スーパーのおじいちゃん
「真剣なところが、逆に面白さを引き立たせるんやなぁ」と思った話。
スーパーで買い物をしていたときのこと。
ふと、おじいちゃんが目に入った。
白いタンクトップに青い短パンにサンダル。
空っぽの買い物カゴを左手に持ち、お肉コーナーの前で牛肉を真剣な眼差しで見つめていた。
(寒くないんか?)
おじいちゃんの弱々しい体つきを見てすごい心配になった。
しかもタンクトップは「どんだけ洗濯したんや」と思うほど、ゆるっゆる。
乳首が見えるレベル。
10年くらい使ってるんでしょう。たぶん。
(おれもおじいちゃんになっても肉を食い続けたい)
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10分くらいたったか。
自分の買い物を済ませ、レジに向かっている途中、あのおじいちゃんが目に入った。
なんとおじいちゃんは、まだ牛肉を睨みつけていたのだ!
「まだおる!」
とちょっと声が漏れた。
恥ずかしい。
(相当迷っとんなぁ、今晩のおかず)
と思いながら買い物を済ませ、スーパーを出た。
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「しまった。。豆乳買うの忘れてた。。」
帰宅途中、買い忘れた商品に気がついた。
最近毎朝プロテインを飲んでる私には、豆乳は欠かせない必須アイテムだ。
「戻るか。。」
(あのおじいちゃんに思考を奪われてたから抜け落ちたんや)
それくらいこの時期のタンクトップは印象的な姿だった。
スーパーに戻り、豆乳を買い、買い忘れのモノがまだないかぷらっとスーパーをふらついたのち、レジに並ぼうとした。
その時!
あのおじいちゃんが並んでいた。
カゴの中には、魚肉ソーセージがひとつ。
(牛じゃないんかい!魚肉ソーセージて!カゴより軽いやん!)
心の中でひと通り突っ込むと、数十分前に牛肉を見つめていたおじいちゃんの姿がふと蘇ってきた。
悲しさと切なさと、なんとも言えない面白さが込み上げてきた。
そしてレジに並んだおじいちゃんは、
「レジ袋はご利用ですか?」
という問いに
「いらないです」
とエコの精神を見せ、スーパーを後にした。
牛肉からの魚肉ソーセージという落差。
弱々しさと真剣さからくる、切なさ混じりの面白さ。
おじいちゃんから、笑いの奥深さを学んだ1日の終わりの出来事でした。