満
毎日押し殺した声を発散するかのように、隙間があれば書店に立ち寄って本を買ってしまう。毎日大量に本を買っては満足するを繰り返す。それでも私の心は満たされない。これは病気ですか?診断してください。
本を求めてやってくる人は、みんなどこか難しい顔をしていて、少し寂しそうで、本が並ぶ棚を見ては少し安堵しているように見えるのは私だけ?
今日はこの子を連れて帰ると決めたあなたの手の中に収まっているソレが何で、どんな内容かが気になって横目で見ちゃったりして、すごく迷惑な客。そんな迷惑な客に自分の内を見透かされないようにみんな決まって表紙を自分側にして抱えている。
今日の購入本
川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」
美しい文章を読みたくなったときは川上未映子と決めています。好きではない太田光が帯を書いていたから迷ったけれど、とにかく美しい文章を読みたかったので決めました。
朝井リョウ「どうしても生きてる」
銀縁の眼鏡をかけた覇気のない店員がしおしおと棚を整理していました。その覇気のない男の手の甲には不釣り合いな力強い文字で「豚肉」と書かれていました。彼が気になりました。ネームプレートには鈴木というなんてことない苗字と共に、《おすすめ本:朝井リョウ「どうしても生きてる」》と書いてありました。
小川洋子「ホテル・アイリス」
句読点や段落なんてない読者への気遣いゼロの読書感想文を定期的に送りつけてくる男のせいです。彼の「気持ち悪い物語好きやろ?」という書き出しのせいです。
又吉直樹「夜を乗り越える」
小説ではなく新書だというところに惹かれたのは言わずもがな、生徒に「なんで先生ってそんなに本読むん?本って何で読まないとあかんの?」という純粋かつ難解な問いにうまく答えられなかったからだと思う。単純に「おもしろいから」だと答えればよかったなとはしがきを立ち読みして思った次第。
橋本武「〈銀の匙〉の国語授業」
手抜きの授業や面白くない授業をしてしまって猛省する日々、尊敬する橋本先生の本にもう一度立ち返りたくなった。「すぐに役に立つものはすぐに役立たなくなる」という橋本先生の言葉に出会って、すぐに答えを求めようとする子どもに思考の過程の大切さを伝えたいと思っていたはずなのに。授業以外の仕事に忙殺されすぎている。
帰り道、カネコアヤノを聴きながら3時間迷いに迷って選び抜いた本たちが茶色の紙袋の中で行儀よく並んでいる姿を眺めていると、とっても安心する。
あら、こんばんは。句読点段落無し男から「心の限界きてるやろ?」「明日は絵でも観に行くか。」というLINEがきたようなので、多分明日は絵画を観に行きます。
そうして今夜もまだ開かれることもなくただ積み上げられた本に囲まれて闇に飲み込まれていく。