物理学の地図#2
前回、学生時代を振り返り、素粒子物理学で学習する必要のあった理論を図(下図)にしてみました。前回は量子力学あたりで力尽きたので、今回はその続きになります。
説明することが多すぎて、どうしても長くなってしまいますが、今回も詳細はWikipediaに任せます。もっと知りたい方は、ウェブ上にもたくさん情報があるので、この記事であげたキーワードで検索してみてください。
量子統計力学
量子統計力学は、ミクロな粒子を「とびとびのエネルギー(エネルギー準位)」しかとり得ない量子として扱った統計力学です。量子力学の契機となった黒体放射の問題で、温度等の熱力学変数を導出するために考案されました。
重要なのは、(1)積分計算の代わりに総和計算を使うことと、(2)エネルギー準位の考え方が2通りあること、あたりかなと思います。
統計力学では、粒子の運動から状態数や分配関数を計算して、そこから熱力学変数(主にエントロピー)を積分計算を使って導出します。これに対して、量子統計力学では、粒子のエネルギーが離散値なので、積分計算の代わりに総和計算を使います。
私自身は、状態数の計算は、n個の箱の中にk個のボールを入れるパターンの数のように理解しています。箱がエネルギー準位で、ボールが粒子に相当します。個人的な理解なので、間違っていたらすみません。
箱の中に1つまでしかボールを入れられない、かつ色が全く同じでボールの区別ができないとすると、箱にボールを詰めるパターンは組み合わせの個数nCkになります。
箱が10個、ボールが5個だとすると、組み合わせ個数はnCk=10!/(5!5!)=252パターンある計算です。パターンの1つが粒子が持つエネルギーが決まった1つの状態なので、状態の数は252パターンあることになります。
上の喩えでは「箱の中に1つまでしかボールを入れられない」ことにしましたが、これに加えて、自然界では「箱の中にボールを無限個入れられる」ケースがあります。前者のボールをフェルミ粒子といい、その粒子分布はフェルミ分布と呼ばれます。後者のボールはボース粒子といい、その粒子分布はボース分布と呼ばれます。
フェルミ粒子とボース粒子の違いは、粒子の自転のような量である「スピン」の違いによります。フェルミ粒子はスピンが半整数(=1/2,3/2,…)なのに対し、ボース粒子は非負整数(=0,1,2,…)になることが知られています。スピンの存在は、実験でも確かめられています。
ただし、スピン1/2のフェルミ粒子は、磁場がある状況で±1/2の2つのスピンに別れ(ゼーマン効果)、それぞれ別々の箱が用意され、そこに1つずつ入ります。逆に言うと、磁場がないと1つ箱に2つのフェルミ粒子が入ることになります。
ちなみに、現在、人類はスピン=0,1/2,1の粒子しか観測できていません。重力の粒子(重力子)はスピン=2と予想されています。
実は、学生当時、私は統計力学がいまいち理解できていませんでした。でも、量子統計力学になってからグッと理解が進んだ気がします。
(参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/量子統計力学
相対論的量子力学
相対論的量子力学は、特殊相対性理論を満たすように作られた量子力学です。
実は、量子力学と特殊相対性理論は、相入れない存在です。そのため、「量子力学も相対性理論もどちらも実験的に正しいのに、両方を同時に満たすことができない・・・」というのが、物理学者の悩みでした。
これは、主に「量子力学の相対論化」を考えていたためでした。これを、逆転の発想で「相対論の量子化」で解決したのが相対論的量子力学になります。
相対論的量子力学の重要な結論は、(1)ボース粒子はクライン・ゴルドン方程式に従う、(2)スピン1/2のフェルミ粒子はディラック方程式に従う、(3)粒子を表す記号ψは波動関数ではなく「場」である、あたりかなと思います。
皆さんも、アインシュタインの公式「E=mc^2」は見たことがあるのではないでしょうか?これは、物体が静止している時のエネルギーを表していて、物体が運動している時のエネルギーは「E^2=(pc)^2+(mc^2)^2」という少し違う公式になります。シュレーディンガー方程式のように、この後者の公式を量子化したものがクライン・ゴルドン方程式になります。
ただ、クライン・ゴルドン方程式は、フェルミ粒子を表せない、負のエネルギーが出てしまうなどのいくつか問題が残されていました。
1928年、ポール・ディラックは、適当な変数αβを仮定して、上記の公式を「E=αpc+βmc^2」という形に無理矢理因数分解し、これを量子化することでフェルミ粒子が自然と必要になるディラック方程式を導出しました。ただし、元の公式を満たすために逆算すると、変数αβは行列になる必要があります。
ところで、シュレーディンガー方程式で粒子を表していた記号ψは、波動関数と呼ばれていました。これは、シュレーディンガー方程式が波動方程式だったためです。しかし、クライン・ゴルドン方程式もディラック方程式も波動方程式ではありません。そのため、記号ψは「場」と呼ばれ、クライン・ゴルドン方程式に従う場をスカラー場、ディラック方程式に従う場をスピノール場といいます。
おそらく、多くの方が混乱するのはスピノール場の方です。スピノール場は、4つの成分ψ=(A,B,C,D)からなるベクトルです。Aはスピン1/2の粒子、Bはスピン-1/2の粒子、Cはスピン1/2の反粒子、Dはスピン-1/2の反粒子を表しています。多分、「反粒子ってなんやねん!」という感じになるのではないでしょうか。
反粒子とは、普通とは逆の電荷をもつこと以外、粒子と特性が全く同じ粒子のことです。「反粒子」というと、まるでファンタジーのように聞こえますが、電子の反粒子である陽電子は実験でその存在を確認されています。今では、陽電子を生成することも可能になっています。
他にも、「ディラックの海」などSFで使われるような概念も出てきますが、そこは調べていただければと思います。
(参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/相対論的量子力学
https://ja.wikipedia.org/wiki/クライン-ゴルドン方程式
https://ja.wikipedia.org/wiki/ディラック方程式
量子電気力学
量子電気力学(量子電磁力学)は、相対論的量子力学と電磁気学を融合したものです。最初の場の量子論でもあります。
相対論的量子力学の2つの方程式は、粒子単体の運動を記述することができましたが、粒子同士の相互作用を表すことはできませんでした。たとえば、電子はマイナス電荷を持っているので、2つの電子は近づくほど電気的に反発するはずです。そのため、電気や磁気の理論である電磁気学を相対論的量子力学に取り込む必要がありました。
量子電気力学の重要な結論は、(1)相互作用を導入するには時空の偏微分を共変微分に変更すれば良いこと、(2)ゲージ不変性の要請が相互作用を生み出すこと、でしょうか。
電磁気学の基礎方程式であるマクスウェル方程式群は、整理していくと電場Eや磁場Bを用いずに4次元のベクトルポテンシャルAだけで記述できることが知られています。Aの空間成分を時間微分したものが電場E、Aの時間成分を空間微分したものが磁場Bになります。そこで、ベクトルポテンシャルAをディラック方程式の中に組み込めれば、電磁相互作用のある電子の運動方程式が記述できるはずです。
このとき、ベクトルポテンシャルAは微分演算子と同格に扱い、ディラック方程式の中の4次元微分∂を4次元の共変微分D=∂-ieAに書き換えることが、相互作用を導入する方法だと分かりました。ただし、同時に電磁場の運動項も追加する必要があります。
ここで、共変微分Dは、マクスウェル方程式群のゲージ対称性(ゲージは「ものさし」のこと)に由来しています。ゲージ対称性とは、ゲージ変換(ものさしの変更)をしても、マクスウェル方程式が全く同じ方程式に帰着することです。メモリ1mm間隔の定規を、1cm間隔の定規に変えても、起きている現象は別に変わらないことをイメージしてもらえればいいかと思います。
そして、このゲージ対称性を、ディラック方程式とマクスウェル方程式を一体化した方程式(正確にはラグランジアン)に要求すると、共変微分Dの形になります。そのため、ベクトルポテンシャルAは、一般にゲージ場と呼ばれています。一方、共変微分Dの中にある電荷eは、一般に結合定数と呼ばれ、ゲージ場と粒子場の相互作用の強さを表す定数になります。
(参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/量子電磁力学
https://ja.wikipedia.org/wiki/ゲージ理論
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヤン=ミルズ理論
一般相対性理論
一般相対性理論は、重力を扱う理論で、アインシュタインがほぼ単独で研究し、1915年に発表されました。時空を物理量として扱うので時空物理学と言っても良いかもしれません。
相対性とは「いつどこでも同じ物理法則が成立する」ことでした。ただし、特殊相対性理論では「慣性系どうしの相対性」を要請したのに対し、一般相対性理論では、「非慣性系を含めた相対性」を要請します。非慣性系とは、主に重力加速度のかかった系のことです。例えば、自由落下している窓のないエレベータの箱のイメージです。
この自由落下している箱の中は無重力状態になりますが、箱の中の人には「重力がかかっていない」(慣性系)のか「重力はあるけど自由落下していて擬似的に感じない」(非慣性系)のかを区別することができません。つまり、ずっとではないものの、一瞬を切り取ると、非慣性系を(局所)慣性系とみなせることが分かります。これを、等価原理と言います。
では、自由落下している箱の中の人が「自分は等速直線運動をしているだけ」「慣性系にいて重力はかかっていない」というのを、外の人はどう考えたらいいでしょう?実は、これを「空間の方が歪んでいて、歪んだ空間を等速直線運動している(=重力は存在しない)」と考えるのが、一般相対性理論になります。
歪んだ空間の代表例は、地球の表面です。地球表面は丸い球面ですが、普段、自分の周りを丸いとは感じません。このある地点で感じるフラットな空間を、接空間と言います。実は、この接空間では特殊相対性理論が成立し、一般相対性理論は特殊相対性理論を内包していることが知られています。
一般相対性理論では、この曲がった空間の取り扱いにリーマン幾何学を使います。リーマン幾何学は、計量テンソルgを用いた距離の定義√gdxdxがどの地点でも同じ形になる条件を持っています。実は、この計量テンソルgが、一般相対性理論では重力場に読み替えられます。
ところで、相対性の要請の中には「いつでもどこでも、同じ物理法則は、『同じ方程式になる』」というものがありました。これは、厳密には共変性と呼ばれます。フラットな空間では意識しなくても良かったのですが、曲がった空間では強く意識しないといけません。主な原因は、ベクトルの向きを地点ごとに補正する必要があるためです。
例えば、東京(北緯35°)と同経度の赤道上(北緯0°)の地点を考えましょう。赤道上で真上を向いたベクトルは、真北の東京に移動させると、真上を向かず、南に35°傾きます。そのため、赤道上の方程式を、東京では35°傾けた方程式にしないと、同じ物理法則になりません。つまり、曲がった空間では地点ごとに方程式を書き換えなければならず、とても面倒なことになります。
だから、共変性が成立してくれると、とても楽になりますね。共変性を保つためには、赤道上で真上を向いたベクトルが、東京でも真上を向いたベクトルになるように補正する必要があります。微分幾何学では、この補正をv'=v+aΔvのようなベクトル和で書き、係数aのことを「接続」と言います。
また、この補正は、ベクトルだけでなく、微分の定義から微分演算子にも必要になります。補正された微分演算子は∇=∂-aという形になり、これを共変性を保つ微分という意味で「共変微分」と言います。これは、量子電気力学で出てきた共変微分D=∂-ieAと数学的に同じものです。リーマン幾何学における接続はクリストフェル記号Γになります。
空間の歪みは、2つの共変微分の順序交換の際に、[∇1,∇2]X=(∇1∇2-∇2∇1)X=RXという補正R(リーマンテンソル)として出現します。ここで、[A,B]は交換子という二項演算子です。
この交換子にヤコビ恒等式[A,[B,C]]+[B,[C,A]]+[C,[A,B]]=0を満たすように要請すると、Rに対する2つの条件式を得ることができます。1つはRの添字を入れ替えた3つの和がゼロになるもの、もう一つは∇Rの添字の入れ替えた3つの和がゼロになるものです。後者は、ビアンキ恒等式といい、計量gを使ってRを整理していくと、アインシュタインテンソルGに対する∇G=0という公式が得られます。
これは、共変微分に対してGは保存することを示しています。これに対し、物理学には、場所や時間に依存せず、絶対に満たさなければならない保存則があります。それは、エネルギー保存則と運動量保存則です。当然、共変微分に対しても保存しなければなりません。そこで、エネルギー運動量テンソルTを導入して、保存則を∇T=0と表すことにします。
そうすると、2つの保存則を結びつけて、∇G=k∇T=0としても、答えが0で共通なので問題ありません。ここで、kは適当な比例係数です。そして、共変微分を除いた公式G=kTが、アインシュタイン方程式となります。Gは曲がった空間から得られ、Tは物体のエネルギー等から得られるため、アインシュタイン方程式は空間=物質という形をしていることが分かります。
(参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/一般相対性理論
https://ja.wikipedia.org/wiki/一般相対性原理
https://ja.wikipedia.org/wiki/等価原理
https://ja.wikipedia.org/wiki/共変微分
https://ja.wikipedia.org/wiki/リーマン幾何学
https://ja.wikipedia.org/wiki/一般相対論の数学
場の量子論
場の量子論(ゲージ場の量子論)は、量子電気力学を発展させたもので、20世期の物理学の総決算的な理論です。
量子電気力学では電磁相互作用を導入しましたが、これまで発見されている相互作用は、①電磁相互作用、②弱い相互作用、③強い相互作用、④重力相互作用の4つがあります。これらを、統一的な枠組み(フレーム)で考えられるようにするのが、場の量子論の試みです。
場の量子論は、話題が豊富でポイントを絞るのが難しいですが、3つあげるとすれば、(1)経路積分のくり込み群とファインマン・ダイアグラムによる計算で妥当な物理量が計算できること、(2)自発的対称性の破れによって電弱統一理論と質量獲得が可能になること、(3)大統一理論と重力統一理論は未完成なこと、あたりでしょうか。。
経路積分は、解析力学で登場した作用積分S(ラグランジュ関数を積分したもの)から、量子力学の確率振幅KをK=∫dx1...∫dxN exp{(i/2πh)S}と計算する方法です。x1〜xNはN等分された粒子が進む経路を表し、それを無限積分することであらゆる経路について積分したことになっています。この計算は、古典力学量から量子力学量を計算するので、これを「ファインマン量子化」と呼ぶこともあります。
場の量子論では、座標を変数とした古典的な作用関数S(x,dx/dt)の代わりに、場を変数とした作用汎関数S[ψ,∂ψ,x]を用います。このとき、xと∂は時間1次元+空間3次元の4成分ベクトル量とすることで、相対論的量子力学を満たす形にすることができます。具体的な作用汎関数Sは、ディラック方程式や共変微分に基づいて定義(これをモデルと言います)していくことになります。余談ですが、素粒子物理学の理論研究は「モデルをどう与えるか」が研究の出発点になります。
この経路積分は、実は普通に計算すると無限大になってしまうため、数学者から「破綻している」と批判されています。しかし、物理学者は「実験結果が説明できればOK」というスタンスなので、摂動計算を使って無理矢理(?)物理量を計算する方法を編み出しました。それが、朝永振一郎らのくり込み計算手法と、ファインマンのダイアグラム計算手法です。両名は、この成果で同時にノーベル賞をもらっています。
ファインマン・ダイアグラムは、確率振幅を使った物理量の計算を摂動展開し、展開された各摂動項を「インプット-相互作用-アウトプット」の形で図示したものです。例えば、電子と電子の反発は、一次摂動項は「2つの電子が近づき(インプット)、光子を交換して(相互作用)、2つの電子が離れていく(アウトプット)」散乱現象と解釈されます。二次摂動項は、「光子が、交換の間に粒子と反粒子を対生成・対消滅した」というような、対生成対消滅ループが1つあるダイアグラムになります。慣れてくると、ほとんどダイアグラムで計算するようになります。
くり込みの方法は、かなり理解に苦しみました。物性物理学の方では、くり込みはスケール変換に相当していると判明しています。簡単にいうと、ある現象のミクロな物理量が、粗視化しても(パラメータを「くり込んで」あげれば、又は適切な「スケール」のものさしを使えば)同様の物理法則を使って計算できること…だったはずです。場の量子論では、くり込みパラメータが結合定数なので、「定数なのにかわっちゃうの!?」と混乱しました。ただ、この方法は、粗視化しても同じ物理法則が成立するために「繰り込み可能条件」を満たすモデルでないと使えません。
自発的対称性の破れとは、作用汎関数Sが対称性(ある変換に対する不変性、例:ゲージ不変性)をもつにも関わらず、最小作用の原理から導かれる最低エネルギー状態(真空)ではその対称性が失われていることです。計算の手続きとしては、①最小作用の原理を使って作用汎関数Sから運動方程式を導出、②運動方程式を解いてその解を作用汎関数Sに再代入します。そうして書き直した作用汎関数は、最低エネルギー状態の作用汎関数S'になっており、S'にはSにあった対称性が成立しなくなっていることを、自発的対称性の破れと言います。最近だと、自発的対称性の破れの発見によって、南部陽一郎がノーベル賞を受賞しました。
自発的対称性の破れを利用して、ゼロ質量の粒子が質量を獲得する仕組みをヒッグス機構と言います。ヒッグス機構では、ゼロ質量・ゼロ電荷のスカラー場φを導入し、作用汎関数Sの中に、φの運動項と、φ^4に相当するポテンシャル項を付け加えます。そして、スカラー場φについて運動方程式を解き、φを作用汎関数Sの中に代入します。すると、他のスピノール場ψの質量項(ψ^2に相当する項)が出現する、という仕組みです。
電弱統一理論とは、アップクオークu、ダウンクオークd、電子e、ニュートリノν、ヒッグス粒子φ、電弱ゲージ場で構成された場の量子論モデルです。標準モデルとも、ワインバーク・サラム理論とも言います。上記のように、ヒッグス粒子は真空で自発的に対称性が破れ、電弱ゲージ場は電磁ゲージ場(1成分)と弱いゲージ場(3成分)に分離されます。すなわち、電磁相互作用と弱い相互作用は、電弱相互作用として統一的に考えることができます。また、このヒッグス機構では、各粒子と弱いゲージ場に質量が与えられつつも、ヒッグス粒子の一部が残ります。近年、この残ったヒッグス粒子が実験で観測され、ようやく全ての検証が終わりました。これで、電弱統一理論が完成したことになります。
大統一理論とは、電弱相互作用に強い相互作用も加えて、電弱強相互作用として一つの理論に統一しようという試みです。強い相互作用は、原子核を構成する陽子や中性子あるいはその内部粒子であるクオークを結びつけている力です。電荷は±eの二値ですが、強電荷は三値をとり、光の3原色に見立てr,g,bと名付けられています。そのため、強い相互作用の場の量子論モデルは、量子色力学と言います。この単独モデルとしては理論があるのですが、いまだに統一できたという話は聞こえてきません。
ここまでくると、「じゃあ、重力は統一できないの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。もちろん、それは考えられていました。実は、アインシュタイン方程式を場の量子論のフレームに乗せることは、さほど難しくありません。アイシュタイン方程式が導出されるアインシュタイン-ヒルベルト作用関数がすでに知られているからです。アインシュタイン方程式を場の量子論に変換した理論は、量子重力理論と言います。しかし、これは繰り込み可能条件を満たさず、繰り込み計算できないことがよく知られています。
(参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/場の量子論
https://ja.wikipedia.org/wiki/経路積分
https://ja.wikipedia.org/wiki/くりこみ群
https://ja.wikipedia.org/wiki/自発的対称性の破れ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒッグス粒子
https://ja.wikipedia.org/wiki/ワインバーグ=サラム理論
https://ja.wikipedia.org/wiki/量子色力学
https://ja.wikipedia.org/wiki/大統一理論
またまた中断します。
ここまでで、およそ8800字になってしまいました。。。長くなってしまったので、再び中断しようと思います。
場の量子論に到達したことで、素粒子物理学のスタートラインに立つことができました。ここまでは、実験検証された理論になります。場の量子論は近年のヒッグス粒子の観測成功によって、一般相対性理論は近年のブラックホールの直接撮影成功によって、実験による理論の検証はほぼ完了したと考えていいかと思います。逆にいうと、ここから先の理論には、実験によるサポートは全くありません。
しかも、ここから先は、きちんと学習しなかった理論ばかりで、果たして説明できるのか…。
今回、紹介した理論は、場の量子論を除いて、大学院の講義で習うと思います。場の量子論は、素粒子分野の研究室に入らないと学習しないかもしれません。少なくとも、私の時代に講義はありませんでした。
でも、前述のように、場の量子論は20世紀物理学の集大成なので、学んでみてもらい、それまでの多くの理論がパズルのように組み合わさっていく感覚を味わってみてほしいかなとは思います。