盗撮がバレたので、思い切って告白しようと思う
「最低だ」
そんなことはわかってるけど…
僕は今、盗撮をしている
アパートの隣の部屋に住んでいる女子大生
エロ目的じゃなくて…
人間の生態が気になると言うか
昔からそうだった
○○:あっ、帰ってきた
『ふ〜…ただいま〜』
○○:ふふっ、誰に言ってんのよ
『はぁ疲れた…』
○○:いつもよりお疲れだね
小田倉麗奈。
君のことはなんでも知ってる
知ってるはずだったのに…
『…あ、もしもし?今時間大丈夫?』
○○:ん?
『いやさ〜声聞きたくて…///』
○○:誰だ…?
『やっぱ△△の声落ち着く』
明らかに男の名前だ
彼氏か?
いや、そんな素振りは今まで…
あぁ…なんて幸せそうな顔
妬ましい
麗奈は僕の…
○○:…あれ?
なんでこんな気持ちになってる?
なんで…泣いている?
まさか
僕は麗奈を…?
『明日楽しみにしてる!じゃあね〜』
○○:……
『ふふっ///』
麗奈は頬を少しだけ紅潮させ
ベッドに倒れ込む
そんな表情を僕は
苦しみながら眺めていた
◇
目覚まし時計が荒々しく音を響かせる
『ん〜……はぁ…』
○○:おはよう、麗奈
僕は寝ることができず
ずっと麗奈を映し出す画面を眺め続けていた
『ふぁ〜…起きよっ』
そう言って体を起こすと
手際よく身支度をこなす
どこかへ行くんだろう
『…よしっ!』
麗奈は玄関へ向かったので
僕も玄関へ
用事なんてない
ただ彼女と顔を合わせるため
麗奈:あっ○○さん!おはようございます〜
○○:小田倉さん、おはよう…
麗奈:今日はお仕事じゃないんですね
○○:…え?
麗奈:…い、いや…いつも土曜日はお仕事に行かれてるイメージだったので…
○○:あ〜…今日は休んじゃって
麗奈:体調がすぐれないんですか?
○○:まぁ…そんなところです
麗奈:ゆっくり休んでくださいね
○○:ありがとうございます、小田倉さんはどちらへ?
麗奈:今日は友達と映画を見に行きます!
友達…ね
それなら良いんだけど
○○:そっか…楽しんで
麗奈:はいっ!
◇
それからも盗撮を続けた
△△は麗奈の彼氏だった
何度か麗奈の家にも来た
それを見る度に心が張り裂けそうになる
……今日もか
『やっときた〜』
"ごめんごめん"
『はいこれ』
"おっフロランタンだ"
『好きって言ってくれるからついたくさん作っちゃうんだよね〜』
なんてことない会話だ
だけど麗奈はとても幸せそうで
『最近はね、お菓子だけじゃなくて料理もするようにしてるのっ!』
"そうなんだ"
『うん!だから好きな食べ物とかあったら…』
"てかさ"
空気がガラッと変わるのを感じた
嫌な予感がする
『ん?なに〜?』
"そろそろヤらせてくんね?"
『やらせるって何を?』
麗奈はとても純粋だ
そういった事とは無縁でいた
純粋すぎるが故に△△も言い出せなかったんだろう
……いずれくると思っていた
"はぁ…もういいか"
『△△?どうしたの…んっ!?』
△△は無理やり麗奈の唇を塞ぐ
そのまま麗奈の体を慣れた手つきで触り始める
『ちょ、ちょっとやめて…!』
"チッ…なんだよ"
『今日の△△怖いよ…』
"お前は大人しく俺の人形になってれば良いんだよ!"
怒鳴り上げ、麗奈を押し倒す
麗奈は恐怖でうまく抵抗できていなかった
『いやっ…!!!』
"もっと鳴いてみろよ!"
『いやだ…なんで…』
"なんで?元々お前とはヤるためだけに付き合ったんだよ!"
△△のされるがままの麗奈を
僕はただ傍観していた
これも彼女の人生だと
赤の他人の僕が関わるものではないと
そう自分に言い聞かせながら
『誰か……助けて…』
考えるより先に体が動いていた
君の悲しみと恐怖の涙なんて
僕はこの世で一番見たくないから
扉に鍵はかかっていなかった
○○:おい!何してんだ!!!
△△:っ!?
○○:麗奈から離れろっ!
△△を麗奈から引き剥がし、一緒に倒れ込む
麗奈:○○さん!?
○○:逃げろ麗奈!
△△:誰だよテメェ!
○○:早く逃げて!
お互いに立ち上がり、少し距離をとって向き合う
すると気が動転していたのか麗奈は包丁を手にし
それを△△に向ける
○○:麗奈……やめろ…
△△:っ……
麗奈:はぁ…はぁ…出ていって
△△:お前…!
麗奈:出ていって!
△△:……クソっ…!
そう言い残して彼は出ていった
麗奈:大丈夫ですか!?
○○:いや、小田倉さんの方こそ大丈夫?
麗奈:私のことはいいですから…怪我とかされてないですか?
○○:うん…多分大丈夫かな
麗奈:よかった……
彼女の目には涙が浮かんでいた
安堵からくるものならいいんだけど
○○:小田倉さん…
麗奈:…っ、怖かった…
彼女はついに泣き出してしまった
僕を抱きしめながら
○○:もう大丈夫だから
麗奈:…うぁ……っ…うぅ…
◇
麗奈:す、すいません…こんなにも長い時間
○○:いいよ全然
麗奈:…あの、どうしてきてくれたんですか?
○○:え?そ、それは……
「盗撮してたから」
なんて言えるはずもなく
○○:小田倉さんの悲鳴が聞こえたから、何かあったのかなって…
麗奈:そんな大きかったですか?なんか恥ずかしいなっ///
○○:じゃ、僕はそろそろ戻るよ…いてて…
麗奈:大丈夫ですか?
○○:ちょっと足やっちゃったかも…
麗奈:それは大変!部屋まで肩貸します
○○:っ!?い、いや大丈夫だよ!歩けるから!
麗奈:恩返しさせてください
○○:いや、でも…
麗奈:も〜!貸すったら貸すんです!
非常にまずい
とりあえず玄関までなら大丈夫か…
○○:ありがと、ここまでで…
麗奈:いや、手当するので
○○:ほんとに大丈夫だから!
麗奈:いきますよっ!
もう全てを諦めた
でも嫌われてもいいか
君を救えた事実は変わらない
麗奈:はい、ベッドに座ってください
○○:…うん
麗奈:ん?こ、これなんですか…?
○○:それは…
麗奈:これ…私の部屋…ですか?
○○:うん…
麗奈:……
そりゃ引かれるよな
なんかどうでも良くなってきた
このまま告白でもしちゃおうか?
麗奈:盗撮…ですよね、これ
○○:ごめん
麗奈:どうして…
○○:小田倉さんが好きだから…気持ち悪いよね
行き過ぎた愛ってやつなのかな?ほんとに最低だよな…
麗奈:…私のことが…好きなんですか?
○○:うん
麗奈:ほんとに?
○○:この気持ちに嘘は無いよ
麗奈:…嬉しい
○○:……へ?
麗奈:私のこと、ずっと見守っててくれたんですね…
なんて純粋なんだ
やっぱり僕は…
君を諦めきれないのか
麗奈:○○さん
○○:は、はい
麗奈:私のこと好きなんですよね?
○○:もちろん
麗奈:…私を貰ってくれませんか?
○○:え…
こうして僕たちは付き合うこととなった
気持ちの悪い恋だと思うだろうね
でも僕たちは幸せだから
それでいいんだ
◇
麗奈:…あ、もしもし?
"うまくいった?"
麗奈:うん、私のものになった
"そりゃよかった…はぁ、やっと終わった!"
麗奈:ごめんね?きつい役回りさせちゃって
"いやいや、いいよ…金はちゃんと貰ったし"
麗奈:ほんとにありがと〜
"うん、またなんかあったら"
麗奈:は〜い、じゃあね
"ほーい"
麗奈:ふふっ、○○さん…私はずっと気づいてたんだから…///
狂ってる
気持ち悪い
だけど…
幸せならそれでいいよね?
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