マガジンのカバー画像

1111冊を読む日々

20
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

村上春樹『街とその不確かな壁』新潮社

 コロナのロックダウンの間、ずっと書き継がれていた小説。書店の平積みの上に、そんなポップが立っていた。確かに、小説に出てくる街は、コロナのせいで人通りが消えた、たちの悪い静けさと同じような気配が漂っている。  懐かしい人々。いったいどうしてそう思うのか分からないが、この小説の登場人物はみな、懐かしい。前世紀の幻を見ているようでもある。ところで誰もスマホを持っていないのは、いったいどうして、、、。  黄昏は、現実と夢、生と死、大人と子供、比喩と描写が交錯する。それを書き留め