「現実と理想の差」との付き合い方【0か1かを決めない思考】
仕事で壁に阻まれるたびに「情報収集しなさい」と言われたり、もしくは「もしかして自分は無知すぎるのではないだろうか」と焦り、落胆することはありますでしょうか。ぼくはよくあります。すこぶる高い頻度です。
難易度の高いプロジェクト、初めての業務領域、新しいスタッフが入るとき。なぜ自分はこんなにも思考をまとめるのが下手くそなのか、もっと上手に伝えられたのではないのか、どうして言葉数ばかり多くなって芯がないのか・・・。
そして人に対して「情報収集が足りない」と伝える頻度も高いです。「あなたはまず無知を知ることだ」とどのような角度から提示すべきなのか、言葉の選び方には非常に迷います。
とはいえ、こんな感じで思考数と回転を増やしながら業務をし続けても疲れてしまい、働くのが嫌になる。だったら考え方を変えてみるのはどうだろうか。
理想を下げるか、現実を引き上げるのか。
自分ができるスキルや持っている知識で解決できない課題(壁)に直面する、ということは、「超えたい」という欲求に処理能力がついていっていないのかもしれない。叶わない理想と立ちはだかる現実。
この差が大きい時、解決方法は2つ。
1.理想を下げる=やりたい気持ちを抑え、できるところから着手し成功体験を積む
2.現実を引き上げる=やりたい気持ちを調整しながら、できること80:やりたいこと20くらいのペースで進める
「がむしゃらにやれよ」はカンフル剤に留めておく
「成長したい気持ち」「スキルアップしたい気持ち」があれば「なんとかなる・がむしゃらにやる」という考え方も重要です。がむしゃらになることで自分の潜在能力を発揮して、本領を発揮していきます。
しかし、「理想と現実の差に苦しんでいるとき」に限っては具体的な解決方法になりにくいと思っています。
そもそも苦しんでいる人にとって「気持ちを燃やせばなんとかなる!」場合とは、必死に考えた結果たまたま自分に合う打開策が見つかる場合に限定されるから、という側面が強いのかも知れない。自分に対して附に落ちやすい解決方法や打開策の提示である、とはいいにくい。
Aさん「自分ができることと、本来やりたいことが一致しておらず苦しい」
Bさん「目標から逆算して考えれば良いよ。いつ、自分がどんな姿になりたいのか」
Cさん「今はがむしゃらにやれば良いよ」
Bさん、Cさんのアドバイスは仕事を進める上でとても重要ですが、理想と現実の差を埋めるための精神的な拠り所の考え方の提示でしかなく、実スキルとの差を埋める具体的な解決策ではありません。
そして業務が忙しいときこそこういった問題が起こりやすいのです。もし場当たり的な業務の進め方、業務の具体的な未来図がないとき、個人にとってこの業務が何のためにあるのかといった理解がなければ、成果物の力の入れ具合が変わり、結果的に品質やキャリアに影響してくるのです。
実際、ぼくもこういった類の相談をされたときに「これは業務マネジメントの領域として回答すべきか」「メンターの顔として導くべきなのか」「個人の意見として伝える温度感なのか」という迷いがまず出ます。
受け取る側が何を重視しているかによって発言の重みが変わるので、いま何を求めているのかによって顔を変えるべきだし、やはり変えなければいけないと思っています。
理想と現実の差は「思考のバグ」を生み出す
多くの場合は「なんとか」なっていないから差に苦しむのであって、そんな心理状況だと不完全燃焼の思考プロセスを繰り返してしまい、現実に対する満足度は低いまま終わることの方が多い気がしています。
こういったある種の「思考のバグ」に直面するたびに情報収集を行うわけですが、本当によく細谷功さんの本と出会います。
(何度も出会う時点でもしかすると「思考のバグ」から抜け出せない輪廻に入ってしまったのでは、と思いつつも、これは心の拠り所なのだ、自分にとっての「打開策」のひとつなのだ、と自分に言い聞かせています…!)
となると、「思考のバグ」への処方箋としては、やはり「がむしゃらにやれよ」と極端に精神論によった発言で鼓舞するよりも、「理想と現実の差をなるべく小さく抑えつつ、どちらかを段階的に調整していく」方が優先順位が高いと言えます。
「やるか、やらないか」という二択ではなく、「やる上で、具体的にどう進行していくべきなのか」を打算的に・計画的に棚卸しを行い、心のストレス(理想と現実の差)を埋めていく考え方です。「やりたいことはやらない」ではなく、「やらなきゃいけない業務の中に自分のやりたいことを少しずつ取り入れ、を狙う」という方法です。
さて、「取り入れる」ということですが、「相乗効果を狙う」が最もポピュラーで効率的なハウツーかもしれません。ですが、「やっている業務全て」が「自分の理想にとっての相乗効果となるか」というと、そうなりません。
そこまで要領良くやれているなら、そもそも理想と現実の差を埋める算段がつきやすい状態のはずだからです。
Webサイト制作のディレクションやプロジェクトマネジメントスキルは自分の人生の中にはなかった地図だ。でも業務ではその領域が求められている。それならば、プロジェクトを取りまとめることで決定権者への立ち回りや言い回しが上達するかもしれない。
最初から理想と現実を常に一致させようという「思い込み」が「ストレス」を生んでいるのではないか、という仮説を考えると、「最初から相乗効果がなくても良いか」「発揮することが難しければ他のやり方にしよう」と切り替えて過ごす。そして、多くの業務は相乗効果や効率性を求めるよりも先に、まずはゆるやかな相関関係の事実を捉える方がはるかに簡単です。
▼できること80:やりたいこと20くらいの気持ちで取り組む
・「スキルの相乗なのかもしれない」
→WEBサイトやLPでのライティングを続けているうちに、自分が発信したい情報と市場で求められているコンテンツの共通要素が見え、アウトプットできるようになった。
→今までは自分が発信したい情報を優先していたが、みんなが読みたい情報を構造化して届けることができるようになった。
・「思考の補完ができているのかもしれない」
→一人でやっていると仕事が遅いが、先輩のマネをしているうちに判断・決断をすることに慣れ、早く片付けられるようになった。
→仕事を指示したり誰かに委任するとき、どうやって伝えたら加速することができるのか、サポートの入り具合を調整すべきかの順序がわかる。
・「様々なビジネスモデルを知ることができるかもしれない」
→将来、独立することを考えると、あらゆる業種・業態のクライアントに対するセールストークや提案力を高めることができるかもしれない。
→自分にとって「失敗した経験」は今後やらないのか、克服すべきなのか、と「やらない領域」「改善すべき領域」を決めることができる。
思考回路は単純な条件分岐、のはず
自分にとって知らないことを認めてあげる思考に転換することはとても大切です。まず認める・認めないという分岐点に立った上で、現実で起こっている事象が、理想を叶えるための1段目と解釈するのか、あるいは一段目には上がらずに「自分が把握している限りの近道があるはずだ」と狩りに出かけるのか、どちらも正解です。
ただ、「差」に苦しんでいるときは、基本的に「認める=1段目」と捉えてあげた上で、狩りの旅にいつ出るのかをゆっくり検討しても遅くないと思います。
ひとつの事象に対して様々な観点から解決方法や代案を導き出す際には「オズボーンのチェックリスト」というワークフレームがとても役に立ちます。
このワークフレーム自体はブレスト(複数人でのディスカッション)に用いられますが、「理想と現実の差(思考のバグ)」に陥ったときに、自分の脳内でもできますし、誰かと一緒に実施することもできます。
理想と現実の差に苦しむときこそ、「自分にとっての成功報酬ポイント」をたくさん用意する。答えが出ないときは、応用・転用の可能性を模索する思考プロセスに任せる。急がず段階的に、そしてときには打算的に、少しずつ成功体験を積み上げていく。そうすれば、結果的に「自分が知らない領域がわかるようになる」ということに繋がるのだと信じています。
【参考記事】
「メタ認知」「自責」について、「無知の知」の話と合わせて紹介されています。
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