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商店街の片隅で、ヘビーメタルと老人の物語が交差する時

中野区の最果て、都立家政。昼食に困る街、ここでお昼を食べるのはなかなか難しい。オフィス街でもないから、昼食需要メインの飲食店はほとんどない。毎日、店主は隣のセブンイレブンに駆け込む。たまに松屋も顔を出すけれど、持ち帰りができるところが限られているから、毎日同じような食事の繰り返しだ。そんなある日、隣にコストコの商品を取り扱うスーパーがオープンした。ふと思った。セブンイレブンのシュークリームを買うよりも、隣のチーズケーキを買ったほうが、お得かもしれない。何より、違う味を食べられることが嬉しい。昼食ではなく、夕方にちょっと1つまみ。無人レジで会計を済ませると、入口にいたおじいちゃんが「なんだ。これは無人レジか…」と言いながら、私をちらりと見て帰ろうとする。つい、口が勝手に「全然簡単ですよ。僕も最初は苦手だったんですけど」と言ってしまった。するとおじいさんは、「そうか、じゃあ見てこうかなぁ」と、店内に入ってきた。そのまま隣の古本屋に戻り、作業に没頭する店主。ふと外に出ると、さっきのおじいさんが荷物を持って歩いている。「全然、簡単にできたよー」と、報告してくれた。その後、隣のおじいさんBが犬を肩に抱えて登場。「この古本屋って、イングヴェイの店だよね。僕も好きなんだ」と、まさかのギタートーク。

犬を肩に背負ったおじいさんが、突然イングヴェイの話をしてきた。脳がパニックになった店主は、言葉が出ず、ただ「はい…」と答えることしかできなかった。「ギターも弾いてるんだよ、今度また来日するよね」と、さらに熱く語るおじいさん。うひょー、にわかじゃない、ガチファンだ!と思いつつ、店主は全く処理できないまま、ただ話を聞いている。そのとき、おばさんがやってきて、「すいません、あのー、レジに2000円残ってますよ。」と声をかけてきた。すると、おじいさんが照れ笑いしながら、「簡単にできたなんて言ってできてなかったわ、ハハハ」と、素直に認めて笑う。中野区の片隅、各駅停車の駅近くに広がる緩やかな商店街。そんな街並みに、店主は何か心地よさを感じているのかもしれない。ここには、変わりゆく時間の中でチェーン店がありながらも人々が交差する瞬間が息づいている。
そしてふと思うのは、イングヴェイを最初に見ていた人たち、あの『Rising Force』直撃世代が、もう白髪のおじいさんになっているということ。

信じられない。でも、そうだ、私も同じように年をとったんだ。あぁ、認めたくないけど、少なくともおじさんにはなった。ヘビーメタルとオジ。これからは、おじいさんがヘドバンする日が増えていくのであろう。魂はNever Dieだ。

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