料理の名前の「風」について思うこと
料理名のうしろにつく「風」。私はこれにしばしば困惑させられる。もちろん意味合いとしては理解ができる。フランス語で言えば「ア・ラ」英語で言えば「スタイル」になるだろう。その料理にまつわる「土地」や「人物」を示しているのだ。
土地で言えば、「鯖のムニエル 〜プロヴァンス風〜」や「牛もつ煮込み 〜フィレンツェ風〜」「田舎風」みたいなことだろうし、人物で言えば「ウエリントン風」や「魯山人風」、「漁師風」などが有名。
しかし、これはどうだろう。
『生ウニの貴婦人風』
貴婦人である。
ただでさえイメージするのが難しい「貴婦人」に、「生ウニ」が付いている。いったい、どういうことなんだ。意味は不明だが、ただごとではないことだけは伝わってくる。
海に生息する「ウニ」の中でも、特に尊く、庶民とは一線を画したラグジュアリーな雰囲気を醸し出す「ウニ」があるとでも言うのだろうか。
一般的な「ウニ」が黒や茶色の「地味系」の見た目であるからして、貴婦人ウニは「極彩色」でなければ庶民は納得しないだろう。あるいは「ヒョウ柄」や、「発光」していた可能性があるかもしれない。
または、貴婦人と生ウニとの関係を表している可能性もある。中世ヨーロッパでは生ウニを剥くことが「上流貴族の嗜み」であり、貴婦人たちは争うようにウニを買い求め、朝から晩まで剥きまくっていた。その情景から「皿に山と盛られたウニ」を貴婦人風と呼ぶようになった。
どちらもきっと、違うのだろう。
ほかには、こんなものもある。
「舌ビラメの ボヌ・ファム風」
ボヌ・ファム(bonne femme)は良妻の意味であるから、やっぱり良妻が競い合うように作っていたに違いない。大戸屋の「チキンかあさん煮定食」みたいなものだろうか。
ただ「チキンかあさん煮」でさえ、実は曖昧なイメージを内包している。というのも「ニワトリ似のお母さんが得意とする煮物」とも、「ニワトリのお母さんを煮た料理」とも、意味を受け取れるからだ。
自分でやっておいてなんだが、料理の名前については重箱の隅を突くようにあげつらってはいけない。おおらかな気持ちで接するべきなのだと思う。それが、朝ごはんに「スペイン風オムレツ」を作りながら考え、たどり着いた結論である。
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