東ドイツ文学のアーカイブズ

◆International Council on Archives Congress 2016◆

2016年9月6日
「ドイツ民主共和国における抑圧された文学のアーカイブ」

発表者はドイツの「ドイツ社会主義統一党独裁再検討のための連邦財団」のMatthias BUCHHOLZ氏。

これがICA総会で最初に聴いた発表になる。
(ICA総会に関しては下の記事参照)

私の研究テーマについてはおいおい話すかもしれないが、ざっくりいうと文学のアーカイブズに関心がある。

実を言うと体系的に内容を整理できるほど聞き取れなかったので(リスニング力…とほほ)
Abstract
を参考に紹介を(発表聞いた意味)

発表はAOLについてのお話である。

AOLとは?
Archive of Oppressed Literature in the GDR(German Democratic Republic)
:ドイツ民主共和国における抑圧された文学のアーカイブ
※ドイツ語だと、Archiv unterdrückter Literatur in der DDR

AOLはInes Geipei氏とJoachim Walther氏によって設立された。

かつてのソ連占領地域あるいはドイツ民主共和国(通称東ドイツ)では、検閲や政治的制約の影響で、出版されなかった文学が存在する。
そうした文学の調査を目的として、「ドイツ社会主義統一党独裁再検討のための連邦財団」の助成を受けたプロジェクトがAOLだ。

東ドイツ文学は、出版された作品で示される以上に、実は複雑な様相を呈している。
一般に伝えられてきた国や社会のイメージとはかけ離れたものを描いた作品は、1989年以降になっても、大衆の目に触れることがなかったという。
AOLでは存在が知られてこなかった原稿を収集し、一般に公開することで、東ドイツにおける文学の再評価を促す。

さらに、AOLプロジェクトは戦略的なアプローチを通して持続的なアーカイブズ活動を実現させている一例にもなっている(この点について具体的には聞き取れていないのが残念…)
収集された資料は誰でも見ることができるようになっているとのこと。

文学的価値から、作家の自筆原稿や手紙を含めた文学の資料が収集されることはあるが、
AOLの出発点はそういう観点ではなく、文学活動が抑圧された時代があったことをふまえて、その作家や作品の存在を認識してもらうというところにある。

「本プロジェクトのより重要な目的は、ドイツ民主共和国の中で虐げられた文学者を精神的に蘇生させることと、書かれた当初は出版される機会を得られなかったテキストが、現代において人々の注目を集めるようにすることである」(Abstractより抜粋、筆者訳)

【AOLの関連リンク】
Archiv unterdrückter Literatur in der DDR 
Matthias Buchholz "Von der Ohnmacht unterdrückter Autorinnen und Autoren und der retrospektiven Macht der Archive:Das Archiv unterdrückter Literatur in der DDR"

リンクを貼ってみたが、当方読めない。
詳細を知るべくドイツ語を勉強しなければという思いでいっぱいだが、そこまで余力があるのか我は。

◆◆◆◆◆◆


AOLの話を聞いて思い起こされるのは、旧東ドイツの秘密警察シュタージのアーカイブズ(Stasi Archives)である。

【Stasi Archivesの関連リンク】
Stasi files: The world's biggest jigsaw puzzle
秘密警察「シュタージ」解体から20年、絶えない機密閲覧希望者

シュタージの記録を見て、身近な人物が実はスパイだったと判明することもあるらしい。そういった事実も含めて国民にオープンになっており、多くの人が閲覧に訪れている。
AOLとともに、自国の歴史と向き合うドイツの姿勢がうかがえる。


AY

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