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国の考える日本国内のデータセンター分布とAIデータセンターの地方分散の今後

各地でデータセンターの開発が進んでいますが、国が投資する施策も進んできている中で現状の整理をしてみたいと思います。またそれに加えて、今後需要がさらに期待されるAIデータセンターを考えた場合の、地方分散についても考えてみましょう。



まとめ

  • 国の考えているデータセンターの地方分散が徐々に進んでいる

  • データセンターの主戦場はハイパースケーラーとなり、特に生成AI向けの市場が拡大する

  • 生成AIでは都市圏から離れたところにセンターが設置されても大きな問題はない。電力などが確保できる地域がアジアを含めた都市部に計算機資源を提供するビジネスを展開することも可能になる!


引用元

今回は以下の経済産業省の「第7回 デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」の資料から抜粋させていただきます。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007.html


DCの整備状況のおさらい(令和5年5月30日)

まず全体のDCの整備状況と国の方針をおさらいしましょう。

データセンターの地方分散と、それに必要な海底ケーブルの提供が謳われています。

その流れの一つとして、北海道での地方分散を実現する補助事業が採択されています。ソフトバンク社が苫小牧で実施するようです。


前回もご紹介したように、日本海側、太平洋側どちらにも海底ケーブル網を展開しています。


データセンターの市場動向と国内の立地状況

国の方針は先ほど説明した通りですが、実際に市場はどう動き、どこにデータセンターが立地しているのでしょうか。

まず、ラック数で市場を見ると今後はハイパースケール型(要は大型)のデータセンターの市場が拡大していくようです。

その中で現状のデータセンターの分布を見るとやはり関東・関西へ集中しています。特に関東への集中がすごいようで、印西市の影響もあると推察はされます。

一方、2024年以降に新設されるデータセンターを見てみると、それなりに地方分散も進んでいます。印西市の開発は引き続き進んでいきますが、広島県三原市/和歌山市のGoogleや、松江のIIJなど西日本での分散もポイントになります。

国が考えていた地方分散の図と比較していただくと、国としては安全保障などの観点から地方分散をしていきたいと考え、おおよそ、どこに分散するかを想定していたようですが、Googleなどの考え方と一致してはいないようで、微妙に分散している地域が異なっています。


生成AIとデータセンター戦略:市場の見通し

今まで単にデータセンターという枠で考えていましたが、生成AIのデータセンターに特化して考えてみると少し考え方も変わってきます。もちろん今後伸びるデータセンター投資は生成AIが市場を引っ張っていきますので、このポイントは外せません。

まず、生成AIの今後の見通しです。この辺りはご存知の通り、急激に成長をし、2030年で、1.7兆円まで伸びます。AIインフラは、1兆円程度まで伸びます。


生成AIの影響で各産業がどのように成長するかを考えてみましょう。ここでは、生産性成長率という指標を用いています。生産性が成長すると、それに従って、実質GDPも成長する(相関がある)、という論拠のもと生産性が成長しやすい分野で特に経済成長するというシナリオが出ています。

(バックオフィス系業務は、DXでも生成AIでも、いつでも人から大体され生産性が向上すると言われている分野ですね)

それぞれの産業において、機能別にどこが生成AIの影響を受けるか、という図もあります。自動車などの製造業の、製造・加工分野などで大きな影響があるようです。


生成AIによるデジタル赤字の拡大を防ぐ施策

先ほどのような市場の予測がある中で、生成AIのツールは主に外国のものを利用することになります。

このまま生成AIも海外のものを利用することになれば、デジタル赤字を拡大させることになる、と危惧されています。そのためにも、せめて計算機資源は国内に設置し、そこでAWSやGoogleのサービスを利用することで赤字幅拡大を防ぐ施策を考えているようです。


生成AIのデータセンターの電力・冷却問題

この話題は別の記事でもまとめていこうと思いますが、特に生成AIが使うGPUのデータセンターは、電力と冷却(水)の問題が大きくつきまといます。

データセンターの電力需要においては、半導体工場の比ではない電力量が想定されています。2033年ごろには、2024年度の10倍程度の電力になるということです。

冷却技術は特に注目されており、水冷・プレート・液浸などの冷却方法の技術も今後需要が伸びていくと想定されます。

電力や冷却・水の問題を抱えるAIデータセンターに対して、今後は特にエネルギーなどの効率が、世界各国で規制がかかると考えられます。EU・ドイツなどでは、PUEなどに規制値を設けることとなるようです(PUEについてはまた別途説明します)

これらの消費電力減を実現できる一つの方法論として光電変換があります。日本ではNTTが有名ですが、海外でもレイヤーは異なりますがプレーヤーはいます(チップ内通信はAvicenaなど)。APNを使った日本国内の分散立地イメージ図も出ています。広島も三原市あたりに入っているように見えます。


AIデータセンターの最適分散

ここまで見てきたAIデータセンターにおいて、地方分散を考えたときにはどのような最適化が可能なのでしょうか?

ここにも書いてある通り、AIデータセンターは、大都市と近くにある(低遅延条件)はあまり重要ではありません。それよりも電力などの確保が重要と考えられます。

地域にとってもこれはチャンスと考えられます。

(広くはアジアを見据えた)大都市圏での計算機資源となり、地域で獲得した脱炭素などの電源活用によって外貨を獲得する。またそれらのDCを産業利用することが重要になります。

前回ご紹介した通り、計算機資源を準備して固定資産税を稼ぐこともできます。計算機資源を都市部に提供するというのは、デジタル時代に地域が稼ぐ一つの重要な方法と考えられます。


最後に

今回は経済産業省の最新の話題をまとめてみました。重要な点として生成AIのデータセンターは都市圏から離れていたり、海底ケーブルの近くではなくても十分戦えるということです。

関連記事は以下になります。ぜひ読んでみてください。