「エレキテル 」と「ウナギ」
『土用の丑の日うなぎの日
食すれば夏負けすることなし』
江戸の奇才「平賀源内」が考案したこの名文句は、真夏の売上不振にあえぐ全国の鰻屋さんを救った。
そして同時に全国のうなぎ達が絶叫した。
「あのエレキテル男!!何してくれとんじゃー!!」
これを契機にうなぎ達は(本人達の意に反して)、夏の人気食のスターダムを一気に駆け登っていく。当時のインタビューで彼らはこう語っている。
『売れたいなんて思ったこと一度も無いですね。ええ。このままでは体力も持ちませんし、早くパンピー(一般の魚)に戻りたいです。つーか、このままだとマジ絶滅しますから。笑』
しかし、そんなうなぎの希望はむなしくも霧散することに。そう、世間が彼らを放っておかなかったのです。
何しろ湯気たちのぼるぴかぴか白米の上、芳醇なタレをまとって横たわるビジュアルはあまりにセンセーショナルであり、究極の「香ばしさ」と「やはらかさ」と「したたる旨み」を白米でかっ込むというスタイルは圧倒的な夢とヨロコビを人々に与えたのです。
誰も彼らを忘れる事なんかできるわけがなかったのです。
その後、滋養強壮の恩恵も手伝って「土用のうなぎ」ムーヴメントは列島で加熱の一途を辿り、いまや国民的行事となりました。しかし、その一方でインタビュー時の絶滅ネタは現実のものとなろうとしています。
彼らが置かれている厳しい境遇に対して、僕らに出来ることは小さいかもしれない。けれども、彼らが少しでも長くアーティスト活動を続けていけるよう、わずかでも尽力していくことが「いちファン」としての正しいあり方であるように思うのです。
押しも押されぬ大スターの座に君臨しつづける顔の裏側で「うなぎ」は何を思っているのでしょうか。
さて、与太話もほどほどに。
写真は福岡が誇るうなぎの銘店『吉塚うなぎ屋』のものです。こちらのお店は白飯とうなぎがセパレートで提供される珍しいパターンのお重です。
バキっと焼いた皮目が香ばしい。鼻腔をくすぐる甘めのタレ。銀色に輝く白米が眩しい。うまい。うますぎる。思い出すだけで米が進み、酒が飲める逸品です。
それでは、また明日。