櫻蕊降りて恋を成す〜小島凪紗〜
私には好きな人がいる
彼がこの気持ちに気づくことはないだろうけど
それでも幸せだった
彼をこの目に映すだけで
彼の声をこの耳で感じるだけで
彼のことを考えるだけで
この胸いっぱいに幸せが溢れていくんだ
それだけで充分だった
だけど……
あの言葉を聞いてから私は………
〜〜
凪紗:ん〜、もう!重たいよ!学級委員だからって私ばっかり!
HRでまとめたみんなのノートを職員室へと運ぶ
凪紗:意外と遠いんだよね〜、職員室……うん?
○○:ははは笑、おもしろいなそれ!
佐藤:だろだろ笑
凪紗:あっ……○○くん…
とっさに隠れてしまった
盗み聞きするつもりはないのだがつい聞き耳をたててしまう
凪紗:……今日もかっこいい///
佐藤:そういえば話変わるけど、最近の小島やけに可愛くないか?しかも……俺とちらちら目が合う気がするんだわ!これってもしかして……恋!?
○○:まぁ目が合ってるってのは気のせいだろうけどね、でも確かに可愛いよな
えっ?うそ……今、かかかか可愛いっていわれた!?
やばい!やばいやばいやばいやばい、やばいぃぃ!
佐藤:やっぱり○○もそう思うよな!小島さんって彼氏いんのかな?
○○:佐藤は狙い定めんのはやすぎるんだよ、でも噂ではいるみたいな事聞いたけどな
佐藤:えぇ、まじかよぉ
いないよ!誰!?そんな噂流した人ぉ!
佐藤:○○的に小島さんはどうなの?タイプなの?
○○:う〜ん、難しいな……俺さボブカットの子が好きなんだよね
佐藤:あ〜前から言ってたね
ボブ…………し、したことない
髪をバッサリいくのって結構ハードルたかいよぉ!
凪紗:……でも、もし可能性があるなら……
〜〜
凪紗:…………ふぅ
行きつけの美容院の前、何故か足が震えている
凪紗:よしっ!
美容師:おっ!凪紗ちゃんいらっしゃい!
凪紗:どうも!
美容師:おぉ……なんか気合い入ってるね笑、ここ座ってー
凪紗:失礼します!
美容師:今日はn……
凪紗:ボブでお願いします!!!
美容師:ぼ、ボブ?……ほぉ、初めてじゃない?
凪紗:はいぃ……似合うか分かりませんけど……
美容師:いや、似合うでしょ!だって凪紗ちゃんだよ〜
凪紗:そ、そうですかね///
美容師:うん!じゃ、やってくよー
〜〜
翌日の朝
小島家はいつもより少しだけ賑やかだった
凪紗:あぁ……どうしよ、どうしよぉ
凪紗母:何をそんな慌ててるのよ
凪紗:うわ〜ん、ママぁ……私似合ってないかもぉ
凪紗母:似合ってるじゃないの、自信持ちなさい!
凪紗:で、でも〜
凪紗父:そうだぞ、昔の母さんに似ててすごく可愛いぞ!
凪紗母:ちょっと///やめてよもう///
凪紗:うぅん……あっ!やばい、遅刻する!
凪紗母:早く行っておいで!
凪紗:行ってきま〜すぅ!
〜〜
教室のドアの前
いつも通りに入ればいい……何事も無かったように
だけど
凪紗:なんでっ……うぅ
手が震えて……
○○:ねぇ、入れないよ…そこいられると
凪紗:っ!?あっ、ごめん!…○○くぅん………///
○○:え?小島さん……?
あぁぁぁぁぁ!目を合わせれないよぉ!
しかも髪バッサリいってるし!
いやだぁ……見ないで……
凪紗:……○○くん……こ、これは
○○:…すっげぇかわいい……
凪紗:……へ?
○○:はっ!?な、なんでもない///あっそうだ、先生に呼ばれてたんだった…じゃ!
凪紗:…………かわ……いい……?
え、えぇぇぇぇ!?
〜〜
やばい……
目の前にして言葉がもれてしまった
ずっと彼女を見ていた
ずっと彼女の声を聞いていた
ずっと彼女のことを考えていた
だけどこの感情が何なのかよくわからなかった
しかし、ようやく気づいた……
○○:俺……小島さんのこと……
どうしてあの場から逃げてしまったのか
伝えなければいけないことがあるはずなのに
○○:あれ……?
手が震えている……怖いのか?
何にそんな怯えることがあるのだろうか
恋をするということはこんなにも……
苦しいことなのか
〜〜
凪紗:………
なんかめっちゃ見られてる気がする……
背中に視線を感じて、振り返る
○○:っ!?……///
えっ!?そっぽ向かれた……でも顔が赤い気がする…
○○:………///
やめてくれ!急に振り向くの……心臓に悪い……
先生:おーい!小島、なにずっと後ろ向いてんだ
凪紗:っ!?す、すいません……
あー!ソワソワする……○○くん……もっと見て欲しいな……
先程までは見られたくなかった、だけど今は見られたくてうずうずしている
その紅潮した顔をもっと見せて……
〜〜
その日の放課後
佐藤:○○〜今日さ、カラオケ行かね?
○○:…………え?あ、いやぁ……どうしようかな
佐藤:えっ?めずらし、即答すると思った
○○:う〜ん、今日はいいや
佐藤:えー、わかりましたよぉ……1人で行くよぉ
○○:………………
佐藤:…大丈夫か?こいつ?
凪紗:…………
私はどうしたいんだろ?
髪をきって、それから……?
なにも行動しないの?
どうして?怖いの?
このままじゃなにも変わらないじゃない
今、この時しかないの
もう迷うな、私
この気持ちをわかって欲しいだけ
そう……それだけでいい……
凪紗:……よしっ
一歩、また一歩と彼へ足を運んでゆく
鼓動は高鳴る、おさまることをしらない
それでいいじゃないか
彼のことが大好きである証拠じゃないか
嬉しい、彼のことを好きでよかった
頑張れ、私!強いぞ、私!
凪紗:…○○くん
○○:っ!?な、なに?
凪紗:あっ……そ、その……
目の前にすると思うように言葉が出てこない……
それでも……
凪紗:き、今日さ一緒に帰らない?
○○:……えっ!?
佐藤:ほぇっ!?
○○:……佐藤じゃないよ
佐藤:えっ?あ、あぁ……
凪紗:だ、だめ……かな……
○○:い、いいよ……帰ろっ…か
凪紗:うん……
○○:じゃ、佐藤くんお先に失礼します
佐藤:…………ほぉい……
〜〜
凪紗:……
○○:……
静寂に殴られている、だけどこの空間が心地よいというかなんというか…………不思議だ
凪紗:……あのさ
○○:なに?
凪紗:今日ずっと私の事見てたよね?
○○:っ!?ご、ごめん……
凪紗:ううん、謝らないで?…その……なんでかなって気になっちゃって……
○○:…………
凪紗:ねぇ……教えて?お願い……
○○:え、えっと……その……か、かっ……
彼の正面に立ち、じっと待つ
聞きたい……その言葉の続きを
○○:か、可愛かったから……///
あぁ……愛おしいよ…その声も、その表情も
凪紗:そうかぁ///ふふふ///
止まっていた足が動き始める
少しばかり心も躍る
○○:……
僕はずっと好きだったんだな
気づかなかったんじゃない、気づかない振りをしていただけだったんだ
君にこの気持ちが伝わってしまうのが怖かったから
だから隠し続けていたんだ
でも、もう逃げない
○○:あの、小島さん……
凪紗:うん?なぁに?
○○:えっと……
上手く伝えようとしなくたっていい
不器用ながらでもこの気持ちを君に……
○○:僕は小島さんのことがずっと好きでした
先に言われてしまった
私が伝えるべきだったのに
○○:初めて会った時からずっと……
私もだよ……なんだ、お互い様だったんだ
○○:こんな不器用な僕で良ければ……
凪紗:ずるいよ……
○○:え?
凪紗:私からもいい?
この気持ちも、想いも、なにもかも……
凪紗:○○くんが好き……この一言で表したくないくらいに
幸せが溢れてくる
この瞬間を切りとって永遠にしておきたい
それはきっとすごく綺麗だから
凪紗:ねぇ、○○?私の髪型似合ってる?
○○:うん、すごく似合ってる
凪紗:嬉しい///ありがとう……
ふたつの想いがひとつになる時
美しい輝きを放ち、暗闇を晴らす
それは誰にも遮ることの出来ない
ふたりだけの輝きだ