Ingressにおける辺境と名誉 / 人がゲームに見出す価値について
元記事投稿日:2016/11/10
g+よりの移行記事です。どこかに掲示し続けておくことが大事な部類のやつなので、他の記事より早くnote版を投稿しておきたいと思います。
※リンク先はwebarchiveのリンクに差し替えてあります
URLを示しておいてなんですが、直接の説明はせずに私がしたい話をします。広域/辺境におけるIngressというのは、限られた何人かの移動の質の積み重ねで趨勢が定まっていくゲームだと思います。移動の質、とふんわりしたことを言いましたが、それは実際にはプレイヤーが時間だかお金だか体力だかを費すことで得られるものです。
Ingressは(たかが)ゲームに過ぎません。賞金などがあって対価が得られるわけでもありません。まったくもって益体のない遊びです。しかし 馬鹿げているからこそ人を魅了する、ゲームというのはえてしてそういう存在になります。
ところで費されるものとして「時間とお金と体力」を挙げましたが、それ以外にIngress広域戦の趨勢に大きく関わる大事な要素があります。それは「住んでいる場所」です。
渦中の人、hoyaji6さんは(これまでに出ている情報を信じるなら)礼文島在住のAGでした。
礼文島は北海道の北の果ての稚内から更に船で渡ったところにある島です。空港は長期休止中ですが船は日に数便あります。しかしただでさえ広い北海道の北の果て、行けと言われてすぐに行ける人の数は限られます。
そういう場所に住んでいれば、あとは形が整えられれば大きなアドバンテージになります。船の最終便が出て以降なら、 最低でも翌朝まで片端の破壊が不可能なリンクが作り放題という条件は、広域戦をとても有利にします。 選ばれた辺境に住むAGの存在は広域戦の趨勢を大きく変えうるのです。
しかし問題は辺境が辺境すぎることです。リンクが張れればそりゃ強いですが、そのリンク先の鍵の調達が難しいのです。元より人の往来が少ないところに鍵を供給するには誰かが時間とお金とを使う必要が生じます。
さてそこでhoyaji6さんの問題です。既にアカウントごと消されてしまったhoyaji6さんの告白文(内容は冒頭第1のURLの内容とほぼ一緒です)により、彼が少なくとも、
- 緑を含む複数アカウントを実質運用できる状況を作ろうとしていた
- 位置偽装の運用を試みようとしていた
ということが明らかになっています。
同じことを都会の真ん中のエージェントがやったのなら(よくないけど)別にどうでもいいです。ですがこれを辺境AGが行ったことが問題をややこしくします。Ingressの辺境における最強の弾は鍵です。鍵の保持可能量はそのまま辺境AGの強さです。都会で倉庫アカウントに余ったバースター持たせているのとはわけが違います。
しかもその(家族AGのものと主張する)緑アカウントと青AGとで鍵交換を行った、という話まであります。鍵交換の相手はそれを知っていて、なお鍵を交換したというのでしょうか。それがさしたる騒ぎにならずに容認されていたということから、様々な想像が膨らみます。
位置偽装は本当に試みただけだったのか。実は別の機会には成功していたのではないか、交換に際して位置指定はしたが「出向く」必要がないようなことをしていたのではないか、ならばそもそも遠方の鍵を集めるのに同じ方法が使えたのではないか、そうして得た鍵が鍵交換の流通に乗ってしまっていたのではないか。そのように、疑惑はどこまでも連鎖します。
そんなのただの妄想に過ぎません。過ぎませんが、hoyaji6さんの告白にも、それをほぼなぞる形で発表されたHokkaido NorthBLUE(以下NB)による「調査報告」にも、事実と照らし合わせたときに明らかな矛盾が含まれていることが話をややこしくします(冒頭第2のURLをご覧ください)。
自らの罪を告白するはずの文章に嘘を書く人間が、どこまで嘘を書いているかは正直わかりません。ただ、より大きな嘘を隠すために嘘を書いたのだと考えるのはそう不自然なことではないでしょう。そして、その嘘まみれの文章を、(彼が属していたコミュニティである)NBがほぼそのまま追認するということはどういうことを意味するでしょう。
ここに第二の、より大きな問題が存在します。
疑惑の鎖を断ち切らないことには、この問題は解決しません。しかしNBはhoyaji6さんの文章をそのまま追認してしまいました。彼の言っていることが真実であると、そうコミュニティが保証してまったということです。そうすることで、NBはhoyaji6さんに端を発した疑惑の鎖を断ち切るどころか、逆にコミュニティに結びつけてしまいました。
複数アカウント運用、敵陣営アカウントでのスパイ行為、位置偽装等。それらは本当に個人だけの行為だったのでしょうか。不審な行為が周囲にあり、それらの行為をNBは黙認していたのではないでしょうか。あるいは、hoyaji6さんの嘘まみれに見える告白を是認することで、より大きな都合の悪い真実を隠蔽している可能性もあるかもしれません。組織ぐるみでそのような行為を行っていた可能性すら疑われます。ともすれば、違反行為上等でなんとしてでもこの地域では緑に勝つ組織を目指そうとしていたりするかもしれません。
実に馬鹿げた妄想ですが、そういう疑念を呼び込んでしまう鎖は、もうコミュニティに接続されてしまったのです。
Ingressというのは、馬鹿な大人が大人気なく様々なものを浪費して益体のないことに血道を上げることで、そこに名誉が見出されていくというゲームです。それは互いの馬鹿さ加減を競うゲームであり、様々なものが費やされるくせに名誉ぐらいしか残らない実にどうしようもないゲームです。
ですが人類というのは益体のなさのためにゲームをする生き物です。ここでいう「ゲーム」は「文化」という言葉に置き換えてもいいかもしれません。益体がないことに価値を見出し過程や挑戦を楽しく思うというのは、実に知性的な運動であると思います。
個人の実績を伸ばすための不正なら(よくはないけど)やってるそいつが馬鹿なんだ、で済ませてもいい事柄だと思います。しかしどうしても周辺地域と関わり、時には遠方のプレイヤーとも関わることになる広域戦では、それでは話が済みません。
Ingressがそういう馬鹿げたものであるからこそ、アンフェアな、名誉に反する行動は憎むべき対象となります。馬鹿げたゲームであるからこそ、そこに対し敢えて様々なものを投じるプレイヤーたちの行為は賞賛されるのです。それは、Ingressでは「冒険」という言葉で表現されていると思います。Ingressは人を冒険に導き、人と人とを繋ぐゲームです。不正者をひたすら殴りつけるのが名誉ある行為かと言えば違うでしょう。
しかし、冒険を積み重ねなければ得られないはずのものを不当に手に入れようとしたこと、それを庇い隠そうとすること、あるいは糾弾されてなおそれを継続しようとすることはIngressというゲームの価値を傷つけるものです。少なくとも不正者に本当に非を認めさせないことには、またアンフェアな行為が繰り返されることになります。不正者を庇うように見せて大きな嘘を覆い隠そうとするなら、きっと彼らはより大きな嘘を繰り返します。
馬鹿げたゲームが正当であることに拘るのも、そのゲームで不正を働くのも、どちらも馬鹿な行為です。しかし同じ馬鹿であるのなら、まったく共感できない敵をあらゆる手段で攻め立てる不正なゲームをするよりも、 互いに共感でき信用できる好敵手と正当かつ真剣にゲームをするほうが、 人生の歓びはずっと高まると思います。
そしてIngressというのは、たぶん後者のような遊びのために築かれた世界なのです。
ところでこの記事はXM Anomaly stats talkに紐付けて投稿しています。
http://web.archive.org/web/20161225013756/https://plus.google.com/115880454950193571355/posts/cZ3JFnH3rgr
先日Via Noir Seoulに紐付く形で北海道は紋別にSFOマーカーが出現しました。私はソウル現地に行ってしまうので直接関われないのですが、この週末の紋別を巡る戦いが、不正に得たなにかを利用した不当な勝利ではなく、互いの名誉を賭けたフェアな戦いとして行われることを切に望みます。",