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Learning Ecosystem

SaaS、サブスクリプション、Cloud界隈のみなさんだったら、スケールするOnboarding とは?を考える過程で、オンライン上に研修コンテンツを共有して、いつでも学んでもらおう!ということくらいは当然のごとく、既にされていることでしょう。

私もこれまでそのようなコンテンツ作りに多少関わってはきましたが、せいぜい、作って、Uploadして、受講してもらう(そして、満足した?学べた?役に立ちそう?といったアンケートをとる)というところまででした。。
ちょっと進んだところだと、受講履歴データを使って、Onboarding やAdoption (定着化)のトラッキング etc... をしているところでしょう。

今や、Tech Touch を考えるときに、オンライン上で学習コンテンツを充実させておき、それらを見て学んでもらうことは当たり前のように考えられる施策ではありますが、学ぶ場提供と接点管理のための"コンテンツ置き場"以上のことを考えたことはあるでしょうか?

今回は、Customer Success といえばおなじみの Salesforce の「Trailhead」のすごいところをとりあげながら、オンラインのコンテンツサイトで実現できそうな "Ecosystem" への貢献について考えてみたいと思います。

※個人的な見解です
※写真は2016年のイベントにお邪魔したときに自分で撮った記念写真の一部です
※自身のメモ的なものでもあるので、内容は長めです・・・
(読みやすさとかはあまり考えてません 笑)

Trailhead とは?

Trailhead は、Salesforceが提供している無料のオンライン学習サイトです。
コンテンツの単位は、例えば「レポートの作成」といったある特定のスキルや分野ごとの「モジュール」で、その中に、レポートの作成に必要な項目である「単元」があり、ものによっては達成度確認のための「テスト」があります。
テストは選択肢を選ぶような形式の他、実際に簡単な設定や作成をする「チャレンジ」という形式があります。

あるテーマに沿っていくつかのモジュールをまとめた「トレイル」や「プロジェクト」という単位のコンテンツもあります。
中でも「Superbadge」というコンテンツは、指示された手順をこなすものではなく、与えられた課題やビジネス要件等をもとに、自分で考えながら Salesforce上で設定、作成していくという実践ベースの内容になっています。
これを完了できたら、自身のスキルにかなり自信が持てそうですし、実際の業務にも生かせそうです。

Trailhead は「楽しみながら学ぶ」がコンセプトで、ゲーミフィケーションを取り入れたプラットフォームであることもよく知られています。
コンテンツを完了するとポイントを得られ、そのポイントに応じて「バッヂ」がもらえ、バッヂの数に応じて「ランク」が設定されます。

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https://trailhead.salesforce.com/ja/trailblazer-ranks より

ここまでの内容だけでも、巷のベンダーが提供している一般的な研修コンテンツ置き場(サイト)とは一味違うことが感じられます。

でも、「楽しい」や「実践的」以上にもっとすごい!、というか戦略的!だな・・・と感じた点がまだあります。
以下、(私の独断と偏見による・・笑)Trailhead のすごいところ!をあげていきます。

Trailheadのすごいところ:Trailmix

Trailmix を使うと「トレイル」をカスタマイズすることができます。
トレイルもある学習テーマの習得に必要なモジュール群からなるコンテンツですが、Trailmixではいくつかのトレイルやモジュールをまとめて、オリジナルコースとしてカスタマイズすることができます。
Trailmixには、SFDCから提供されているオリジナルのTrailmixもありますが、最大の特徴は「誰でも作成できる」ところにあると思います。

ベンダーが提供する learning path も勉強する上では欠かせないですが、大体が認定試験を想定しているような形になっていたり、すべての機能についての説明が含まれているものが多く、自分の業務に必要なものだけで十分な場合は Too much! ですし、逆に、たくさんの機能別コンテンツを並べられても、初心者にとっては広い海に放り出された感じにしかならず、何が必要だかわからなくなってしまうことも・・・

ユーザーが独自にコースをカスタマイズすることができると、自社のユースケースにあったモジュールやトレイルのみをピックアップして作成したTrailmixを、新入社員や新担当者等に共有することで、効率的に必要なものだけを受講してもらうことができるようになります。

また、他社が作成しているTrailmixを参考にしたり活用することもできるのもよい点です。 (参考: SFDCヘルプ 「みんなのTrailmix」 )
新入社員等のオンボーディングだけでなく、その後のスキル習得や業務の課題というところでも活用されているのが素晴らしいですし、他社(者)の課題がみえるのもユーザーにとっては参考になります。
「楽してポイント稼いで」 Ranger になるための Trailmix とか、、、そういう発想も Trailhead ならではですね 笑

ベンダー目線で見ると、ユーザーが独自にオンボーディングコンテンツを作成できるようにすることで、

★ユーザーのユースケースや解決したい課題とニーズのある学習コンテンツの把握ができるようになる

★ユーザーがオンボーディングを自走させることができるので、接点を保ちつつ、介入タイミングを減らすことができる

★コミュニティや Tech Touch との相乗効果により、より質の高い体験が得られるオンボーディングをスケールさせることができる

といったメリットがもたらされると考えます。

Trailheadのすごいところ:myTrailhead

myTrailhead も Trailhead がベースになっていますが、Trailhead がベンダーが用意したコンテンツベースのサービスであるのに対し、こちらはユーザー企業が独自作成したカスタムコンテンツを活用することもできるサービスです。
Trailmix とあわせて活用することで、例えば、新入社員向けコースの最初に社長のウェルカムビデオメッセージを入れたり、Salesforceの開発者向けコースには既存のトレイルにプラスして自社独自の開発標準・運用標準を学べるコンテンツを入れるなど、Trailhead上のコンテンツとミックスすることにより、自社に合った研修コースを効率よく作成、ワンプラットフォームで提供することができます。
MAツールのように、入社してから30日目、60日目・・・みたいな節目ごとで自動的に受講してほしいコンテンツを割り当てることもできるようです(参考:こちら)。

Experience Cloud(旧Community Cloud)との連携も可能なため、チャネルパートナー等とのコミュニケーションでExperience Cloudを使っている場合は、こちらを通じてmyTrailhead のコンテンツを提供できるため、Partner Enablement にも活用できそうですし、「Trail Tracker」というAppExchange のツールを使うことで、受講を必須とするコンテンツのアサインと受講状況のトラッキングもできるようです。

これらは、Enterprise Edition以上のライセンスを持っていれば使える機能として提供されているのですが、これだけで一つのサービスとして成り立ちそうなレベルのものを、Salesforce を使っていれば利用できる機能として提供されていること自体(※)が、本当に素晴らしいな~と思います。

※myTrailhead は「Sales Enablement」という名称になり、現在は有償のサービスとして展開されています(2022.06 追記)


これをうまく活用できれば、他の Learning Management System (LMS)を使わなくてもよさそうです。
さすが、プラットフォーマーですね・・・笑

myTrailhead もベンダー側の視点では「Trailmix」のところで記載したのと同様のメリットがあると考えられます。

Trailheadのすごいところ:学ぶことをキャリアにつなげる仕組み

これじゃますます Salesforce のファンになってしまう・・・
くらいに感動しているすごいところは、「学ぶことがキャリアにつながる」ことを非常に意識されている点です。

ベンダーがトレーニングコンテンツを提供する目的は、自社製品を活用してもらうことにあり、これはすでに多くのベンダーが実施していますが、自社製品の活用が市場価値の高いキャリアになるところまで訴求し、仕掛けているベンダーは、メインユーザーがエンジニアやITコンサルであるソフトウェアやサービス以外ではほぼ見かけたことがありません。

Salesforce は Trailhead の中で、開発者だけではない役割においても、スキルの市場価値や雇用の創出をEcosystemで実現していると訴えています。

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(参考:Trailhead 学習 > キャリアパス より)

「あなたの目の前に広がる世界はブルーオーシャン!」的なものを見せつけて、役割ごとのペルソナベースに Success Story を紹介し、プロファイルを使って「さぁ、あなたも履歴書をグレードアップしましょう!」とアクションを促してます(CMですね・・・笑)。

そして、更に大学と連携して、Trailhead の学びを単位に変えるという取り組みもされています。

他のベンダーが「どれだけ売上を伸ばすか?」「どれだけ導入社数を増やすか?」を考えている間に、Salesforce は確実にユーザー層を増やし、目の前の Sales や Renewal、目の前の Customer の Success に夢中になっている他社をよそ目に、Ecosystem を着々と構築、更に上の上にいくという・・・

Salesforce にとって、Trailhead は単なるコンテンツ置き場やLMSではなく、Salesforce のマーケティングにも貢献する Ecosystem の一部であることがわかるかと思います。

また、「人の成功」にフォーカスしたしかけになっている点も着目すべき点だと考えます。

会社が(経営層が・・ともいう)解決したい課題は、一従業員からみれば何となく自分ごととは遠いところにあることもあり、特にバックオフィス系の仕事はあまり評価されていないのでは?と悶々とすることもあります。
例えば、作業にかかる時間を削減できたところで、自分の仕事はなくなっていくのかしら・・・と不安すら感じるかもしれません。

でも、プロジェクトや日々の業務を通して身につけたことが、いつの間にか他でも通用するようなスキルになっていることに気づけるようになったらどうでしょう?
仕事への考え方も変わりますし、もっと他でも役立てたい!と考えるようになるはずです。

Trailhead は、楽しいだけでなく、「キャリアにつながる」ことを訴求することで、ユーザーの学ぶことへのインセンティブにつながるようにするしかけが、うまく設計されています。そして、コミュニティやその他の施策との相乗効果で更にうまく回るようにしているな~と感じます。

これは、Customer Success Managerや Account Managerがなかなかアクセスできないキーマン以外のステークホルダーへの touch point を考える上ではとても貴重なインサイトになります。

近年は「2025年問題」等をきっかけに、俗にいうエンジニアではない "Citizen Developer" という立場のユーザーを増やしていこうと躍起になっているベンダーも数多く存在しますが、特に、No Code / Low Code や AI 等、エンジニア以外のユーザー層の成功がキーになるようなソリューションを展開しているベンダーにとっては、Trailhead の「すごいところ!」のような施策は大いに参考になるかなと思いました。

時代の先を目指しているような会社は "well-being"をビジョンに掲げていますが、プロダクトやサービスを通じた「ユーザーの成功」は、こういったところにもつながりそうです。

まとめ

最後に簡単にまとめると

★Trailhead にはユーザー自身がオンボーディングを自走させられる仕組みがある

★Trailhead は(カスタマー)マーケティングツールである

★Trailhead は Salesforce の Ecosystem を構成している重要なサービスである

という感じでしょうか・・・

ハーベストループとは何ぞや?を考えるにもよい事例で、とても勉強になりました!!


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今取り組んでいるお題は「Onboarding」。
自身のオンボーディングで"Onboarding" に関わるなんてダジャレっぽいですけど 笑

最近出たという、ここに特化した本を見つけてしまい、早速買っちゃいました!

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タイミング的に何だか運命を感じる…
何か得られるものあったら(気が向いたら)また書こうかと思います。

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