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「見ないと分からない」の感覚と、商業クリエイティブのプロジェクトマネージャーの存在意義 / #nanocolor週報

クリエイティブを扱う現場での"事件"

今月は、Webサイトで使用する商品撮影のお取組みが複数件。別々の依頼主。

今週、そのうちの1件が終わった。
あるパートナーの方との協力で、依頼主(クライアント)の商品撮影に臨むことに。パートナーがプロジェクトリーダー、撮影日の前から依頼主と撮影カットイメージをすり合わせたはずだった。

しかし現場では、どうも依頼主の「これだ!」にたどり着いていない。おかしい。現場にいたスタイリストさん、カメラマンはいつも取り組みをしているプロの方々だ。依頼主のGOサインが出るまで進行しない。全員が、ご意見をお伺いする状態に。空気は最悪。

撮影スタジオもスタッフも、今日しか抑えていない。今日、この時間で納得のいくものを撮らないといけないのだ。緊張感が走る。

依頼主を迷わせないための「責任感」


事業にとってキャッシュは大切。だからこそ、納品物は想像を超えるものじゃないといけない。僕らはプロとしてやっているし、表に出すものを作っている。だから、何も恥ずかしいことはしていないという自信がある。

でも、依頼主に納得のできないものを納品し、お金を頂くのはどうか?取り組みの姿勢や気合を切り売りしているわけではない。結果を求めている。だから、お困りごとや決めきれないことがあったら代わりに誰かが決めないといけない。ここにいる全員が、ガラガラポンでビジネスをしているわけではないはずだ。

しかしぼくは、プロジェクトにかかわっておきながら事前の準備を徹底することができなかった。パートナーに嫌われても良かった。にもかかわらず、「依頼主が見ないと分からない状態」を見過ごしてしまった。

結果、撮影は無事に終了したのだけれど、これは現場の方針転換やプロのスタッフがいたからこそ成し得たこと。100%全員が納得したいかというと、そうではないんじゃないか。そんな懸念が残っている。

では、不足していたものとは何だったのか


まず一つ目は、「言葉の定義」の事前擦り合わせ

少し前に、コロナ対策について「メッセージ性の強い政策を打ち出していく」という会見を見た。メッセージ性は何か分からないけど、きっと人によってとらえ方は変わるだろう。

ブランドイメージがメッセージ性だったら、どう解釈すれば良いのだろうか?何を察し、それっぽく見せることなのだろうか?基準は?判断軸は?ぼくが思うに、現場でこんな話が出ている段階で、もはや「誰も分からない状態」になってしまっている。

ここにもぼくの大きな勘違いがあった。
「言葉の定義」に疑問を持って良いのは、「取り組みがスタートする前」。
何かに着手し、実際に案件が進行している段階で疑義が生じ、今さら「インパクトのあるデザインって何ですかね?」なんて質問は、時すでに遅し。後は依頼主の主観を探りつつ、決めるしかない。

だって、「見ないと分からない」と言われるのは、もうあなたいらないでしょって言われているのと一緒だ。だったら、今回求められていたのは「高い再現性が成し得ること」の領域だ。

2つ目は、販促に振るのか、ブランドらしさに振るのか、という大前提を決めること

実は今週、別の依頼主とデザインの「商品っぽさとは何か」についてもMTGがあったのだ。今回のデザインの目的は「販売の促進」。

しかし進行していくうちにこういった話題が出る時がある。「これで大丈夫なんだろうか?」という不安を依頼主に抱かせてしまった段階で、もう過去には戻れないのです。

いや、今回販促の話しかしてないから、わざわざブランドらしさではない、と言わなくても分かるでしょ?と思うかもしれません。でも、分かり合えていると錯覚した状態でい続けると、あまり良い結果にならないことの方が多いと思っています。
そもそも「ブランドらしさ」や「ブランディング」の定義はあいまいなので、人によってとらえ方が違い過ぎますね。菅田将暉を説明するときに「人間」ってカテゴライズするくらい乱暴だと思っています。


主観というあまりにも小さな領域は、市場という砂漠に落とした小石を見つけるよりも大変なんじゃないかと思う。終わらない「擦り合わせ」しか選択肢が無くなる。

プロジェクトマネージャーの存在意義


関わる全員が、「スタート前」に「今回の目的」と「言葉の定義」を徹底しておくこと。どれがOKで、何がNGなのかの領域を決めておく。まずは観測範囲で良いから。

1.言葉の定義決め(前提)
2.目的の決定(大前提)

あらゆるビジネスでも当たり前だし、なんなら小学生のときから明確で「テストで点を取るために、勉強をする」ことが叩き込まれているはず。勉強している姿が褒められても、点数を取れなきゃ意味がない。

だから、「依頼主に協力したい」「一生懸命やります」という表面上の想いだけでは人も金も動かせないし、ご飯だって食べられない。
主観で人を動かせるのは、前提条件を整え誰しもが納得した上で臨むプロジェクトだけだ。基本さえできていない人間にはそれができないと痛感した1週間だった。

「クリエイティブは見ないと分からないので、一旦着手してください。」

ドキッとする前に、実はできることがたくさんある。そこまで徹底すると、「見ないと分からない領域」をクリアにでき、関わる人全員が「ああこれね!」という参照点をたくさん用意することができる。


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書き始めたら熱が乗ってしまい長くなりました。ボスに短くせい、と言われるでしょう。来週はもっとさっぱり書きますので、応援していただけるとうれしいです。

Twitter:@ymst9991

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