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「りんご」と「パセリ」と「ピアノ」と「幽霊」

言葉で自分の気持ちを伝えるのは難しい。思考を言語に置き換えるときに、「発信者エフェクト」がかかり、相手が言語を思考に落とし込むときに「受信者エフェクト」がかかるのである。慎重に言葉をえらんでも100%伝わることなどないと考えるのが自然だ。

しかし、「特定の状況下」では伝達の齟齬が限りなくゼロに近づくことがある。その顕著な例を目の当たりにしたので紹介してみたい。母と子のやりとりである。

大型商業施設のなかの楽器店を通りかかった時のこと。店先には「無人ピアノ」が置いてあった。鍵盤が自動的に動作し、旋律を奏でている。まるで常人の目には映らない「幽霊」が演奏しているかのような光景である。これを目にした子どもが母親にそっと耳打ちする。

「ねえ、あれって、どうゆうこと?」

あれって、どうゆうこと。ときた。
これほど的を射た表現があるだろうか。
発信者は子どもである。「どういう仕組みか」を聞きたいわけではないし、もちろん「販売しているのか」聞きたいわけでもない。もっと見たままの状況が「どうゆうこと」かを聞きたいのである。

ねえ、(ちょっとびっくりしてるんだけど、)あれって(、わたしの人生ではあり得ないことが起きてる。だって、音出てるけど、人が弾いてないよ。ピアノが生きてるわけないよね。でも、一応、あれに聞こえないように聞くんだけどさ、いったい)どうゆうこと?

心の動きまでが鮮やかに表現されている。
なんだか無性に心を打たれた私である。

気のせいかもしれないけど。



さて、与太話もほどほどに。
トップの写真は「りんご」です。

お店で食事した際に、おかみさんが子どもにサービスで出してくれたものです。こういった心遣いは嬉しい。一生通い詰めようと心に決めました。

しかし、パセリを添えるのはなんでだろう。

ふいに、となりでお茶を飲んでいる奥さんに「ねえ、あれって、どうゆうこと?」と耳打ちしようかという考えがよぎった。

でも、やめておきました。


きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。

それでは、また明日。

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