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まともなトップにはついていきたい。

オランダ系の会社に勤めていた時のことです。
年1回海外で開催されるグローバル会議で各国の工場と
営業部隊が、次年度の売り上げ(どこの工場からどの製品を
どれだけ買うか)について交渉をする場がありました。

フランスのシャトル工場との交渉になった時に、私はその工場長に
サンプル品の件でさんざん文句を言っていました。
サンプル品は、基本的にチャンピオン品質でなければお客様は
検討してくれませんし、いい結果は出ません。
それが話にならないほどデタラメな品質のものだったのです。

私は、
「サンプル品に不具合が多すぎる、パッケージがお粗末すぎる、
サンプル品が個装もされず裸で、しかも他の部品と接触するように
入っている」などなど、つたない英語で話しました。

そうしたら、まだ私が話している途中なのに、私の話しをさえぎる
ように工場長のD氏が激しく反論に出ました。
が、その瞬間に、トップが凄い勢いで工場長にこう言いました。

「いまは佐東が話しているんだ。お前は黙って聞け!」と
厳しく言い放ちました。


オランダ人トップがフランス人に命令したという構図です。
このフランス人は、なにくそっと思ったに違いありません。
しかし歴史的背景や国の規模は別にして、ここはビジネスの場です。
従わざるを得ません。

私は文句だけでなく改善点も話していたのです。
話しを遮られる理由はありません。
相手の話しをきちんと聞けというトップの態度には、非常に好感が
持てました。

私の話が終わったらトップが「日本に専任担当をつけるから、一緒に
考えて売れるようにしてくれないか?」と提案してきました。
私は文句はありませんので「イエッサー、アイ アグリー」と反応し、
その場をしめました。

工場長はバツの悪そうな顔をしていましたが、トップには従わざるを
得ません。それより何より、日本と一緒のどうやって売ろうか考えろ
と言っているのですから、今までから見たら一歩も二歩も前進です。

それからは、私はこのトップとなら尊敬して付き合えるし、この人には
ついて行こうと心に決めました。

このトップには変わったクセがありました。
ビジネス上の提案をしても、ことごとく却下するのです。
他の人に聞きましたら、なんどか提案してもほとんで通ることはないと。
普通は多くても3度ほど提案して、却下されたらたいていは諦めて
しまいます。

ある時、部下を参画させてどうしても認めてもらいたい、プロジェクトが
ありました。
私は3度そのトップにアタックし、でもことごとく却下されたので諦めそうになりましたが、もう一回(4回目)アタックしたらすんなり通りました。
その時は「あれっ?」という感じでした。
でも提案が通ったので部下たちと喜びました。

しばらくして、ランチ時にたまたまそのトップと隣り合わせになりました。
いい機会だったので、あの時の件を聞きました。
私:「どうして、3回も提案して、最後にもう一回言った時に却下しなかったんですか?」
トップ:「オレは、3回まではどんないい提案でも却下することにしている。
3回却下されて諦めるような提案は、たいしたことはないと思っている」と。

私:「じゃあなんで私のはOKしたのですか?」と聞きましたら。
トップ:「お前は諦めずに4回提案してきたから却下しなかったんだ」と。

なんだそれならそうと、最初からそう言ってくれよ。ですよね。
でもそれを言ったらお終いですよね。

そんなこともあり、トップとはいろいろぶつかることはあっても、
ビジネスがネガティブになることはありませんでした。
「まともなトップなら、ついていきたい」ですよね。


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