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今年のスタートアップ潮流をTechCrunchJapanの記事から読み解く

スタートアップが賑わっていると耳にしながらも、いまいちどんな領域がどんな理由で賑わっているのかを読み解くのは難しいです。

なので、少しでも理解を深められればとTechCrunchJapanが毎年年末に公表する「日本のVC・エンジェル投資家が予想する2019年のスタートアップ・トレンド」を読み解いてみました。(予想している投資家のリストは本記事の一番後ろに。総勢30人!!)

ちなみに、予想の切り口は色々とあったので、業界、テクノロジー、そしてビジネスモデルに分けて整理してみました。

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個人的には、古い業界のVertical SaaSによるイノベーションの加速とAI/機械学習が加わることによる更なる進化!という流れがたまらなかったです。

そして、仮想通貨業界につま先を入れさせていただいたものとしては、当然にブロックチェーンを利用したサービスの立ち上がりも見逃せません!

という訳で、業界、テクノロジーそしてビジネスモデルの順番に様々な投資家のコメントを見ていきます。

古い業界のアップデートとZ世代、もしくは宇宙へ

まず、どの業界や顧客に対して、イノベーション(大きな変革)を伴うサービスが立ち上がるのか?という話。

多くの方々が言及されているのは、いわゆるIT化が遅れている古い業界に事業機会がまだまだあるというコメント。具体的な業界としては、製造業や物流、飲食や医療そして、営業という機能に対する言及もありました。また、年末に盛り上がったフィンテック領域の決済や少額融資の話も、この古い業界のアップデートに入るのでしょう。

既存産業の構造転換、SaaSへの置き換えです。(中略)「手書き・FAX・対面営業」が残る非効率な産業のうち、生き残りをかけたコスト構造転換が必要なところから、改革が進む(エンジェル投資家・有安さん)
製造業、物流、飲食等、労働人口の減少に伴う人手不足や人件費高騰が課題となる業界においては、ハードウェアを伴うIoT SaaSやロボティクス、AIによる自動化、効率化が進む。(Draper Nexus・倉林さん)
古い業界の変革は、技術進捗が業界の負に最適な解決策を提示するテック・ドリブンな動き、そして経済、法制度、消費者動態の変化がもたらす社会ドリブンの動きから事業機会が顕在化する。(グロービス・高宮さん)

この古い業界のアップデートはテックで言えばクラウド、ビジネスモデルで言えばSaaSと一体の話ですね。なぜ、SaaSがトレンドなのかはあとで整理します。

次に、Z世代(ミレニアル世代の後の現在20歳くらいの人々)向けのサービス。動画メディア、ゲーム系は以前注目分野のようです。

2018年で印象的だったのは“新世代のコンシューマーニーズ”(中略)ここにきてTikTok、Vtuber、ライブ系、インフルエンサー系などなど新基軸のコンシューマーサービスでZ世代の支持を得てヒットしたのが結構ありました。(中略)2019年も文化を創るようなコンシューマーサービスは引き続き続くと思います(KLab・長野さん)
エンターテイメントの分野では、eスポーツやバーチャルタレントなどを媒介にし、リアルなライブエンタテイメントとネット・VRサービスが入り乱れながらエコシステムができ、すみ分けが進み、市場が大きくなる(XTech手嶋さん)

また、空(ドローン)・宇宙も注目領域のようです。

2019年はまさに、大中小問わず、圧倒的なドローンを実運用で全国各地で飛行させ、様々な飛行データを集め、さらなる安全改良へフィードバックさせる年になるのではないでしょうか。社会実験から実装社会へ、空が変わります。(Drone Fund・千葉さん)
宇宙関連セクター全体の盛り上がりに乗って、有人飛行、貨物輸送などの分野のベンチャーにも資金が流れるようになる。(慶應イノベーション・山岸さん)

他にも、バイオや原子力という話を取り上げていらっしゃる投資家さんもいらっしゃいました。分野が広い!!

クラウド/スマホ、AI/機械学習、ブロックチェーンなど

注目のテクノロジーは色々あるようですが、クラウドやスマホというテクノロジーに、他のAI/機械学習、AR/VRやブロックチェーンなどのテクノロジーと掛け算で、さらに新しい可能性が広がっていくような感じですね。(ブロックチェーンとクラウドを一緒にするなという話はある)

クラウド/スマホ

ndustry Cloud分野は伝統的業界の先端ITによる課題解決ニーズの高い日本では、益々注目すべき領域。スタートアップが競合優位性を確立しやすいため、業界のペインを見極めPSF/PMFを構築できるチームかどうかがポイント。(Draper 倉橋さん)
スマホ・クラウド・IoTなどの普及により今までIT化されていない領域にこれらを活用した新しいサービスが生まれ浸透していく(D4V・伊藤さん)
明確なバリュープロポジションのあるクラウドサービス(グロービス・今野さん)

AI/機械学習

2019年はAIによる人類の様々な価値のシフトが始まる年になるのではないかと思います。(中略)SaaSが様々の産業を変えているなかで、2019年はAIがもっと深い形で変化を起こし始める。(BEENEXT・前田さん)
「AI」×「○○」医療、バイオ、理化学などの分野で、従来、目視での解析や実験によって仮説検証を行っていた分野で、ビジョンレコグニションやビッグデータ解析による効率化/高速探索などを行うベンチャーが増えてくる。(慶應イノベーション・山岸さん)

AR/VR

ARの用途はたくさんありますが、個人的にまずはゲームから広がっていくんじゃないかと考えています。2019年内に一気に盛り上がるかどうかは分からないですが(East Ventures・毛利さん)

ブロックチェーン

「Blockchain」 × 「hogehoge」。Blockchainを何に活用して、どんな信用創造をするのか。ハイプ・サイクルの幻滅期真っ只中ですが、冬の時代の今だからこそ事業の仕込み時期だぜ!という気概でありたい。(エンジェル投資家・有安さん)
シェアリング文脈ではひっそりとブロックチェーン技術を使った実証実験のようなものも増える。ブロックチェーンに社会的なリソースの一部が乗り始める。(XTech・手嶋さん)

SaaSは続くよどこまでも

この記事は、SaaSのことを整理するためのものだったのだと、文字を並べながら気づきました。2018年から急激に盛り上がったSaaSというビジネスモデル。

これはクラウドやスマホというテクノロジーの進化所有から利用という価値観の変化、さらに人手不足という社会的課題の3つが合わさって、今、盛り上がっております。

さらに面白いのは、SaaSモデルを支えているクラウドはどんどんデータが溜まっていくモデルなので、AI/機械学習ととても相性が良い。故に今後もどんどん進化していく可能性があるビジネスモデルなのだそうです。

2019年もキチンと経営しているSaaS系スタートアップは調達できるでしょう。(セールスフォースドットコム・浅田さん)
(3)購買を再定義するSubscriptionの文脈音楽やソフトウェアから始まったSubscription→購買単価の高いプロダクトへの拡がり(藤田ファンド・近藤さん)
AIを活用した採用、営業、CS、マーケティング支援のSaaSモデルと、AIを実装したスマートスピーカーなどIoT関連にも引き続き注目したい。(XTech・西條さん)

GAFAのようなの超巨大中央集権サービスの弊害としてのデータどうすんの問題と、アンチテーゼのように現れた自律分散・ブロックチェーン技術!!!という話はありつつも、クラウド、中央集権のデータによって次なる可能性もまだまだありそうです。

景気後退局面に向けて

2019年の見立てで外せないのは、経済環境について。2018年の終わりに株価が急落し、他の経済指標もなんだか雲行きが怪しいという話も耳にします(詳しくないけど)。

ということを受けて、何人もの投資家の方々が景気後退局面に向けてコメントをしていらっしゃるのが印象的。

スタートアップエコシステムがこのダウントレンドをどうサバイブしていくかは大きなテーマでもあります。(中略)いくつかの戦略変更が求められると思います。(KLab長野さん)
2019年に入っても残念ながら重たいモメンタムは続く可能性あり。リーマンショックからの学びとして、即座に総悲観的に考える必要はないが、むしろ自社として、こういう機会に経営や製品や顧客、投資や支出などを見直して筋肉質な体制にできた会社がその後力強く成長した。(グロービス今野さん)
2019年は2018年末から兆候が現れている景気循環の後退期に入ることが予想されるので、スタートアップにとってはできるだけ早く潤沢な資金を手当しておくこととコスト面においては不要不急なものにお金を使わない引き締めを見据えることが大事な局面になりそうです。(D4V伊藤さん)

おわりに

上記ではうまく扱えなかったメガトレンドもあります。しかし、漠然と、記事を読んで、スタートアップも色々だという感想から、少しは解像度が上がった気がします。面白かった、TechCrunchの記事の読み解き。

経営企画やバックオフィスを生業とする人間として、こういった潮流も気にしながら、仕事に生かしていきたいです。

ありがとうございました!!

参考にした記事で予想してくださっている投資家の方々(敬称略)・起業家・エンジェル投資家 有安伸宏・YJキャピタル 代表取締役 堀 新一郎・グリーベンチャーズ 代表パートナー 堤達生・Spiral Ventures アソシエイト 立石美帆・BEENEXT Managing Partner 前田ヒロ・Draper Nexus Ventures Managing Director 倉林陽・Samurai Incubate 共同経営パートナー Chief Strategy Officer 長野英章・KLab Venture Partners 代表取締役社長/パートナー 長野泰和・THE SEED General Partner 廣澤太紀・グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーCOO 今野穣・D4V General Partner 伊藤健吾・ANRI パートナー 鮫島昌弘・F Ventures 代表パートナー 両角将太・Drone Fund 代表パートナー/個人投資家 千葉功太郎・エンジェル投資家 古川健介・慶應イノベーション・イニシアティブ 代表取締役社長 山岸広太郎・セールスフォース・ドットコム 執行役員/セールスフォース・ベンチャーズ 日本代表 浅田慎二・ヘイ 代表取締役社長 佐藤裕介・iSGSインベストメントワークス 代表取締役 代表パートナー 五嶋一人・アイ・マーキュリーキャピタル 代表取締役 新和博・Plug and Play Japan Chief Operating Officer 矢澤麻里子・プライマルキャピタル 代表パートナー 佐々木浩史・East Ventures Director 毛利洵平・サイバーエージェント 投資戦略本部長(藤田ファンド)/サイバーエージェント・ベンチャーズ 代表取締役社長 近藤裕文・グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一・XTechVentures 共同創業兼ジェネラルパートナー 手嶋浩己・XTech 代表取締役 西條晋一・アプリコット・ベンチャーズ 代表取締役/ジェネラル・パートナー 白川智樹

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