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盗撮がバレたので、思い切って告白しようと思う

「最低だ」

そんなことはわかってるけど…

僕は今、盗撮をしている

アパートの隣の部屋に住んでいる女子大生

エロ目的じゃなくて…

人間の生態が気になると言うか

昔からそうだった


○○:あっ、帰ってきた

『ふ〜…ただいま〜』

○○:ふふっ、誰に言ってんのよ

『はぁ疲れた…』

○○:いつもよりお疲れだね


小田倉麗奈。

君のことはなんでも知ってる

知ってるはずだったのに…


『…あ、もしもし?今時間大丈夫?』

○○:ん?

『いやさ〜声聞きたくて…///』

○○:誰だ…?

『やっぱ△△の声落ち着く』


明らかに男の名前だ

彼氏か?

いや、そんな素振りは今まで…

あぁ…なんて幸せそうな顔

妬ましい

麗奈は僕の…


○○:…あれ?


なんでこんな気持ちになってる?

なんで…泣いている?

まさか

僕は麗奈を…?


『明日楽しみにしてる!じゃあね〜』

○○:……

『ふふっ///』


麗奈は頬を少しだけ紅潮させ

ベッドに倒れ込む

そんな表情を僕は

苦しみながら眺めていた



目覚まし時計が荒々しく音を響かせる


『ん〜……はぁ…』

○○:おはよう、麗奈


僕は寝ることができず

ずっと麗奈を映し出す画面を眺め続けていた


『ふぁ〜…起きよっ』


そう言って体を起こすと

手際よく身支度をこなす

どこかへ行くんだろう


『…よしっ!』


麗奈は玄関へ向かったので

僕も玄関へ

用事なんてない

ただ彼女と顔を合わせるため


麗奈:あっ○○さん!おはようございます〜

○○:小田倉さん、おはよう…

麗奈:今日はお仕事じゃないんですね

○○:…え?

麗奈:…い、いや…いつも土曜日はお仕事に行かれてるイメージだったので…

○○:あ〜…今日は休んじゃって

麗奈:体調がすぐれないんですか?

○○:まぁ…そんなところです

麗奈:ゆっくり休んでくださいね

○○:ありがとうございます、小田倉さんはどちらへ?

麗奈:今日は友達と映画を見に行きます!


友達…ね

それなら良いんだけど


○○:そっか…楽しんで

麗奈:はいっ!



それからも盗撮を続けた

△△は麗奈の彼氏だった

何度か麗奈の家にも来た

それを見る度に心が張り裂けそうになる

……今日もか


『やっときた〜』

"ごめんごめん"

『はいこれ』

"おっフロランタンだ"

『好きって言ってくれるからついたくさん作っちゃうんだよね〜』


なんてことない会話だ

だけど麗奈はとても幸せそうで


『最近はね、お菓子だけじゃなくて料理もするようにしてるのっ!』

"そうなんだ"

『うん!だから好きな食べ物とかあったら…』

"てかさ"


空気がガラッと変わるのを感じた

嫌な予感がする


『ん?なに〜?』

"そろそろヤらせてくんね?"

『やらせるって何を?』


麗奈はとても純粋だ

そういった事とは無縁でいた

純粋すぎるが故に△△も言い出せなかったんだろう

……いずれくると思っていた


"はぁ…もういいか"

『△△?どうしたの…んっ!?』


△△は無理やり麗奈の唇を塞ぐ

そのまま麗奈の体を慣れた手つきで触り始める


『ちょ、ちょっとやめて…!』

"チッ…なんだよ"

『今日の△△怖いよ…』

"お前は大人しく俺の人形になってれば良いんだよ!"


怒鳴り上げ、麗奈を押し倒す

麗奈は恐怖でうまく抵抗できていなかった


『いやっ…!!!』

"もっと鳴いてみろよ!"

『いやだ…なんで…』

"なんで?元々お前とはヤるためだけに付き合ったんだよ!"


△△のされるがままの麗奈を

僕はただ傍観していた

これも彼女の人生だと

赤の他人の僕が関わるものではないと

そう自分に言い聞かせながら


『誰か……助けて…』


考えるより先に体が動いていた

君の悲しみと恐怖の涙なんて

僕はこの世で一番見たくないから

扉に鍵はかかっていなかった


○○:おい!何してんだ!!!

△△:っ!?

○○:麗奈から離れろっ!


△△を麗奈から引き剥がし、一緒に倒れ込む


麗奈:○○さん!?

○○:逃げろ麗奈!

△△:誰だよテメェ!

○○:早く逃げて!


お互いに立ち上がり、少し距離をとって向き合う

すると気が動転していたのか麗奈は包丁を手にし

それを△△に向ける


○○:麗奈……やめろ…

△△:っ……

麗奈:はぁ…はぁ…出ていって

△△:お前…!

麗奈:出ていって!

△△:……クソっ…!


そう言い残して彼は出ていった


麗奈:大丈夫ですか!?

○○:いや、小田倉さんの方こそ大丈夫?

麗奈:私のことはいいですから…怪我とかされてないですか?

○○:うん…多分大丈夫かな

麗奈:よかった……


彼女の目には涙が浮かんでいた

安堵からくるものならいいんだけど


○○:小田倉さん…

麗奈:…っ、怖かった…


彼女はついに泣き出してしまった

僕を抱きしめながら


○○:もう大丈夫だから

麗奈:…うぁ……っ…うぅ…



麗奈:す、すいません…こんなにも長い時間

○○:いいよ全然

麗奈:…あの、どうしてきてくれたんですか?

○○:え?そ、それは……


「盗撮してたから」

なんて言えるはずもなく


○○:小田倉さんの悲鳴が聞こえたから、何かあったのかなって…

麗奈:そんな大きかったですか?なんか恥ずかしいなっ///

○○:じゃ、僕はそろそろ戻るよ…いてて…

麗奈:大丈夫ですか?

○○:ちょっと足やっちゃったかも…

麗奈:それは大変!部屋まで肩貸します

○○:っ!?い、いや大丈夫だよ!歩けるから!

麗奈:恩返しさせてください

○○:いや、でも…

麗奈:も〜!貸すったら貸すんです!


非常にまずい

とりあえず玄関までなら大丈夫か…


○○:ありがと、ここまでで…

麗奈:いや、手当するので

○○:ほんとに大丈夫だから!

麗奈:いきますよっ!


もう全てを諦めた

でも嫌われてもいいか

君を救えた事実は変わらない


麗奈:はい、ベッドに座ってください

○○:…うん

麗奈:ん?こ、これなんですか…?

○○:それは…

麗奈:これ…私の部屋…ですか?

○○:うん…

麗奈:……


そりゃ引かれるよな

なんかどうでも良くなってきた

このまま告白でもしちゃおうか?


麗奈:盗撮…ですよね、これ

○○:ごめん

麗奈:どうして…

○○:小田倉さんが好きだから…気持ち悪いよね
行き過ぎた愛ってやつなのかな?ほんとに最低だよな…

麗奈:…私のことが…好きなんですか?

○○:うん

麗奈:ほんとに?

○○:この気持ちに嘘は無いよ

麗奈:…嬉しい

○○:……へ?

麗奈:私のこと、ずっと見守っててくれたんですね…


なんて純粋なんだ

やっぱり僕は…

君を諦めきれないのか


麗奈:○○さん

○○:は、はい

麗奈:私のこと好きなんですよね?

○○:もちろん

麗奈:…私を貰ってくれませんか?

○○:え…


こうして僕たちは付き合うこととなった

気持ちの悪い恋だと思うだろうね

でも僕たちは幸せだから

それでいいんだ



麗奈:…あ、もしもし?

"うまくいった?"

麗奈:うん、私のものになった

"そりゃよかった…はぁ、やっと終わった!"

麗奈:ごめんね?きつい役回りさせちゃって

"いやいや、いいよ…金はちゃんと貰ったし"

麗奈:ほんとにありがと〜

"うん、またなんかあったら"

麗奈:は〜い、じゃあね

"ほーい"

麗奈:ふふっ、○○さん…私はずっと気づいてたんだから…///



狂ってる

気持ち悪い

だけど…

幸せならそれでいいよね?


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