ロシアと韓国、欧州
◆International Council on Archives Congress 2016◆
2016年9月8日
国家間の協力
ICA総会3日目午前に聞いた発表を三連投。
(ICA総会については以前のnote参照)
アーカイブズにおける国家同士の協力がテーマのセッション。
[その1]ロシアのアーカイブズに見る朝鮮人の歴史
極東ロシア歴史アーカイブズのAlexander TOROPOV氏による発表。
ロシアに移民した朝鮮人に関する話。
1860年代、朝鮮の北の地域は、何年も続く土地の枯渇、不作と、役人による厳しい搾取の状況にあった。そこで朝鮮の人たちは、先祖代々受け継いだ土地と同じような風土と土壌の状態であるユジノウスリースクへ移民することにした。しかし、自分たちを守るものとなるはずのその国の言語・法・風習に関する知識がなかったため、多くの問題に直面した。
こうした朝鮮人移民の歴史をアーカイブズでたどっていく。
資料からはどういった事実を知ることができるのだろうか。
[人口調査]
プリモリェ地方に住む朝鮮人の最初の人口統計調査(1867年)。
185家族999人(男性553人、女性446人)
15歳以下の子供を多く含んでいた(365人)
[宣教活動に関する資料]
朝鮮人への宣教活動は、カムチャッカとアリューシャン列島群の大司教、インノケンティー(ヴェニアミーノフ)が始めた。
朝鮮人の間の最初の伝道師は、ノヴォクイビシェフスクにあるポシェトに最初の礼拝堂を建てた修道司祭ウァレリアヌスである。
1900年時点で、朝鮮人居住地区には11の教区立の学校があり(391人が学ぶ)、さらに15の読み書きを教える学校(350人が学ぶ)があった。
宣教団の8つのキャンプには12992人が住んでおり、うち5543人(42.7%)がキリスト教を信仰していた。
[政治的な移民]
日露戦争の後、迫害から逃れ、ロシアで抗日運動を続けることを目的に、政治的な移民として、朝鮮人のロシアへの流入が増えた。
極東ロシアは、朝鮮人の国家解放運動の国外におけるイデオロギー的な中心の一つとなる。
この頃までにソ連の支配が、プリモルスキー地方を中心に220の朝鮮人の学校があった極東地域にまで及ぶようになった。
[外部の計画]
1926年12月6日、ソ連の最高会議幹部会は、朝鮮とハバロフスクの間の土地への移民を禁止した。朝鮮人を移動させる計画があったが、朝鮮人の反応は後ろ向きであった。
日本の支配勢力は、朝鮮人が別の地に定住するのを妨げようと、朝鮮人社会「국민쾨(国民会?)」を利用した。この組織は同胞に対して、国境地域を離れ、プリモリェ地方の朝鮮人自治区で闘争をすることのないように訴えかけるものである。
1937年、「極東地方の国境地域から朝鮮人を移住させる」決議が認められた。朝鮮人は極東の国境地域から、南のカザフスタン地方とアラル海やバルハシ湖近辺、ウズベクソビエト社会主義共和国へ、1938年1月1日までに移住することが要求された。36442家族(171781人)が、1937年10月25日までに移住した。
・・・・・・・
あらゆる困難の中にあっても、朝鮮の人たちは、独自の文化である代々受け継がれる伝統的な家庭の価値を守り通していた。
[その2]脚注にはとどまらない:アーカイブズコレクションが物語を導く
発表者は次の三名。
Jürgen VERVOORST氏(イギリス国立公文書館)
Hannah Leah CRUMMÉ氏(ルイスアンドクラーク大学ワトゼク図書館)
Katy MAIR氏(イギリス国立公文書館)
2016年はシェイクスピア没後400年にあたる年。
キングス・カレッジ・ロンドンが働きかけた文化的、創造的、教育的組織の連合体である、Shakespeare400を筆頭に、世界各地、特にイギリスにおいて、シェイクスピアの生涯、作品、遺産が文化的プログラムを通して称えられている。
2016年6月19日、9点がイギリスで四番目に『UK Memory of the World』に登録された。
登録されたのは特にイギリスで文化的価値のある文書遺産「Shakespeare Documents」だ。
そのリストのうち、世界最大規模で最も価値の高いコレクションが、イギリス国立公文書館に保管されている。
シェイクスピア没後400年記念事業は、これらのコレクションを新たに見直すきっかけになり、国立公文書館は、Shakespeare400の重要な参与者として、多層的な展示プログラムや、学術的、科学的な研究、保存、社会に寄与する活動、分野横断的な協働、オンラインレガシーなどを通して、文化の分野における位置付けを確立した。
《協力関係》
・キングス・カレッジ・ロンドン[Link]
・Folger Shakespeare Library [Link]
・59 productions [Link]
・Shakespeare birthplace trust [Link]
[その3]欧州のアーカイブズポータル:現在の焦点、戦略、視点
発表者はスイス連邦公文書館のStefan KWASNITZA氏と、オランダ国立公文書館のArjan AGEMA氏。
The Archives Portal Europe
アーカイブズの利用者や専門家が、ヨーロッパ各地に多数存在するアーカイブズ機関がもつ膨大なアーカイブズのアイテムの中から、効率よく情報を探し出すことができるようにする。
《具体的には提供されるもの》
・ヨーロッパの各国のアーカイブズ施設の情報
・施設にあるアーカイブズ資料
・アーカイブズ施設のウェブサイトで閲覧できるデジタル資料のサムネイル/リンク
《パートナーシップ》
ベルギー、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス
《検索方法》
1.シンプルなGoogleのような検索
2.詳細検索
3.テーマやトピックを介した検索のためのタグ・クラウド
《標準》
■メタデータを収集・蓄積、デジタル資料へのリンク
■国際的に受容されているアーカイブズのメタデータ標準を適用
・ISAD(G)/ EAD → ape EAD
・ISDIAH/ EAG → EAG2012
・ISAAR/ EAC-CPF → ape EAC-CPF
・METS → apeMETS
《可能性》
■ヨーロッパと関係のあるアーカイブ資料の、最大かつ最も有名な公開アクセスポイント
■デジタル化された、あるいはデジタルのアーカイブズ資料を、集合・普及・研究のプラットフォーム及びネットワークにつなげる。
■多言語インターフェイス
《2020年に向けた指針》
■世界中の利用者にとって「無いと困るリンク」となる。
■ヨーロッパにおけるアーカイブズ遺産・文化遺産の分野の中で重要なネットワークとなる。
■ヨーロッパの歴史に関する文書の他の所有者への呼びかけ。
■API及び機能性を高める。
■欧州アーカイブズポータルのEAC-CPF記録のアップロードと処理を向上させる。
■追加の検索手段(インデックス)のアップロード・処理を可能にする。
《コンテンツの提供》
Step 1:連絡をする。
Step 2:どのような手段で提供するか決める。
Step 3:メタデータが提供するのに適しているか調べる。
Step 4:共通プロファイルに合わせてメタデータを変換してみる。
Step 5:欧州アーカイブズポータルのダッシュボードに詳しくなり、自分が提供したものを管理する。
◇◇◇◇◇◇◇
二国間から、ヨーロッパ各地にいたるまで
多様な協力の形がある。
アーカイブズはみんなのもの。
AY
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