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朝のお話です。 明るくて、希望に満ちているはずだけれど、実は暗い夜の続きで、いろんな気持ちが入り混じっているようです。
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2020年5月の記事一覧

空の夢

空の夢

 空を見上げたつもりが、そこには錆びれたコンクリートが広がっていた。真っ直ぐ上を向いてみたけれど、青い空は見えない。だが、そこにいた彼は、この状況を特に気にもかけず、今日は暗いなあ、と呟いた。僕は、早くここから出て、空を見たいと願った。

 いつものように家を飛び出して学校に来たはずの僕は、いつの間にかそこにいた。どうやってたどり着いたのか、何も覚えていない。ここはどこだろう。鉄筋コンクリートの高

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赤いマスク

 電気をつけて時計を見ると、午前3時を示している。なんでこんな時間に目が覚めたんだろう。布団を頭から被り直し、目を瞑る。
 大きくあくびを一つすると、もう一度、目を開いた。頬を涙が伝う。
 …眠れない。
 変な夢を、見ていた気がする。嫌な夢だ。鬼ごっこをしていたと思う。学校の友だちがみんないた。特に仲の良い子が、鬼をしていた。鬼は皆、赤いマスクを装着する。私は倉庫の天井裏に隠れて、下にいたみんなが

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ブラック珈琲

 お疲れ様でーす、と小さく声をかけて、裏口から外に出る。返事はない。カチャリ、とドアが閉まって、この世界は一瞬で黒くなる。

 ふう、と息をつくと、今日もやり通した自分に乾杯をする。プルタブをしゅっという音とともに開ける。微糖の缶珈琲が、午前四時の身体に染みわたっていく。

 甘い。

 スタンドを立てたままの自転車に跨って、足をぶらぶらさせてみる。ぎりぎり届かないほどの高さに合わせたサドル。八時

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卒業

 窓を開けて、よし、と意気込んだ。今日から荷物の整理を始めると決めたのだ。

 三日前、高校を卒業した。春からは東京の大学に通う。憧れの一人暮らしだ。

 一つ一つ、ものを仕分けしていく。教科書は捨てる、このポーチは持っていく、アルバムは置いていく。机自体は捨てないけれど、いらないものは全てこの機会に捨ててしまおうと思う。新しい土地で、新しい自分になるのだから、古い自分とは綺麗におさらばするのだ。

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ポピー

ポピー

 おはようございます。みなさん、朝ですよ。もうすっかりお日さまがのぼって、あたりがよく見えます。坊主頭の少年がやってきて、近くで素振りをはじめました。その頼りないバットに合わせて風がびゅうっと吹いて、私は心も少しだけ、ほんの少しだけなびきます。

 茶色いかばんをゆらして今日もせかせかと歩き過ぎるサラリーマンにいってらっしゃいとささやくと、ちらっとこちらを振りかえった気がします。めがねの奥の瞳があ

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儚くも

 洗濯物をしていると、眩しい水がこちらへはねてきます。私は着物の袖をまくると、たすきで括りました。今日も、あなたに触れる手拭いを、優しく柔らかくなるように、愛情を込めて丁寧に洗うのです。

 お天道様の光に照らされて水面がサラサラと流れてゆく途中に、小さな薄桃色の花びらが一枚、浮かんでおりました。どこから流れてきたのでしょうか、辺りを見渡せど、それらしき花は咲いていません。不思議に思ってすくい上げ

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特別を隠して

 前髪が伸びてきたなあ、と思う。もう真っ直ぐに伸ばすと目を覆い隠せてしまうくらいだ。

 それに、横の髪の毛もだいぶ伸びてしまっている。最近は一つ結びをするとき、耳前に垂らす髪の毛の割り当てに五分くらいかかっている。

「触角は命なのよ」

「ふうん。女の子は大変だなあ」

私の思いも知らないで、のんびりと彼が言った。髪を切る用の鋏を取り出して、私を鏡の前に座らせる。スーパーのビニール袋を胸の前で

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