すると目の前には


美青:……綺麗…

○○:でしょ


青々とした空

広大な海

そして美しい街並み

ありきたりかもしれない

でも不思議と目を奪われてしまう


○○:ここ好きなんだよね

美青:……私も好きだな


涙が溢れそうになる

込み上げてくるこの気持ちをどうにか抑えようと

苦しくて、心地よくて、儚くて……

大好きだから


美青:ねぇ○○くん……

○○:……なに?

美青:わ、私ね…その……えっと


言葉にしたいのに

やっぱりできないや

こんな私がホントに嫌い


美青:あっ……う…私、○○くんが……

○○:……うん

美青:……す…す…………なんで…


怖いんだ

この言葉を伝えてなんて思われるか

だから言えない

でも……



○○:的野さん

美青:っ!?ひゃ、ひゃい!

○○:……僕は的野さんの声で紡ぐ言葉が好き

美青:え?

○○:でも、言葉にしなくても伝わる事だってあるんだよ

美青:…○○くん

○○:僕は的野さんが大好きだ!


いいんだろうか

こんな私で

好きってちゃんと伝えれないのに


美青:でも言葉で伝えたいよ…

○○:今すぐじゃなくてもいいんだよ

美青:……


気づけば彼を抱きしめていた

すると彼も私を抱きしめ返す


○○:いつか……伝えてね?

美青:うん……約束する

○○:ずっと待ってる……


優しい口付けを交わす

いつかこの想いを直接あなたに……





言葉にできる日を……共に二人で

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