見出し画像

「このLPは手放さない」—おばあちゃんの意地

その日、おばあちゃんが腰を曲げながら、重そうな段ボールを抱えて古本屋にやってきた。小さな体で、なんとか運んできた本をカウンターに置くと、少し息を切らしていた。その姿に、店主は自然と胸が痛む思いだった。

「重かったでしょう、ありがとうございます」と声をかけると、おばあちゃんはにこりと笑って、「いえいえ、大丈夫です」と答えた。段ボールの中には、東海林さんの作品が並んでいた。だが、心の中で店主は正直に思った。「東海林さんの本は、今はなかなか売れない。だから買取は難しいかもしれない…」と。

それでも、ここまで頑張って運んできてくれたおばあちゃんの気持ちを無下にはできなかった。店主は一息ついて「少しだけですが、これでどうでしょうか」と、控えめな金額を提示した。おばあちゃんは「あら、ありがとうね」とまた笑ってくれた。

ふと、話の流れで、おばあちゃんが家にあるもう一つの大切な宝物について語り始めた。「私、橋幸夫のLPは死ぬまで売らないんだよ。あれは本当に大事なものだからね。」

その一言に、店主は心の奥深くで何かが響いた。LP一枚に詰まった思い出、人生の瞬間がきっとおばあちゃんの心に永遠に刻まれているのだろう。その重みを思うと、買取の金額がいかに高くとも人には処分出来ない品もある。

「そういうところなんだな、人の心って」と、店長は静かに思った。商売はシビアだが、物やお金では測れない大切なものがある。おばあちゃんの手にある本も、LPも、ただのモノではなく、長い人生の中で積み重ねられた記憶や愛情の象徴だった。

改めてそう思えた事は、店主にとって大切な一瞬となった。商売を超えて、心を交わしたような感覚になる瞬間が、こんなふうに訪れる。

❤のイイネが原動力なのでオシテネ><
ブックマートホームページ

#中野区 #買取 #古本屋#出張買取
#買取  

いいなと思ったら応援しよう!

都立家政のブックマート
中野区での飲食に使わせ頂き、紹介して近所を盛り上げたいデス。ご支援が心の支えでありそれ自体もネタになるようしていきます。