櫻蕊降りて恋を成す〜的野美青〜
言葉にするのが苦手
知らず知らずのうちに傷つけてしまってるのではないか?
そう思うと上手く言葉を繋げれない
どんな些細なことでも
美青:……
○○:おはよう!的野さん
美青:っ!?…お、おはよう……
○○:今日も暑っついね…溶けちゃいそうだよ
美青:……
隣の席の○○くん
こんな私に喋りかけてくれる唯一の人
でも私と絡んでもいい事ないよ…
返事もろくに返せないし…
○○:そういえば、的野さん…髪切ったね
的野:…え?
○○:ん?前髪切ってない?
的野:……き、切ったけど…
○○:だよね!似合ってるよ
的野:……あ、あり……
あぁ、まただ
ありがとうも言えないなんて
ホントにどうかしてる
ごめん○○くん…
○○:……なんか悩み事?
的野:…い、いやぁ……
○○:抱え込んじゃダメだよ?
的野:……
○○:僕でよければいつでも話聞くからね!
的野:……うん
「うん」じゃないでしょ
なに○○くんを巻き込もうとしてるの
私の問題なんだから
○○くんは関係ないんだから…
的野:…あ、あの
男子:おーい○○!ちょいと来てー!
○○:へーい
的野:…あっ…
いや、これでよかった
○○くんにとって私なんて
ただのクラスメイトに過ぎないんだから…
◇
君の声が聞きたい
そう思い始めたのはいつからだろうか?
隣の席になって初めて気づいた
こんな素敵な人がいた事に
○○:おはよう!的野さん
的野:…お、おはよう……
○○:今日は比較的涼しいね
的野:……うん
毎日同じような会話
意味なんてない
ただ声を聞きたいだけ
○○:的野さんってさ、めっちゃいい声してるよね
的野:…え?
○○:なんか落ち着くというかなんというか…
的野:…落ち着く……
○○:うん、的野さんの声好きだなぁ〜
的野:っ!?
彼女の顔が紅く染ってゆく
そんな隠さなくてもいいのに
もっと色んな表情を見てみたいな
……僕はきっと
男子:なぁ○○!これ見てくれよ!
○○:えっ?な、なに
男子:石森璃花ちゃん!めっちゃ可愛いよな〜
○○:うん、そうだね
男子:まぁ推しって言ってたもんな
○○:ちょ、バカっ!……はぁ…
男子:ん?なに?
的野:……
◇
石森璃花ちゃん……
この子か
ふわふわ系だなぁ〜確かにかわいい
○○くんはこいう子がタイプなんだ……
私なんて程遠いじゃん
的野:勝手に期待しちゃって……バカみたい
自然と涙が溢れてくる
私って○○くんの事が好きなんだ
でも……
こんな私が好きになっちゃダメな人
好きであることさえも申し訳なく感じてくる
苦しい、心臓が張り裂けそうだ
私は行き場のないこの気持ちを
一体どうすればいいの?
◇
珍しく学校を休んでしまった
彼を瞳に映すとダメになってしまいそうで
このぐしゃぐしゃになった心が癒えるまでは……
なんて過ごしていると時計は正午を指していた
美青:……ラーメン食べよ
カップラーメンにお湯を注ぎ
3分間のタイマーをセット
この待ち時間はとても好き
何もかも忘れられるから
タイマーが鳴り響き、ついにご対面
美青:♪〜
ついつい鼻歌もしてしまう
今、すごく幸せを感じてる
美青:ふふっ、いただきm
その時、家の呼び鈴が私の耳を劈く
生憎、家には私以外誰もいない
なんてタイミングの悪い……
気分下がっちゃった
美青:はぁ……
ゆっくりと玄関へ足を運び、扉を開ける
美青:はぁーい…
○○:やっほ、的野さん
美青:…………えっ!?
なんで○○くんが!?
てかヤバい……
ボサボサの髪
人に見せれたもんじゃない部屋着
どすっぴん
まぁ、普段からあまり化粧はしてないんだけど…
でも○○くんにこんなの見られたくない!
美青:あっ……ち、違くて…これは……
○○:なんでそんな焦ってるの?
美青:い、いや……その…あぅ……
あぁ!取り乱しすぎ!
絶対キモイって思われてる……
美青:…ななな、なんでっ…!
○○:え?
美青:わ、私の家に…?学校は……
○○:あー、サボっちゃった
美青:……どうして…?
○○:的野さんが心配だったから
美青:…………
今なんて?
私の事が心配だったから?
そんなの嘘だよ…
○○くんが私の事考えてくれてるなんてさ
美青:体調崩した訳じゃないよ?
○○:うん、知ってる
美青:じゃあ、なんで心配するの?
○○:うーん、なんでだろうね?
美青:……
○○:それよりさ、お昼ってもう食べちゃったかな?
美青:……あっ!ラーメン!
○○:ん?
美青:早く食べないと麺伸びちゃう!
○○:来たタイミング悪かったね、ごめん
美青:……それは…そうかも…
何言ってんの!?
○○くんはわざわざ来てくれた訳でしょ!?
もうやだ……
嫌われちゃう
○○:…あはははっ!
美青:…え?
○○:いや、ごめんごめん…的野さんにそんなキッパリと言われたの初めてだったから
美青:…そ、そうだね
○○:よし、伸びる前に食べちゃって!
そんでその後さ、ちょっと行きたい所あるんだけど……
美青:…い、行く!
○○:ありがとう、僕は外で待ってるよ
美青:上がっていいよ…
○○:いいの?
美青:うん
○○:じゃお言葉に甘えて
◇
おかしい……
味しないよこのラーメン
なんか凄く手も震えてる
……そりゃそうか
だって目の前にいるもん
○○:……
美青:ズズズ……
○○:美味しそうに食べるね、そういう子好きだなぁ
美青:っ!?…けほっごほっ!
○○:だ、大丈夫!?
美青:す、好き…?
○○:え?……やばっ!口に出てた……
え、やめてよ頬を赤くするの
可愛すぎるじゃん
好きが止まらなくなるから
苦しさが増していくから
美青:好きだなんて軽々しく言わないで
○○:え?
美青:…あっ、違う!怒ってる訳じゃなくて……その……○○くんに言われると苦しくなっちゃうっていうか
○○:……
美青:ごめん……今の忘れて?
○○:ラーメン食べ終わったね……
美青:す、すぐ身支度するから…ちょっと待ってて?
○○:うん、ゆっくりでいいよ
◇
美青:お、おまたせ……
○○:わぁ…すげぇ可愛い
美青:そ、そんな事ない……
○○:眼鏡しないんだ?
美青:外行く時はコンタクトだから……
○○:なんか新鮮だ!…眼鏡ありもいいけど、なくても可愛いね
美青:……あ、ありがとう
初めて言えた、感謝の言葉
まだぎこちないけど
少し進歩したかな?
○○:じゃあ、行こうか
美青:うん
不思議な感覚
学校サボって
好きな人と
まるで私じゃないみたい
◇
結構歩いたな
○○くんは何度も『大丈夫?』って聞いてくれた
その優しさで全然歩けますよ!
○○:もう少しで着くから
美青:うん、わかった
○○:喜んでくれるといいなぁ
美青:?
少し先を行く足が止まり、彼は振り向く
私は少しだけ急ぎ足で彼に駆け寄る
すると目の前には
美青:……綺麗…
○○:でしょ
青々とした空
広大な海
そして美しい街並み
ありきたりかもしれない
でも不思議と目を奪われてしまう
○○:ここ好きなんだよね
美青:……私も好きだな
涙が溢れそうになる
込み上げてくるこの気持ちをどうにか抑えようと
苦しくて、心地よくて、儚くて……
大好きだから
美青:ねぇ○○くん……
○○:……なに?
美青:わ、私ね…その……えっと
言葉にしたいのに
やっぱりできないや
こんな私がホントに嫌い
美青:あっ……う…私、○○くんが……
○○:……うん
美青:……す…す…………なんで…
怖いんだ
この言葉を伝えてなんて思われるか
だから言えない
でも……
○○:的野さん
美青:っ!?ひゃ、ひゃい!
○○:……僕は的野さんの声で紡ぐ言葉が好き
美青:え?
○○:でも、言葉にしなくても伝わる事だってあるんだよ
美青:…○○くん
○○:僕は的野さんが大好きだ!
いいんだろうか
こんな私で
好きってちゃんと伝えれないのに
美青:でも言葉で伝えたいよ…
○○:今すぐじゃなくてもいいんだよ
美青:……
気づけば彼を抱きしめていた
すると彼も私を抱きしめ返す
○○:いつか……伝えてね?
美青:うん……約束する
○○:ずっと待ってる……
優しい口付けを交わす
いつかこの想いを直接あなたに……
言葉にできる日を……共に二人で
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?