「ネコかく語りき」と「硝子の少年」
お、いいハコがあるよ。
ここに、よいしょっと。
ああ落ち着くわ。
で、なんだっけ?なやみ。
んん、玉ねぎのニオイがするね。このハコ。
ちょっとくさいよ。
しかしネコのわたしに相談もちかけるとは、
あんたもついにヤキが回ったね。ふふ。
まあ辛気くさい顔しちゃって、なんだい。
元気をお出し。
どうせガールフレンドにそっぽ向かれたのとか。
しごとがうまくいかないのとか、
そんなのだろう?
あのね、季節の変わり目っていうのはね、
人間だれしもアンニュイなムードになるもんさ。
相手もあんたが憎くてやってるわけじゃないよ。
知らないけどね。
ときには鈍感になることだって必要なんだ。
あんたは少々センシティブすぎるきらいがあるよ。
いつまでも硝子の少年じゃあ、
この先きっとつらくなる。
オトナはちょっとズルいくらいが丁度いいんだよ。
知らないけどね。
そうだ、もし、しごとがイヤなのなら
わたしと居酒屋を開業するってのはどうだい。
日本初の「ネコカフェ」ならぬ「ネコ居酒屋」さ。
水曜日のネコって知ってるかい?
実に良いネーミングセンスのビールさ。
それを生樽で仕入れたら良いじゃないか。
わたしは下戸だから飲めないけどね。ネコだし。
でも、オープンしたあかつきには、
わたしの知り合いを何匹も呼んでやるから、
かつぶしとじゃこをたんと用意しときなよ。
あんたがやれば、きっと良い店になるよ。
どうだい。いいアイデアだと思うんだけどね。
うん?
なんだい。もったいぶってないで言ってみなよ。
え、このアパート、ネコ禁止だった?
いまさら?イヌはオーケーなのに?
なんだいそりゃ。