京都散策記 伝説の写真家「ソール・ライター」写真展へ
4月から転職する。
いわゆる「有給消化」のため、私は今、1ヶ月ほど仕事を休んでいる。せっかくならこんなにまとまった休みが取れる期間に海外旅行でもいきたいものだが、なんせ世の中は新型コロナでそれどころじゃない。
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一人旅をしてみたかった。
もともと一人でいるのは嫌いだ。何でも人に話して消化するタイプだし、何より寂しいからだ。4年前、韓国留学中に、釜山へ人生で初めての一人旅に挑戦したが、散々だった。
でもほんとは、一人で考えを深められて、一人でも平気という人に憧れる。
そんな気持ちもあって、少し大人になった今、もう一回一人旅に挑戦してにようと思い、京都へ行くことにした。
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一人旅と言っても、何かしら目的地がないとなあ...とぼんやり考えていた私は、グーグルにこう打ち込んだ。
「関西 美術展 2021」
そこで出てきたのが、美術館「えき」KYOTOで開催されていたこれだ。
『ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター』
どうやら、カラー写真の第一人者で、50年代からずっとニューヨークで写真を撮影してきた人のようだ。ファッション写真にも長いこと関わっていたということ。写真は流行もあってか、周りでもやっている友人が多く、なんとなく興味を惹かれた私は、この写真展に行ってみることにした。
この写真家ソール・ライターのリアリティー映画も、同日に上映しているとのことで、写真展のあとに見に行ってみることに。
私は、ふと思い立ち、有給の1日をソール・ライターという未知の写真家に捧げることにしたのだった。
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その翌日、大阪を10時半頃出発し、11時半にJR京都駅に到着。美術館「えき」KYOTOは、駅直結の伊勢丹に入っているということで、すぐにたどり着くことができた。
写真展受付に着くと、平日の昼時というのに、すごい人...
多くはシニア世代だった印象だが、大学生っぽい人たちもちらほら。
会場に入ると、当たり前だが非常に多くの写真が展示されたていた。ソール・ライターの生い立ちの紹介に合わせ、モノクロ写真からカラー写真まで、時代を追って彼の撮影してきた写真が並んでいた。
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驚いたのが、ソール・ライターはファッション雑誌などの商業写真も撮影していたが、多くが家族と最愛のパートナー・ソームズの写真だったということと、在住していたニューヨークのアパート界隈を数十年にわたりずっと撮影していたということだ。
素人目に、没後に写真展が開かれるような写真家であれば、当然いい写真が取れる場所や被写体を探しいろいろな場所を飛び回っているものと思っていたが、ソール・ライターはそうではなかった。
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そして、彼の写真の撮り方もまた、興味深いものがあった。写真とタイトルの相関がすぐにはわからないものが多かったのだ。(タイトルが「青いスカート」なのだが、大きく前に写っているのは建物か何かの黒い影で、よく見るとその建物の奥に青いスカートを履いた女性がいる、といった具合に)
これはあとから映画をみてなるほど、と感じたが、彼が写真を撮るときのコンセプトは「見る人の左耳をくすぐる」ことだったそうだ。
これは慣用句などではなく、彼独特の言い回しのようだが、私が「青いスカート」で感じたように、見る人に意外性を感じさせる、といったことなのだと思う。
車の中から外を撮った写真、店のショーウィンドウに映る人の写真など、ソール・ライター独自の視点から撮影された写真は、時代が変わってもなお「ソール・ライターの写真」であることがよくわかるものだった。
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ソール・ライターの写真はもちろん素晴らしいものだったが、私は写真展を見る中で、彼の「言葉」に最も関心させられた。
I happen to believe in the beauty of simple things.
I believe that the most uninteresting thing can be very interesting.
私は単純なものの美を信じている。
もっともつまらないと思われているものに、興味深いものが潜んで いると信じているのだ。
When I consider all the beautiful things that have been done, my own achievements are rather minor.
今まで人がやった素晴らしい仕事を思えば私自身の達成などささやかなものだ。
When you consider many of the things that people treat very seriously,
you realize that they don't deserve to be treated that seriously,
And many of the things that people worry about are not really worth worrying about.
人々が深刻に受け止めてることを見てみると 大半はそんなに深刻に受け止めるに値しない。
重要だと思われていることもたいていはそこまで重要じゃない。
大半の心配事は心配に値しないものだ。
写真やこれらの言葉を見ると、彼が大事にしていたものは地位や名声ではなく、むしろ有名になったり見られることを嫌悪していたようにも感じられる。
もっとシンプルに生きること、そして人生において何が大事かは、自分の基準で決めないといけない。
最近、本で読んだりしてそんな考え方を知っていく途中、ソール・ライターの言葉はその考えを更に納得させてくれるようなものだった。
時間に余裕があり、自分の思想の持ち方について考えを深められるこの時期に、私は行くべきしてソール・ライターの写真展に引き込まれたのかもしれない。
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ちなみにこのあと、14:40から上映の映画のチケットを買いに映画館に向かったところ、すでにチケットは売り切れていたtため、諦めて昼食を取り、少し烏丸付近を散策して家に帰った。
(昼食に食べた日本式洋食屋「サフランサフラン」のハンバーグ定食)
ちなみに、映画「写真家ソール・ライター-急がない人生で見つけた13のこと」はAmazonプライムで400円で借りることができたため、家に帰ってから鑑賞した。
私がこの写真家と出会ったタイミングは偶然とは思えないような。そんな考えを深めた京都散策であった。