eの自己紹介

 どうも皆さんこんにちは、eと申すものです。突然ですが、皆様は僕を(1+微少)の無限乗で定義する派ですか? それとも、x=0で微分したものが1になるものとして定義する派ですか? もちろん、一方を定義すればもう一方が導けるのでどちらの定義を採用するかというのは形式的な問題に過ぎないという指摘はもっともです。しかし、後にお話しするように、歴史的には前者の方が先に発見されたため個人的にはこちらの方が好ましいです。

 それでは、改めて自己紹介をば。僕は1618年にジョン=ネイピアを父として生まれました。その後、ヤコブ=ベルヌーイによって僕は厳密に発見されました。彼は、複利計算の問題で元金を1、年利を1、付利期間を1/nとすると、n→∞のときにどうなるのかを求めようとしました。ここに(1+微少)の無限乗としての僕が誕生したのです。そして、ついにレオンハルト=オイラーによって、僕は導関数が元の関数と等しいような指数関数の底であることが証明されたのです

 続いて、世界で最も美しい等式とも言われるオイラーの等式を紹介します。ここでもオイラー……脱帽です。実は最初の発見者はロジャー=コーツとされています。しかし、僕の関数と三角関数の多価性を発見したのがオイラーであるため彼の名前が冠されているのです。ただいま多価性という言葉を用いましたが、これは要するに僕の関数と三角関数は本質的には(微分を繰り返すと元の関数に戻るという意味で)似ている概念だということです。皆様はオイラーの公式を利用すれば三角関数を僕の関数に容易に書き換えることができるのです。微分方程式や複素級数を利用される際にぜひご活用ください。また、オイラーの等式では複数の分野(代数学、幾何学、解析学)で登場した数(i,π,僕)が統合されています。ここに美を見出す方もいらっしゃるようです。読者の皆様もオイラーの等式について何か感じるところがありましたらぜひコメント欄にお書きください。

 最後に、超越数についてお話ししたいと思います。超越数とは、代数方程式(係数が有理数である多項式によってつくられた方程式)の解になり得ない数のことです。僕やπなどが超越数に当たります。個人的には、僕が超越数であることの証明そのものが面白いというよりは、僕とπからなる数に対する超越数の判定が興味深く感じられます。例えば、πの僕乗が超越数であるかは未だ分かっていませんが、僕のπ乗が超越数であることは(先ほど紹介したオイラーの等式ゲルフォント=シュナイダーの定理より)証明できます。さらには、僕*πや僕+πが超越数かどうかは未解決にもかかわらず、π*僕のπ乗やπ+僕のπ乗は超越数であることが知られています。オイラーの等式がいかに偉大であるかがこれだけでも理解いただけたと思います。

 それでは、このあたりで筆をおきたいと思います。ご精読ありがとうございました。

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