朋あり遠方より来たる
「そのかみの 愛読の書よ
大方は 今は流行らず なりにけるかな」
と、石川啄木は歌っています。
一概に、すべての本とか、すべての歌とか
言うことはできないけれど、
大概の本や、歌の運命は、
確かに、このようなものであり、
長い年月経れば、忘れ去られていく。
しかし、例外的に、
ある本やある歌について、
出た当初は、流行らずとも、
徐々に読者を獲得して、
長い年月、読まれたり、
ある歌について言えば、
リバイバルソングとして
復活することもあります。
啄木の歌に即して、想像することは、
当時ベストセラーだったものが、
今は、ほとんど読まれなくなった
本の類を指して、歌ったものでしょうか。
しかし、ベストセラーやヒットソングではなくても、
昔愛読した本や、愛聴した歌を、
多くの人が、見向きもしなくなった年月を経て、
再び読んだり、歌ったり(吹奏)するのは
楽しいひとときでもあります。
「朋あり遠方より来たる、また楽しからずや」
です。
遠方は、何も空間だけでなく、時間についても、
つまり、遠い昔でも、意味は通じます。
まあ、一口に、
人生の暇つぶしと言っても
いいのでありますが、
単なる懐古趣味でなく、
よく言えば温故知新、
昔読んだ本を引っ張り出して、何回も読んだり、
昔流行った歌を、サックスで吹いたりしながら、
今日もまた、
昔気づかなかったことに驚いたりしている者が
ここにいるのであります。