いつからスマートフォンはポータブルオーディオになったのか【検索ボリュームから推測する世代交代】
iPhone12 proを買った。驚いたのは本体のサウンドから流れる臨場感。初めて好きなアーティストの生ライブに行った時のような高揚。iPhone12proは良い買い物だった。
長らくiPhone7を使っていたのですが、そういえばコレを買った当時は、ソニーのウォークマンも持ち歩いていたなぁ。音質に対するこだわりは人並み程度はあると自負しつつ、高音質だのハイレゾだのこだわっていた記憶も蘇る。気づけばSpotifyヘビーユーザーとなり、iPhoneにAirPodで音楽を聞いていた。そこにいたはずのウォークマンがいなくなっていたのだ。
あなたのウォークマンは今、どうしていますか?
ポータブルプレイヤーの代名詞「ウォークマン」
「“ウォークマン”、“WALKMAN”、“WALKMAN”ロゴは、ソニー株式会社の登録商標です。」というお断りを引用しつつ、2004年から本日現在までの検索ボリュームを調べてみました。
・2010年前後は波はあれど検索ボリュームが多い
・2014-2015年頃からゆるやかに減少傾向
・ウォークマンとWALKMANの増減はゆるやかな比例関係
ヨドバシカメラに行くと、携帯音楽プレイヤーはソニーだけじゃないことがわかる。もはや市場は日本国産だけのものじゃない。
2009年、iPodの上陸とスマートフォン市場の誕生
「直感的に操作ができる」「今まで見たことがないUI」「所有ステータス」「プロダクトデザインの衝撃」など当時の声を思い出すと市場にもたらした衝撃もきっと大きかった。
さらに、ポータブルプレイヤーという文脈でiPodと代替関係にあると思われるのが、iPhone・Androidをはじめとするスマートフォン。
・「iPhone」が最も高いのは2011年9月-10月頃
→今ではおなじみのSiriやiCloudが搭載されたiPhone4Sが発表。AIの代名詞という印象を持たせたSiri、データをクラウドにためておけMacと相互作業ができる幅が拾ったiCloud、双方ともに過去最高に人々の関心度が高かったのかもしれない。
・「スマートフォン」が最も高いのは2011年7月前後。
・「スマートフォン」「Android」は2010年-2011年にかけてゆるやかな比例関係にある。
→2010年頃から伸び率が高いが、3.11の安否確認にLINEが使われたという話題が増え、これを機にガラケーからの乗り換えが増えた可能性が高い。
さて、一体なぜウォークマンが手元から、そして心の中から消えていってしまったのか。今なお愛好している人との違いは何なのか。ざっくり観測した結果から、仮説立てしてみます。
1.「CDじゃなきゃ聴けない」から「CDじゃなくても聴ける」
CDの歴史は長い。ポータブルプレイヤー誕生後も「音源はCDから」の時代が続く。技術的にもコスト的にも簡単だからかもしれない。ところが、音源をWebサイトから直接ダウンロードができるサービスが増えると
・スマートフォンが一般化する前、CD→パソコン→携帯電話へ音楽をMP3データ化することで、携帯電話で音楽を聞けるようになった
→「自宅プレイヤー・ポータブルプレイヤー・携帯電話」で音楽を共通管理するために、データの拡張子「MP3」はポータブルプレイヤー大戦争にはスペック判断の「代名詞」だった可能性がある
・「MP3(音源拡張子)と「CD」の現象にはゆるやかな比例関係がある
→CDが売れなくなり、MP3という代名詞も使用されなくなってきた可能性が考えられる。
2.「携帯電話/定額制サービス」が競合になった
スマートフォンが一般化してからも数年は同じでしたが、いつしか「音楽は月額で好きなだけ聴くものだ」というサービスも生まれました。
携帯電話・スマートフォンが「ミニパソコン」と言われる時代もとうの昔に過ぎ、呼吸をするように手放さなくなった。
・スマートフォン
→いよいよ「ポータブルプレイヤーを買う必要性が無い」「スマホでいい」というユーザーが増えたのかもしれない。
・2018年8月頃から「サブスクリプション」が「CD レンタル」より多くなる
→「定額制」というルールサービスが増え、音楽もその中のひとつとして一般化してきた可能性がある
3.ポータブルプレイヤーの機種の選び方が多様化している
良いモノが世に出るたびにどんどん耳は肥えていき、ユーザーのニーズは細分化されていく。「現時点での最高技術で作られた良い音を聞きたい」という流行最先端派や、「ワイヤレスイヤホンに繋ぎたい」といった外部アクセサリ主権派など、様々な欲求が発生する。それに応えるためにメーカー側も技術開発や価格設定を必死に行う。
ソニーのウォークマンポータルサイトを見ると、こんなページがありました。
出典・引用:https://www.sony.jp/walkman/compare/
「スタミナ」ってなんだ。と思ったら、電池持ちのことらしい。そもそも外で音楽を聞く必要性があるのかと思うと、本来生きていく中では必須ではないのかもしれない。でも、外でどうしても音楽を聞きたい、街の喧騒に振り回されたくない、と考える人には、少しでも長く電池が持つ方がありがたい。
金属の中でも抵抗値が低い無酸素銅(純度99.96%以上)を筐体素材に採用し、DSD 11.2 MHzまでのネイティブ再生に対応。(NW-WM1Z)
出典・引用:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/sonyhistory-e.html
「無酸素銅」という言葉を見て、ボータブルオーディオを物理素材で選ぶ時代も来ているんだなぁ・・・。
・ユーザーのニーズが多様化し、「音質」「持ち運びやすさ」だけでは足りなくなった
→競合が多いため、ポータブルプレイヤー単体だからこそできる能力・スペック・素材を実現することで差別化を狙う傾向にあるのかもしれない
・世の中の技術開発のスピードが早くなり、新商品発売の期間が短くなった
→人々がスマートフォンやワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなど電子機器を持つことが多くなり、「広義の携帯性(持ち運べるか否か)」「音質」の時代から、「互換性」「スタミナ」「狭義の携帯性(軽さや大きさ)」を重視するようになった可能性が高い
いつかまた手元に戻ってくるのだろうか?
ぼくはウォークマンが今でも好きです。外出先で音楽を聴く楽しさ、喜びを教えてくれた体験があり、きっとまたウォークマン沼にはまることがあるかもしれません。
今回は検索ボリュームという一側面から「なぜ人々の手元からウォークマンが消えてしまったのか」を考察してみたのですが、検索ボリュームは市場行動の一側面しか見えません。「そういえばなぜ使わなくなったのか」をもっと深掘りしていく時間があれば、共通の答えが見つかるかもしれないと考えています。実は、ただ「充電が面倒になった」だけかもしれないなど。
きっとスマートフォンもいつか手元からなくなってしまうのだろうか、と思いつつ、今からiPhoneケースを買いに行こうと思います。
【参考記事】
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