シェア
金とき
2021年9月2日 18:59
雨が降っていた。夜の雨。しっとりと指を濡らす。傘、ないな、と呟く。「あ、僕、あるよ」 そう言って、篠田が傘を取り出した。女の子の持っているような、可愛らしいデザインの傘だった。「それ、噂の幼馴染みの?」 ぴったりと肩をくっつけながら、唇を尖らせる。篠田は肩を震わせた。「そうだ。借りてたんだ」 わたしはふっと笑った。噂の幼馴染みの、小さな傘にふたりで縮こまって歩く。篠田が言