XM Anomaly stats talk: Epiphany Dawn Phase1; Los Angels
12/10の横浜でのXMアノマリーに向けてちょっとだけ気分を盛り上げるため、なんかアノマリーについての記事を上げる企画の2日目ということで先日同人誌で書いた記事の転載です。(明日は横浜の展望の話をやる予定)
米西海岸でのアノマリー
2022年11月12日にアメリカはカリフォルニア州ロサンゼルスにて、XMアノマリー(*1) Epiphany DawnのPhase1が開催された。
過去の履歴を見ると、アメリカ西海岸でのアノマリーはおおむねENLが大差で勝利するものである。それもただ勝敗がつくというようなものではない。ほぼ確実に話にならないぐらいの大差がつく。圧倒的なワンサイドゲームとなる。
日本におけるENLの大型アノマリーでの連戦連勝など比べ物にならないレベルで、良くても8:2ぐらいのスコア比となり、しばしば9:1とかのスコアが出たりもする。ということで勝敗の行方はほぼ見えてしまっているのであるが、それとゲーム展開が面白くないかというのはまた少々違う話であり、またその翌月には日本は横浜での開催(*2)も控えているので観戦はしておくか、ということで日本時間ではド早朝になるが遠隔で戦いの行方を眺めることにした。
(*1)位置情報ゲームIngressにおける、大規模戦闘イベントの呼称
(*2)12/10に横浜ベイエリアにて開催される。
ルール
形式は前シリーズSuperpositionでの単一開催全部入りアノマリーであったDay1ミュンヘンとほぼ同じ、で説明を済ませたいが流石に乱暴なので概略は説明しよう。
正式なルールは https://ingress.com/news/epiphany-dawn-rules/ を参照のこと。
本稿では(後段の理解のために)必要な範囲に情報を絞って説明をする。
スコア上は以下の3競技が行われる:
(世界各所)コネクテッドセル戦[100]
(主開催地)運営BB[170]
(主開催地)シャード戦[130]
ただし[]内はそれぞれの配点となる
このうちコネクテッドセル戦は主開催地での本戦に先立つもので、(LA開催ではないので)説明を省くがその結果は50-50に終わっていた。
運営BB戦
おおよそ25分に1回の間隔で、運営の手によりエリア内の複数ポータルにBB(*3)が設置され、その勝敗を争う。
使用されるのはレアBB(*4)と呼ばれる種類のもので、設置後13分/16分/19分後の3回計測時点(CP=Check Point)での所属陣営により2/3/4点のスコアがカウントされる(*5)。
また設定される対象ポータルの中にはボラタイルと呼ばれる高得点対象も含まれ、これからは通常の3倍の得点が得られる。
約4時間の開催期間中にwave1-9の都合9回のBB設定が行われ、全9回の素点合計のうち、最大の素点がその陣営のスコアとして採用される。
(*3)バトルビーコン。設置されたポータルでその後20分程度にわたる戦闘結果が記録・表示されるようになるゲーム内アイテムのこと。
(*4)他にベリーレアBBというものがあり、計測タイミングや計測回数、各計測回の配点が異なる。
(*5)実際に発生した戦闘の激しさによって決定される「バトルカテゴリ値」による倍率ルールは今回は存在しない。
シャード戦
シャード戦は、全部で65個発生するシャード(破片)を、陣営ごとに設定されたゴール(ターゲットポータル)に移送するという球技を模したゲームである。
シャードは所定のレベル以上のポータル同士のリンクに沿って、基本10分間隔のターン毎に移動する。ただし、過去25分以内(*6)に居たことのある場所には戻らない。また25分間移動しなかったシャードが次の移動機会(*7)にも移動しなかった場合はランダムジャンプが発生する。
Epiphany Dawnでのシャード戦はBB戦に30分ほど遅れて開幕する。
シャードはゲーム開始時より31分、51分、91分、131分、151分の時点で各13個ずつ発生(全65個)。ゴールは30分、71分、111分の各時点で陣営ごとにそれぞれ4個ずつ発生する(30分後からおおよそ20分おきにシャード関連のイベントが起きる、ということになる)。
ゴールに到達したシャードは以後移動しなくなる。同一ゴールへの到達は6個目までは1個2点だが、7個目以降は0点となる(*8)。
シャードゴールにより得られた得点は、そのまま陣営のアノマリースコアとなる(*9)。
(*6)実質的には2ターンだが、追加ターン(後述)が絡むため例外となるケースがある。
(*7)同様に実質的には「3ターン続けて移動しなかった場合」だが追加ターンが絡むと例外となる。
(*8)前回ルールではゲーム前半では1個1点、ゲーム後半(開始+90分以降)では1個2点というルールだった。
(*9)取りこぼしたままゲームが終わった場合、そのぶんの得点はそのまま失われる。
事前情報と追加シャードターン
本戦前に実施される「GORUCK Stealth Ops(*10)」「GORUCK Urban Ops(*11)」内での結果に応じて、各陣営にはいくつかの事前情報(BB戦ボラタイル発生情報、シャード戦シャード/ターゲット出現情報)が提供される。また、Stealth Opsの最終勝利陣営にはシャード戦中に1回の追加ジャンプの発生を(ゲーム本戦開始前に)指定することができる権利が与えられる。
(*10)アメリカのミリタリー系アパレルブランドGORUCK主催による、重い荷物を背負ってグリーンベレー式の軍事教練を模した行軍・訓練を行うという肉体系イベント、のうち夜間に行われる長時間でタフな方。GORUCKは元々その種のイベントを開催していたが、Ingressとの合体イベントをも開催するようになって現在に至る。
(*11)同様に、昼間に行われる比較的短時間でお手軽な方。
事前予測
結論:ENLが勝つ。
場所が悪いのでそれ以外の予測が成り立たない、というのが正直なところである。
Ingress自体のプレイ人口は以前から緩やかに減少していたし、長らくのコロナ禍が影響を及ぼして参戦人数が著しく偏って…というような可能性も考えられなくはない。ないが、普通なら減少は両陣営にほぼ均等に影響する。仮に傾くとしても勝っている側に有利に傾く可能性の方が高いだろう。
なんにせよ、大勢に影響はないだろう。これまでの西海岸アノマリーの流れであれば、ENLが圧勝する。最大にRESが善戦したとして、BB戦が110:60、シャード戦が100:30といったところが関の山か(*12)。
そして実際はそれよりはENLに傾いて130:40と110:20ぐらいに落ち着くのでは、という予想をしていた。
(*12)正直に言うとこれはそのまま横浜開催の予想スコアでもある=日本のRESはまあ善戦はする、という程度の期待はある(BBスコアについては互角近くになる可能性もあると思っている)。だがLAというか米西海岸にはそれもない。
観戦
前哨戦
本戦は現地時間13:00、日本時間翌6:00からだったが、前哨戦はそのおよそ2時間前から開始された(以後時刻は原則として現地時間表記)。
11:10頃に合わせてENLがアノマリーゾーンないポータルをほぼ一斉に全面免疫(*13)。ゾーン内は一面の青=RES色に。シールド等を入れられないよう防御効果のない弱いmodを原則とした処置となっており、1時間後の破壊→再構築→再反転を狙ったENL=緑による先制の仕掛けであろう。青いポータルをRESは攻撃できないので、ENLが手出しをしなければこのままの状態が1時間は維持できる、というのを狙った措置であろう(*14)。
実際1時間は盤面はそのまま放置され、ENLの狙い通りに12:10頃に破壊→構築→再反転で再び盤面は青一色に。ただし今度は構築のところで硬いシールド(*15)が投入されており、1時間後のwave1の計測開始直前に再反転からそのまま緑で防衛するためのシフトである。
なにしろ盤面が青一色なので、ここで青はゾーン外を交えてリンク(*16)を引いたりもした。が、全ては1時間後の反転可能化で無に帰す前提である。この時点ではあまり大きな動きはないまま、開幕が近づいてきた。
(*13)あるポータルに反転アイテムJarvis Virus(青→緑)もしくはADA Refactor(緑→青)を使うと、その後60分間は反転アイテムの再使用が拒否される(使用しても効果を発揮しない)状態になる。その際にメッセージにimmuned(免疫済)という語が含まれることから、このルールを利用して反転禁止時間や再反転可能時刻を調整する行為が(プレイヤー用語で)「免疫」と呼ばれている。
(*14)厳密にはベリーレアバトルビーコン(VRBB)を使えばその効果により3分おきに(免疫を無視して)何度か反転されるが有料課金アイテムなので全面に対して実施するとは考えにくい
(*15)ポータル強化アイテムであるmodのうち、防御力向上効果のあるもの。
(*16)ポータル間を結ぶ「リンク」は自陣営色のポータル同士しか結べない。
開戦〜前半戦
13:00のBB点灯と前後して起こった目立った動きはゾーンやや北よりのポータルSecret Elk。ここを基点に青が全域からややエリア外に及ぶノヴァ(*17)を展開した。ENLも(反転可能時刻となってから)対抗するようにゾーン内で小規模なノヴァを展開し、RESの大型ノヴァの支配領域拡大の試みを(主に南部の)ENLの小型ノヴァ複数個が抵抗する、という形が発生した。
ただBB発生ポータルは総じてENLが支配しており、開幕のスコアとしてはENL優勢の状況。
気になるのはwave1終了後に来るシャード開幕時にどこがゴール/シャード発生地点になるか、である。ただ、おそらくSecret ElkがRESの(事前情報が得られた)ゴールであるのは間違いなかろう。
wave1は見た目8:2ぐらいのスコア状況で終了、wave2が点灯しその5分後にシャード戦ゴールが点灯。案の定Secret ElkはRESゴール。ただしその1分後に点灯したシャードは(ポータル数分布に従うように)ゾーン内南部に偏っていた。面では全域の半分以上を支配しているようにも見える青大ノヴァであるが、南部にはENLの小ノヴァが食い込むように支配地域している。また、青ゴールは維持できていてもシャードポータルの確保は維持できず、せっかくのゴールノヴァは全くゴールを得られない展開。対するENLもシャードは主に(対抗上作った)小ノヴァに吸い込まれてしまってゴールへは向かいにくい形であったが、南東部Union Station内のENLゴールからのノヴァの展開に成功し、ここに(得点化上限の6個を超える)7個のゴールに成功してシャード戦でもENL優位の展開となる。
結局Secret Elkは免疫切れのタイミング前後で破壊。その隙にENLがノヴァを展開して支配領域を削られることで開幕直後は全域を支配するかに見えた勢いはすっかり失われ、北東部に小さな領域をなんとか維持する小ノヴァに格下げとなってしまった。
(*17)1個のポータルから周辺の複数のポータルに対してリンクが放射状に伸びた状態を指すプレイヤー用語。Starburstとも呼ばれる。
中盤、実質的終戦、NIAのミス
といったあたりでwave1とwave2のスコア発表があり、wave1がE 531-106 R、wave2がE 457-160 R。
最大スコア採用によりこの時点ではE 531-160 Rで75:25ぐらいのスコア比ということになる。最大スコア採用の効果でRESは盤面支配率ほどは負けていない、が既に複数のENLノヴァが広がる盤面となっており、シャード戦の趨勢はほぼ見えつつある流れ。中盤にさしかかり実質的には勝敗が決まったという状況に達しつつあったが、ここで運営のNianticがポカをやらかした。
14:11に2度目のゴール発生があったのだが、ここで発生したゴールがENL4つに対してRES2つ。RESの方が2つ少ない。反映遅れ等による一時的なものかとも思われたが、待てども待てども状況は変わらず、結局RESゴールが2つ少ない状況は(3度目のゴール発生後も続いて)そのままゲーム終了まで変わらなかった。既に大差がついていて大勢に影響のない状態だったのがまだ幸いで、これが互角の激戦が続く状況であったなら終了後に大きく揉めたことであろう。
さて盤上ログから推測される人数比は開幕時は1.5倍ほどENLが多かったのだが、中盤に至ると互角よりややRESが少ない、という程度にまでなっていた。
ただRESはとにかく動きが悪い。事前情報を得られたことでシャード戦中心の戦略を選んでしまった?という言い訳では済まない程度に何もできていない。wave3でRESはE 374-236 RとBBスコアを更新(結局これがRESの最終採用スコア)しはしたが、なにがしかをやれたのはここまでだった。
いくらなんでももう少し戦いようがあるのではないか、という感をよそにゲームの流れはそのまま続き、以後は大半のシャードをENLに確保され、シャード戦でやることがほぼなくなったENLがwave7でBBスコアを更新してそのまま終戦となった。
結果
前哨戦を入れれば6時間にも及ぶ長い戦いだったが、決着は前3時間ほどでついていた、というのが正直な感想である。
最終的なスコアはBBがE 565-236 Rでポイント換算するとE 120:50 R。
シャード戦はE 98-18 RでENLは3ゴールが上限以上に達したが、RESは1つも上限6個に達せず終いとなった(主に中盤以降に4個がゴールしたSeclet Elkが最高)。
アメリカ西海岸なのでENLがぶっちぎりの大差で勝つ、という図式は結局崩れず、戦前の予想がほぼそのまま結果となった戦いだった。
戦評
RESに不運があるとすれば、事前情報で掴んだゴールがゾーン全体では北部のものだったことが最大であろうか。シャード第1ターンからしばらくの盤面の支配ぶりはかなりのものだったので、ここで良いところにシャードが湧けば序盤はシャードでリードできる可能性もあったと思う。
しかし残念ながらシャードは南部に偏っており、序盤の見事な仕掛けは得点につながらなかった。
あとはゴール発生数ミスがなければというところもあるのだが、盤上は2回目のゴール出現頃にはほぼENLに制圧されてしまっていたので、正直ゴールがいくつ湧いたところで状況は変わらなかっただろう、と思う。
とにかくこのRESは弱い、というのが遠隔のマップ越しでも見て取れるようなゲーム運びで、戦前から負けを意識し過ぎて「確実に点を取れそうな方法」にすがった結果、(普通にがむしゃらにやっていれば)取れていたはずの点をも失っていたというような、敗者が奇策に出て更に負けるという流れを地で行ってしまっていたのだろう、という感想である。
Next Game
Phase1は大差でENLが勝利したが、Epiphany Dawnシリーズはまだ続いている。11/19からは10日間に渡ってグローバル戦となるPhase2が行われ、これはE 99-101 RでRESがわずかに勝利を収めた。
そして12/10には横浜でPhase3が行われる。ほぼLAと同じルールでのゲームとなるが、ゲームスケジュールが細かく調整され、より忙しく息吐く暇のないゲームとなった。
今年のXMアノマリーでは小規模多発開催が試みられていたことで、開催地によっては日本のRESでも優勢にゲームを進められている地域があった(特に北海道あたりが顕著であった)。それらのシリーズとEpiphany Dawnとでは、根幹となるルールはあまり大きくは変わっておらず、局所的にはRESにもノウハウが蓄積されていると思われる。
開催地が1箇所で、それも日本。しかも関東ということでENL優勢という見立ては不動なのだが、これまでの日本開催よりは接戦となる見込みは大いにあるし、RESの何らかの策がハマれば下馬評を覆す余地もありそうに思う(ただしその策を立てる余地があまり多くはないルールでもある)。