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朝のお話です。 明るくて、希望に満ちているはずだけれど、実は暗い夜の続きで、いろんな気持ちが入り混じっているようです。
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2021年9月の記事一覧

重なる、夏

重なる、夏

 Tシャツの内側で汗が一筋流れた。襟を掴んでぱたぱたする。特急電車が通り抜ける。すぐ隣に立った女の子のスカートがふわりと舞う。

 灰色の壁に大きな広告が立ち並んでいる。毎日同じだ。美容クリニックの広告では美しい女性が微笑んでいて、僕はいつもこのひとの元の顔を想像しようとする。でも、できない。どこが手を入れられていて、どこがそうでないのか、僕にはわからなかった。もしかしたらただ広告に採用されただけ

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溢れ出した

溢れ出した

 あ、とあたしが止める暇もなく、ミキは巾着煮にかぶりついた。じゅわっと溢れ出した出汁が顎を伝って、ミキはへへ、と笑った。

「もう、汚い」

 紙ナプキンを数枚取って差し出す。ミキは顎を拭って、美味しいねと言った。あたしも頷く。

「朝から和食なんて久しぶりだな」

「そうなの? 朝は米だよ、米」

 パンでしょ、と言いながら、味噌汁の麩を掬う。朝からこんなに手のこもった料理が食べられることなんて

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