『LIGHT OF THE JEDI (STAR WARS: THE HIGH REPUBLIC)』(邦題『ジェダイの光』)感想
スター・ウォーズ映画で描かれたお馴染みのクローン戦争や銀河大戦のおよそ200年前、銀河共和国の全盛期ともいわれる “High Republic” 時代を描いた一連のシリーズの第一弾。近々『ジェダイの光』という邦題で邦訳版が出版されることも既に決定しているので、正直なところ原書で買う必要も無かったのだが、早々に予約しちゃっていたしせっかくなので買って読んでみた。
めちゃくちゃ面白かったし、非常に読みやすかった。描かれている時代が今までと全く異なっているのもあって、キャラクターもロケーションも設定も初見のものばかりがどさっと登場するのだが、文章も読みやすく、キャラクターやストーリーもわかりやすいので非常にスラスラと読めてしまった。むしろ、キャラクターが全員初めましてなのが変な先入観みたいなものを排除してくれたのかもしれない。非常に読みやすい英語だったし、近々邦訳版で答え合わせもできるし、何より完全新規のタイムラインの物語だから、初めて未邦訳スピンオフに手を出すのにはちょうど良いんじゃないかな。
今回読んでて一番良いと思ったのが、群像劇としての完成度の高さだ。本作には特定の主人公はおらず、ジェダイ・マスター Avar Kriss やパダワン Bell とマスター Loden の師弟を始めとする数多くのジェダイ、最高議長の Lina Soh 率いる銀河共和国の面々、事件の鍵を握る犯罪者集団 Nihil の構成員等々、様々なキャラクターの様々な視点から一つの大事件を見つめてゆく構成となっているのだが、この視点の移動がテンポ良くポンポンと行われるので、読んでいて全く飽きが来ないし、それぞれの点と点が繋がることで徐々に真実が明らかになっていく過程がとても気持ちが良い。その分個々のキャラクタの内面描写は控えめになっているのだが、テンポ良く物語が進んでいくのでそこはあまり気にならない。その辺は続編に期待といったところかな。
そして、ファントム・メナスの200年前という時代設定も絶妙で良い。この時代の銀河共和国やジェダイ評議会の雰囲気は、映画とは比べものにならないほど良好なもので、 "We are all the Republic." という前向き極まりない合い言葉で団結して事態の収束に当たる共和国議会やジェダイ評議会の姿は、新三部作で描かれた腐敗政治や頭の固いジェダイ評議会の姿に親しんでいた身としては非常に新鮮だった。その一方で、ご存じマスター・ヨーダはもうとっくに現役のジェダイとして活動を始めている時期なので、今回は直接登場こそしなかったものの、所々でさりげなく存在を示唆されることでなじみある世界との繋がりも感じさせてくれるのも良い。
そして続三部作との繋がりもあったのがびっくりした。『エピソード7 フォースの覚醒』の冒頭で意味ありげに登場し、以来本編では全く登場しなかったことで「結局誰だったんだ」と話題になったロア・サン・テッカ。その後、コミックなどでちょいちょい登場したものの、詳しい素性はついぞわからずじまいだったのだが、今回、サン・テッカ家という、関係無いわけがない一族が登場し、そのうちの一人が事件の鍵を握る役割を担っている。年齢的に今後のシリーズでロア・サン・テッカ本人が登場することはないと思うけど、いかにして子孫である彼がフォースの探求者となって、ルーク・スカイウォーカーの地図を持つに至ったのかのヒントが隠されているのではないかという期待が高まってくる。