「シズカオカモト」と「燃える代官山」
ハタチそこそこの頃。
夏の盛りのある日、スーパーオシャレタウン「代官山」へ初めて足を踏み入れた時のことです。
当時の僕のファッションのテーマは「ダサみ」。あえてダサいコーディネートを突き詰めることでそこに「オシャレみ」が芽生えるはずだと考えていました。
恥ずかしや。「ボロは着ても心は錦」の意味を完璧に履き違え、ナンセンスをこじらせている。
また、その日は連れを伴って電車に揺られていたのですが、その彼もまた「裏原宿」という住所が実在すると信じていたというツワモノ。
ある意味「最強のふたり」で挑む、初めての代官山であったのです。
さあ念願の地に立ったふたりは「ついに、洒落者の仲間入りを果たした。」と胸をときめかせました。
さっそく意気揚々と街を散策。ふんだんに「ダサみ」をふりまき「ダサみ」の苗を植えながら、練り歩いていきます。
そして日が高くなると「そろそろヒルメシにしよう」という運びに。ふたりはオシャレカフェの殿堂「モンスーンカフェ代官山」へと向かったのです。
高揚感に包まれながら入店すると、それぞれにビールと「鶏手羽先のスパイシー揚げ」を注文しました。
サンサンと陽の差す大通りを眺めながら、つめたい昼ビールを流し込みます。そして悦に浸り、鶏をつまみます。
『こ、これが、洒落メシ。ウマい。さすがは代官山だ。』ふたりは感動しました。
その時、ふと連れが言います。
「この唐辛子は食用なのではござらんか。」
鶏の周りに配置された真っ赤な唐辛子たち。
「そうに決まっておろう。代官山ではみんな食べると聞くぞ。」
と、知ったかぶる僕。
これが悲劇の始まり。
ふたりはしたり顔でかじりつき、後悔することになったのです。
それは辛すぎました。火を食ったかと思うほどの辛み。もはや痛い。これは怪我でござる。パプリカのように赤く染まる顔面、滝のように吹き出す汗。
鐘を鳴らせぇ!退却ッ!退却じゃあー!
すぐさま逃げ帰るように電車に飛び乗ったのです。
そして、ふたりは思いました。
『代官山、恐るべし。』
と。
若かりし日の、いい思い出です。
はい、与太話もほどほどに。
辛みといえば、トップの写真の「静岡本わさび」。
「シズカオカモトわさび」と読むと何だかオシャレですよね。
新進気鋭のデザイナーズブランド
『シズカオカモト』
あ、気のせいですね。
そういえば、今朝はぎんなんが落ちていました。
もう夏は大サビを歌い上げ、すでにアウトロというところでしょうかね。
それでは、また明日。