if all you have is a hammer, everything looks like a nail.
題名は、アメリカの心理学者「アブラハム・ハロルド・マズロー」が示した概念が元となっている、アメリカのことわざだ。
日本語に訳すと「ハンマーしか持っていないと、全てのものが釘に見える」という意味になる。「犬も歩けば棒に当たる」のように、ことわざというのは一般法則のような概念を具体的なひとつの事象で親しまれることが多い。
では、この「if all you have is a hammer, everything looks like a nail.」ということわざは、どのようなことを示唆した言葉なのか。
思考の固定化
例えば、これを感情に置き換えて考えてみよう。
みんなの周りに「いつも怒ってるよなあの人」と感じるような人物はいないだろうか。その人は、なぜいつも怒っているのだろうか。単純に「沸点が低い」とか、「細かいことが気になる人」とか色んな解釈ができるが、ひとつの考え方として「怒りという感情ばかり使っているがゆえに、全てが怒りの対象に見える」ととることもできる。
ここで問題なのは、「何のために怒っているのか」という、問題の本質がずれてしまうという、「手段の目的化」が起こきているということだ。
怒りという感情を使うときには、それを使う理由がある。部下が同じミスを3回したとき、二度としないように喝を入れるとか、子どもが悪口をいったとき、今の言葉が不適切だと教えるためだとか。
怒りという感情は、それを使う目的があるはずなのに、怒りをぶつけることが目的となってしまう。そのような、視野が狭くなっている状態をを、このことわざは上手くたとえている。
ハンマーにとらわれないために
では、そのような状態に陥ったとき、私たちがその状態から抜け出すにはどうしたら良いだろうか。私が考える方法は2つ。
ひとつは、常に思考を疑うこと。
私たちは、どうしても自分が正しいと思いがちで、自分の見ている世界がすべてであると勘違いしてしまうもの。だけど実際は自分の考えていることや常識なんて一種の固定概念に過ぎない。ビジネスコンサルタントの細谷功さんが「それは1000年前のアフリカでも通用するか」と考えてみることを、固定概念から抜け出す手法として挙げていた。自分の考えや行動、時には感情さえ疑うこと。それが重要だと感じている。
もうひとつは、新たな武器をもつこと。
このことわざで重要なポイントは、ハンマーを持っていることではなく「ハンマーしか持っていない」ことだ。ここから抜け出すには、ハンマー以外を手にすれば良い。そうすることで、新たな視点が生まれ、釘以外に見えることがあるはずだ。
私たちの世界は、私たちの経験の上に成り立っている。思考は経験から生まれる。そう考えると、私たちの考えなんて偏見の塊だと思う。色んな経験をし、色んな武器を持つことで、偏見の傾き加減が少しずつ緩やかになるんだと思う。
ハンマーを手にしたことで、全てが釘に見えていないか。
人生のふとしたタイミングで、このことわざを思い出して、一度立ち止まって考える時間を作りたい。